"秩父の森に残された映像" 第5話
「秩父のでを見つけました。失踪事件と関係があるかもしれません。このビデオカメラも、そこにありました」
警察はすぐに現確認に向かった。はの根とに覆われ、ドアはすべて閉じられていた。内部にの痕跡はほとんど残っていなかったが、ハンディカムのメモリーカードは奇跡に保されていた。
科学警察研究所による復元の結果、722分の映像が取りされた。
映像には、失踪直の48が断片に記録されていた。
キャンプでの会話。事現のような所。夜に揺れるランタン。誰かを呼びながらる声。荒い息遣い。々のを抜ける自然な。
そして、638分点。
カメラを持っているのは、おそらく斗だった。彼は暗のをりながら叫んでいた。
「優斗、そこにいるのか。返事してくれ」
その、むらの向こうから1つのがびした。
黄い産業用ヘルメットをかぶり、暗いジャンパーを着た男。
画質は荒かったが、顔の部がカメラに映った。顎の線、目元、の横にあるさな傷。顔認証と歩分析の結果、ある物の名が浮かびがった。
田達。
致率は92%。
分析は静まり返った。
さらに次の面で、カメラは面に倒れた。とが映る画面の奥で、誰かが両を押さえられ、森の奥へ引きずられていく姿が2.6秒だけ記録されていた。
広告
最に、い男の声が入っていた。
「静かにしろ。もう終わりだ」
警察は田の方を追った。
だが彼は、ビデオカメラを提した、「自分はやるべきことをやった」とだけ言い残し、埼玉の現から姿を消していた。
なぜ、容疑の目が向くかもしれないビデオカメラを自ら届けたのか。
本当に偶然見つけたのか。
それとも、誰かに何かを見せたかったのか。
事件は、単なる失踪から犯罪の疑いへと変わっていった。
そして田達という名は、森の沈黙の奥から、ゆっくりと浮かびがった。
田達の過を調べると、彼が2003当、秩父の発事に関わっていたことが分かった。
彼は正式な社員ではなく、現責任者だった伊藤正司の非公式なルートで雇われた械備士だった。事は表向きには止されていたが、では夜にがき、発が回っていたという証言が複数残っていた。
さらに調査をめると、失踪した優斗のカメラに、事件の映像が保されていたことも分かった。2003322、くから事現を撮したズーム映像。そのに、無線を持つ田の姿が映っていた。
つまり田は、失踪から学たちに顔をられていた。
もし優斗がキャンプにその映像を取りし、誰かがそれに気づいたとしたら、彼らが狙われる理由は分にあった。
広告
その、元作業員の林実が警察署を訪れた。
彼は2003の、秩父の現周辺で臨倉庫の管理をしていた男だった。い沈黙していたが、田の名が報されるようになり、耐えきれなくなったという。
「あの男なら、見たことがあります。失踪事件が起きる1、2週の夜でした」
林は、田が夜10過ぎにトラックで倉庫へ入ってきたと証言した。荷台には、くてそうなものが覆いをかけられて積まれていた。ろす、から何かがずり落ちるような音がしたという。
田は林にづき、静かに封筒を差しした。
「今見たことは、言わないでいただけますよね」
封筒には現20万円が入っていた。
林はその夜から、何も見なかったことにしてきてきた。
彼の証言をもとに、警察はかつての臨倉庫跡を再調査した。探査の結果、に直径約1.2mの狭い通が見つかり、属製の物体の反応も確認された。
それは単なる資材置きではなかった。
誰かが何かを隠すための空だった。
さらに2021、鈴彩佳の遺品が再鑑定されることになった。
で汚れ、保管されていたバッグの内側、ポケットの奥から、さなSDカードが発見された。黒いマジックで「AYAKA 05」とかれていた。
復元された映像は、200355午342分に記録されたものだった。
画面には、暗いテントのでカメラを握る彩佳の顔が映っていた。
彼女の息は荒く、からはいうなり声と、くで誰かが叫ぶ声が断続に入っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
白線の先の女たち
昭和三十九年、女子競輪が終わりを迎えようとしていた。三十四歳の佐伯久美子は、最後の地元決勝で優勝する。しかし彼女が真っ先に求めたのは、花束でも拍手でもなく、次の出走表だった。返ってきたのは、もう走る場所はないという答え。そんな久美子の前で、十九歳の新人・夏子は「私は来年も勝ちたい」と訴える。仕事、家族、怪我、そして失われた競走の舞台。走ることを諦められない女たちは、それぞれの暮らしを背負いながら、新しい一歩を探し始める。時代|歴史|昭和|ミステリー3.0万字5 200 -
完結第15話
姉の身代わりで嫁いだら、冷酷当主の本命でした
家族に冷遇され、姉の身代わりとして“冷酷な当主”のもとへ嫁がされた澄乃。しかし初対面で、偽りの花嫁だと見抜かれてしまう。 追い返される覚悟をした澄乃に、静は「お前で構わない」と告げる。さらに帳簿を読む彼女の才能と、恐れながらも嘘をつかなかった誠実さを認めていく。歴史|昭和|ミステリー|夫婦|第二の人生2.0万字5 697 -
完結第15話
「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨
2024年、東京・品川の古い屋敷で、樹齢70年の柿の木が引き抜かれた。その根元から見つかったのは、大人一人と子ども三人の遺骨。20年前、この屋敷では住み込みの家政婦と三人の娘が姿を消し、家主である元校長は「金を盗んで夜逃げした」と説明していた。なぜ彼は、柿の木だけは絶対に切るなと家族に言い残していたのか。捜査を進める刑事・渡辺は、町の人々から尊敬されてきた元校長の過去と、20年間隠されてきた母娘の失踪の真相を追い始める。ミステリー|真実|真相1.7万字5 218 -
完結第12話
昭和44年、終電後に消えた駅員――28年目に見つかった記録
昭和44年、長野県の小さな駅で働く杉原修一は、最終列車を見送った夜、8万6,400円の現金とともに姿を消した。父を泥棒と呼ばれながら育った娘の美緒は、28年後、取り壊しが決まった駅舎で古い駅務日誌を発見する。そこには、父が終電の55分後、赤いランプを持って七号橋へ向かったという不可解な記録が残されていた。運休したはずの貨物列車、書き換えられた帳簿、沈黙を守る関係者たち。父はあの夜、何を知り、なぜ帰ってこなかったのか。昭和の小駅に封じられた28年間の謎を追う、家族と真実の物語。時代|歴史|昭和|ミステリー|真実2.9万字5 337 -
完結第12話
雨宮停留所の黄色い傘
私は六十二歳。幼いころから、ときどき人には見えない姿や声を感じることがある。 山梨の小さな町で叔母の家を片づけていたある雨の日、廃止された停留所の水たまりに、黄色い傘を差した少年が映った。 そこで出会った老女は、四十年近く前に失踪した息子を今も待ち続けているという。 「まだ帰れない」 少年が残した言葉を手がかりに調べ始めると、破り取られたバスの運行日誌、隠された手紙、そして家族が長年伏せてきた秘密が浮かび上がる。 あの少年は、いったい何を伝えようとしているのか。日常ホラー|ミステリー|真相|親子関係2.2万字5 334 -
完結第13話
疎開から戻った娘が、再び村へ帰りたがった理由
昭和二十年の秋。戦争で夫と家を失った文江は、集団疎開から戻った十二歳の娘・幸子と、焼け跡の東京でようやく再会した。 ところが三日後、娘は突然「あの村へ帰りたい」と言い出す。母との暮らしを喜んでくれると思っていた文江は、深く傷ついた。 やがて娘の行李から見つかった一通の手紙。そこには、長野の農家で暮らす九歳の少女・千代との、切実な約束が隠されていた。 自分たちの生活さえ苦しい母娘は、その約束にどう向き合うのか。戦後の厳しい暮らしの中で、家族の絆と本当の居場所を見つめ直す、心温まる物語。時代|歴史|昭和|ミステリー|親子関係2.8万字5 262 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 255 -
完結第16話
雪の空港で消えた四人と第七格納庫
1989年のクリスマスイブ、北海道の空港から四人の客室乗務員が姿を消した。車には荷物と靴だけが残され、手掛かりのないまま35年が過ぎる。 2024年、解体中の旧格納庫で隠し部屋が発見され、事件は再び動き始めた。浮かび上がったのは、空港内部を熟知し、彼女たちを密かに監視していた元整備士だった。ミステリー|真実|真相1.9万字5 1221 -
完結第14話
七年後、屋上で見つかった妻の秘密
1993年、鹿児島。自治会の帳簿を整理していた主婦・ミキは、過去の火災復旧費に不自然な水増しを見つける。調査を始めた直後、彼女は遺書とバッグだけを残して姿を消した。 投身とされた事件から七年後、マンション屋上の封鎖された旧貯水槽から、ミキと一致する人骨が発見される。ミステリー|真相|行方不明2.1万字5 429