みかん小説
本棚

"喪服で行った結婚式" 第3話

それなのに、まるで私の結婚活の敗者席をもうっているような勝ち方でした。

その夜、巧はいつもより遅く帰ってきました。

私は夕を温め直しました。

彼はべて、箸を止めました。

が濃いな」

昔なら、私はすぐに謝っていたといます。

でもそのは、なぜか言葉がませんでした。

巧は私を見ずに続けました。

「こういうところなんだよ。さゆりは何でもちゃんとしている。でも息が詰まる」

私は静かに聞きました。

「ちゃんとしていることが、そんなに悪い?」

巧はため息をつきました。

「悪いとは言ってない。ただ、俺はもう、残りのを自分の気持ちに嘘をついてきたくない」

私は箸を置きました。

「それは、私と別れたいということ?」

巧はすぐには答えませんでした。

湯呑みを指で回しながら、い声で言いました。

「そうやってすぐ結論を迫る。だから話したくなくなるんだ」

「結論から逃げているのは、あなたじゃないの?」

その瞬、巧の目が初めてたくなりました。

「俺だけが悪いみたいに言うな。夫婦がここまでえたのは、2の責任だろう」

その言葉で、私は分かりました。

彼は謝りたいのではありません。

別れたいのでもありません。

ただ、自分が悪者にならない形で、次の所へ移りたかったのです。

それから数の朝、私はあのい封筒を見つけました。

広告

洗濯が回る音だけが、洗面所に響いていました。

が沈み、浮かび、また沈む。

その音が、妙に自分のに似ていました。

その斎から巧の声が聞こえました。

扉はいていました。

彼は話をしていました。

丈夫だよ。今、最終確認にく」

その声は優しかった。

私にはもう何も向けられていない声でした。

話の向こうで、玲奈さんが何か言ったようでした。

巧はし笑いました。

「さゆりのことは、俺がちゃんと処理する」

処理。

その言葉だけが、廊に残りました。

私は妻ではなかったのでしょうか。

25、同じで暮らしたではなく、片付ける荷物だったのでしょうか。

巧は続けました。

配するな。あいつは騒ぐような女じゃない。をかければ、自分から引く」

私は息をするのを忘れました。

彼は私の静けさを、信頼ではなく、都のいいさだとっていたのです。

話の向こうで、玲奈さんの声がしだけ聞こえました。

「でも、奥様が拒んだら?」

巧は即座に答えました。

「そのは、俺が悪者にされない形にする。夫婦なんて、壊れるは片方だけのせいじゃないからな」

私は封筒をく握りました。

の角が、指にい込みました。

その、巧はさらに柔らかい声で言いました。

「君は何も配しなくていい。ただ、嫁になる準備をしていてくれればいい」

広告

その瞬、終わったといました。

鳴りませんでした。

斎にも入りませんでした。

「処理って何?」とも聞きませんでした。

聞いてしまえば、まだ答えを求めている妻になってしまう。

私はもう、その席に戻りたくありませんでした。

台所へ戻ると、噌汁がさく煮っていました。

私はを止めました。

壁には、古い結婚写真が掛かっていました。若い巧が笑っていました。若い私も、疑うことをらない顔で笑っていました。

その写真ので、私は予約確認をもう度見ました。

怖かったのは、彼がの女をしたことではありません。

私に朝を作らせながら、彼がもう別の女の指輪を選んでいたことでした。

私を妻としてに置いたまま、ではもう片付ける予定の荷物にしていたことでした。

その、スマートフォンが震えました。

らない番号からでした。

「さゆりさん、巧さんを責めないでください。彼はずっと苦しんでいました。奥様が放してくだされば、誰も傷つかずに済みます」

私は画面を見つめました。

誰も傷つかずに済む。

もう傷ついているだけが、いつもその“誰も”のに入れられないのだといました。

私は返信しませんでした。

ただ、その画面を保しました。

予約確認も、領収も、共同座の細も、すべて写真に撮りました。

それから寝の引きしをけました。

には、古い結婚指輪がありました。

捨てられなかったもの。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: