みかん小説
本棚

"雨の美容室ローズ" 第8話

2は聞き込みを始めました。

何目かに尋ねた寄りの女性が、ふといしたように言いました。

「田? ああ、田のの坊やのことかね」

と美佐さんは、わず顔を見わせました。

「ごじですか」

「ごじも何も、あの坊やならよう覚えとるよ。賢い子でね、でも評判のできる子だった。けれどが貧しくてねえ。気の毒な子だったよ」

その老女の話によると、田誠は、貧しい農のまれでした。しかし変のいい子で、苦しい計のでも勉学に励み、町をて都会の学へんだのだそうです。

「あの坊やはのみんなの希望だったよ。あんな貧しいから都会の学へったんだもの。きっと派になってに錦を飾ってくれると、みんなそうっとった」

けれど老女は、そこで声を落としました。

「あの坊やは、それきりには帰ってこなんだ。の便りに、都会で会社をやっとるとか聞いたこともあったけどね。だんだんその噂も聞かなくなって、両親がくなったも葬式には帰ってこなかった。それきり、どこでどうしているのか、誰もらんようになってしまったんだよ」

は帳にき止めながら、さらに尋ねました。

「田さんには、付きっていた女性はいませんでしたか。をるに」

老女はし考えてから、はっとしたように顔をげました。

広告

「ああ、そういえばおったね。許嫁が」

「許嫁?」

「ええ。まだ若い頃の話だけどね。誠坊と、隣の娘さんとが、いずれは夫婦にという話があったんだよ。2とも仲がよくてね、の者はみんな、あの2はいずれ所帯を持つものだとっとったよ」

美佐さんの胸が、どくんと鳴りました。

「その娘さんというのは、どんな方だったんですか」

老女はしわだらけの顔に、優しい笑みを浮かべました。

「別嬪さんでね。気てのいい、しっかりした娘さんだったよ。確か、髪結いの修がしたいとか言っとったね。先が器用で、のおばあさんたちの髪をよう結ってあげとった。なんという名だったかね。確か……しず子とか、そんな名だったような」

その名を聞いた途端、美佐さんの全が凍りつきました。

「しず子……母です。それ、私の母です」

美佐さんの声は震えていました。

全ての糸が、ここで1つにつながりました。

最の客、田誠は、しず子さんの若きの許嫁だったのです。

福島での聞き込みによって、と美佐さんは、しずつ2の若いの物語をつなぎわせていきました。

田誠は、貧しい農の息子でした。けれどがよく、努力で、では将来を期待されていたでした。

方、宮しず子は隣の娘でした。器用なを持ち、子どもの頃からの髪を結うのがでした。

広告

の女性たちに頼まれれば、嫌な顔1つせず髪をえてあげる、面倒見のよい娘だったそうです。

2は幼い頃から顔なじみでした。

を緒に歩き、田んぼのあぜで語りい、祭りのには並んで台を回った。そうしたさないの積みねので、2のには自然と特別なが芽えていったのでしょう。

のたちも、2はいずれ夫婦になるものとっていました。

けれど、2は結ばれませんでした。

誠は都会の学へむため、をました。

しず子もまた、美容師の修をするためにをれ、やがて川の町へ移っていきました。

2は、それぞれ別のを歩むことになったのです。

の貧しさ。

若い2の。

れて暮らす。

そして、それぞれの。

詳しい事をる者はもういませんでした。けれど確かなことは、2が結ばれぬまま別れたということでした。

しず子さんは川で美容師となり、別の男性と結婚し、美佐さんという娘を授かりました。夫をくしたも、さな美容ローズを1で守り続けました。

では、誠さんはどんなを歩んだのでしょうか。

はさらに、誠さんのそのの取りを調べていきました。

すると、痛ましい事実が次々とらかになりました。

都会へた誠さんは、初めはしっかりと働いていたようでした。

やがて独し、さな会社を起こします。けれど代の波にまれてしまったのでしょう。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: