"42人が消えた渚" 第5話
それは、違いなく今井先だった。27という容赦ないは、かつて活だった教師の背を丸くさく縮めさせ、その両肩に、目に見えないい何かを載せているようだった。
「さち子さん……」
今井先は、かろうじて聞き取れるほどの掠れた声で呟いた。さち子が静かに歩み寄り、机のにあのアルバムの写真を広げると、先のがわずかに刻みに震えるのが見えた。
「申し訳ないが……私には、何も話せることは……」
先は目を伏せたまま、力なく首を振った。その拒絶の姿は、先ほどの漁師の父親の諦めとも、の族たちのたい拒絶とも違い、胸を締め付けられるようない罪悪に満ち溢れていた。
さち子は先を責める言葉を見つけられなかった。彼女はただ静かに、自分の胸の内を語り始めた。息子の勇気の部が、今もあの、1990ののままの状態で残されていること。々、誰もいないはずの廊から板が沈むような音が聞こえること。そして、あの写真の5の子供たちの顔に、奇妙な黒いシミが浮かびがってきたこと。さち子の静かな言葉は、夕暮れの静まり返った教の空気に、ゆっくりと溶けて消えていった。
どれくらいのが経っただろうか。い、息が詰まるような沈黙の、今井先はようやく、喉の奥から絞りすようにして声を放った。
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「……あの子たちので、あの、密かに流っていた遊びがあったんです」
それは、事件27、警察も含めて誰も度もにしなかった、初めて聞く恐ろしい話だった。さち子はを乗りし、先の言葉を待った。
「『探しの約束』……あの子たちは、その遊びをそう呼んでいました」
先はい腰をげておもむろにちがると、教卓のに置かれたままだった古いチョーク入れにそっと指を入れた。底に残っていたいチョークのを、ざらりとした自分の指先で確かめるようにねこねながら、記憶のい扉をゆっくりといていく。
「最初は、ただの子供たちのらしい遊びだとっていました。夜空のに向かって、のない願い事をするような……。しかし、違ったのです。あれは、ある種の儀式のようなものだったのかもしれません。クラスのでも、特に物静かでのかった、さゆりさんという女がになって、『古い本にかれていた』と言って、クラスの皆に広めていたのです。病気がちで学を休みがちだった彼女の言葉を、なぜか子供たちは妙にく信じ込んでいました。私はその異様な雰囲気に気づきながらも、く踏み込むことをしなかった……。子供たちの閉ざされた世界を壊してはいけない、と、そう自分に言い訳をして……」
先の声は、激しい悔ので細かく震えていた。
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あの、自分が教師として子供たちの異変を止められなかったことを、彼は27、毎のように自分を責め続けてきたのだ。
その凄惨な告は、さち子の胸にく、そして静かに突き刺さった。らなかった。自分のらないところで、息子たちにあんな気な秘密の約束があったなんて。
さち子はゆっくりと歩き、勇気が当使っていたであろう、窓際の古い席にづいた。製の机の表面に残る、無数の細かい傷や落きをそっと指先でなぞってみる。ここに座って、勇気は先の話を聞き、友達と笑いい、そして裏ではあの『探しの約束』を信じていたのだろうか。そのさな背を像すると、たまらないしさと切なさが胸の奥から込みげてきて、さち子の瞳が静かに潤んだ。それは、りやしみではなく、息子のらなかった面に初めて触れた、戸惑いと痛みの涙だった。
廃からの帰り、さち子ののは、今井先が遺した言葉で完全にいっぱいになっていた。「探しの約束」。その気な言葉が、まるで古い呪文のように、何度も何度ものでリフレインする。息子たちは体、あの宿所でどんなを探し、何を約束しようとしていたのだろうか。いくら考えても、その答えは夜ののにく溶けていくだけだった。
その夜、自宅に戻ったさち子は、ともにひどく疲れ切っていた。
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