"年金九万円の同窓会" 第3話
あまりにも突然だった。
準備も覚悟もないまま、私は妻からシングルマザーになった。
そこからの毎は、を見るなどなかった。
、清掃、パート。
いくつもの仕事をした。
毎考えるのは、今をどう乗り切るか。
子供に何をべさせるか。
賃をどう払うか。
理恵とは、いつのにか連絡が途絶えた。
づてに、彼女が結婚し、夫は企業勤めで、ももあると聞いた。
そのも、私はただ「そうなんだ」とっただけだった。
比べる余裕すらなかったのだ。
けれど今、ぶりに届いたハガキをにすると、別れたが急にはっきり見えてくる。
もし学していたら。
もし夫がくならなかったら。
もし別の選択をしていたら。
答えのない問いが、夜の部に静かに浮かぶ。
でも私はっている。
戻れたとしても、きっと同じようにきただろう。
そのの私が持っていたもので、精杯選んできたのだから。
同窓会は、誰かと比べる所ではないのかもしれない。
の自分が、どこにっているのかを確かめる所なのかもしれない。
そうっても、まだ怖かった。
けれど、ハガキをしまい込むことはできなかった。
私はすぐに同窓会へくと決めたわけではない。
「よし、こう」
そんなふうにちがれるほど、私はくなかった。
気持ちはもっとゆっくりいた。
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さな滴が、同じ所へ何度も落ちるように、しずつ積もっていった。
招待状は数、テーブルのに置かれたままだった。
片付けることもできず、かといってに取ることもできない。
通りかかるたびに界に入り、そのたび私は目を逸らした。
怖かった。
会で誰かに何かを言われることよりも、そのにった自分が何をじるのかが怖かった。
今の活はさい。
でも全だった。
誰にも自分の額を聞かれない。
誰にも仕事を説しなくていい。
どうしてそんな暮らしをしているのか、理由を求められることもない。
この団のは、狭いけれど私の全帯だった。
そのの午、私はいつもよりく仕事から戻った。
腰がしく、背に疲れが残っていた。
制を脱ぎ、子に腰をろして部を見回す。
古い器棚。
さなテーブル。
い座布団。
すべて目を閉じても所が分かる。
そのふとった。
このままずっとここにいたら、私はたぶん何も傷つかない。
でも何も変わらない。
それはなのか。
それとも、ゆっくりと自分を閉じ込めているだけなのか。
夜、娘から話があった。
世話をしているうちに、私は何気なく同窓会の話をした。
「卒業周だって」
話の向こうで、娘がし黙った。
「きたいの?」
私は反射に答えた。
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「おの余裕がないからね」
すると娘は、し笑って言った。
「おのことを聞いてるんじゃないよ。きたいかどうかを聞いてるの」
その言葉に、胸の奥が揺れた。
誰かに自分の気持ちを尋ねられるのは、いつ以来だろう。
私はしばらく黙った。
そしてさく言った。
「かなかったら、ずっと気になるとう」
娘は優しい声で言った。
「じゃあ、ってきたら」
話を切った、私はタンスをけた。
しいはない。
華やかなもない。
けれど、濃い青の着が枚あった。
古いが、清潔だった。
私はそれを取りし、鏡のにった。
髪もある。
皺もある。
も荒れている。
でも、そこに映っていたのは、逃げるの顔ではなかった。
同窓会が怖いのではない。
自分のがのと違っていたと認めることが怖かったのだ。
けれど、それは失敗なのだろうか。
子供を育て、働き、何度も踏ん張ってきた々は、恥ずかしいものなのだろうか。
私はテーブルに戻り、招待状をに取った。
携帯をき、返信欄にく打った。
「参加します」
送信ボタンを押す指は震えていた。
けれど、確かに押した。
その瞬、臓が速く打った。
恐怖だけではない。
久しぶりに、自分の殻から歩へた覚だった。
その夜、私はあまり眠れなかった。
けれど、議と悔はなかった。
同窓会のは、っていたよりくやってきた。
その朝、私はいつもよりく目を覚ました。
緊張していたのだとう。
井を見つめながら、ぶりに会うたちの顔をい浮かべた。
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