みかん小説
本棚

"雨の美容室ローズ" 第10話

これは何をするか」

美佐さんは両を握りしめました。

「母は、どこかくへこうとしていた……?」

「そうです。すぐに戻るつもりだったから財布は置いた。けれど、が必なほどくへくつもりだった。そして、おそらくそのにはもう1乗っていた」

「田さん……」

はく頷きました。

「ここからは私の推測ですが、おそらくこういうことだったのではないかといます」

は静かに、その晩の景を語り始めました。

あのの夕方、何ぶりかに再会したしず子さんと誠さん。

2は閉もい、語りっていました。

過ぎし々のこと。

それぞれが歩んできた別々ののこと。

そしておそらく、誠さんはしず子さんに打ちけたのでしょう。

自分はもうくない。

頼る族もなく、取ってくれる者もいない。

たった1でを待つばかりのだと。

そんな誠さんが最に抱いた、ささやかな願い。

それは、もう1度だけ、まれ故郷のあのを見たいということだったのではないでしょうか。

棚田の段々。

田んぼに張った。

々の緑。

子どもの頃、しず子さんと2で駆け回った懐かしい景。

それをぬに、もう1度だけこの目で見たい。

「母さんなら、きっとそうします」

美佐さんは涙ながらに呟きました。

「母さんはそういうでした。困っているを見過ごせない。

広告

誰かのためなら、自分のことは回しにしてしまう。そういうでした」

も頷きました。

「お母さんは、誠さんをに乗せて、福島の故郷まで送り届けてやろうとした。最にいのを見せてやりたい。それだけのつもりだった。だから、すぐ戻るつもりで財布も置き、ただの鍵だけを持ってをたんです」

それが、10解けなかった謎の答えでした。

しず子さんは事件に巻き込まれたのでも、誰かに連れられたのでも、ましてや族を捨てて姿を消したのでもありませんでした。

ただ、古い友のたった1つの願いを叶えてやろうとした。

それだけだったのです。

けれど、の表はそこで曇りました。

「問題はその先です」

2を乗せた軽自は、の夜のをへ向かったのでしょう。福島のあいのを目指して。

けれど、そのは険しいでした。

梅のは、夜が更けるにつれてさらに激しくなっていったはずです。にはいがち込めます。曲がりくねった暗い、慣れない夜の運転、界を遮ると。

はしばらく言葉を切りました。

そして、声を落として続けました。

「10の捜査では、2の取りは川をた辺りで途切れていました。けれど、それは捜査の範囲が違っていたからかもしれない。誰も、2が福島へ向かっていたとはわなかった。

広告

だから、福島へ続くあのの底までは、誰も調べなかったんです」

美佐さんの顔から、すっと血の気が引いていきました。

「美佐さん。辛いことを言わなければなりません。覚悟して聞いてください」

そののうちに、は福島へ続くのある点を元の警察に調べてもらうよう依頼しました。

10、誰も目を向けなかったい。

夜、が転落したとすれば、まさにその辺りという所でした。

捜索は数にわたりました。

々のい茂る険しいです。10という歳のには伸び、砂や落ち葉が何もかもを覆い隠していました。

そして、の最もいところで、それは見つかりました。

10ものい、に埋もれ、に打たれ、れず眠り続けていた1台の古い軽自。

そのから、2の遺骨が見つかりました。

宮しず子さんと、田誠さんでした。

の夜。

に巻かれたで、はをそれ、いへと転落していたのです。

10のあの晩のうちに。

らせを受けた美佐さんは、そのに崩れ落ちました。

い、のどこかで覚悟はしていました。けれど、いざこうして真実を突きつけられると、やはり胸が張り裂けそうでした。

母は、もうこの世にはいなかった。

10の、あのの夜からずっと。

けれど、涙にくれる美佐さんの胸には、しみだけではない、もう1つのいが込みげていました。

母は事件に巻き込まれたのではなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: