みかん小説
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"登記簿に残った妻の名前" 第5話

きましたが、言葉がませんでした。いつもなら舌打ちをして、声を荒げて、子を黙らせようとしたでしょう。けれど登記簿の写しは、声では消せませんでした。

リビングには沈黙だけが残りました。子は泣きませんでした。鳴りもしませんでした。ただ、自分の名が記されたを見つめていました。

35、誰かの妻としてきてきた子が、その夜ようやく、自分の名っていました。

章 子が扉をいた

3か、しずく町の平にはさな板がかかっていました。

「茶かず」

の板に、やさしい文字でそうかれていました。玄関のにはさな鉢植えが並び、古い平にはが柔らかく差し込んでいました。子は入の鍵をけ、戸を引きました。しく付け替えた鈴が、澄んだ音をてました。

ゆかが束を抱えて玄関にっていました。

「お母さん、本当におにしたんだね」

子はし笑いました。

「ここは誰かに奪われるじゃなくて、私が戻ってくる所だったの」

しずく町の平の鍵はすべて変えました。美咲が選んだ具はキャンセルされ、残った費用は秀元に請求だけを置いていきました。居になるはずだった所は、秀にとって請求悔だけを残す所になったのです。

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、秀まで来ていました。子は窓越しにその姿を見ました。肩は以より落ち、髪もし乱れていました。

子、しだけ話せないか」

子は玄関をけませんでした。インターホン越しに答えました。

「画面でお願いします」

はしばらく黙り、それから言いました。

「美咲とは終わった。もない。俺は違えたんだ」

違えたのではなく、私を軽く見たんです」

「やり直せないか」

子は画面のの秀を見ました。35見てきた夫の顔でした。けれど、もうその顔に自分のを預けることはありませんでした。

「私はもう、あなたの都く扉ではありません」

は何も言えず、肩を落として帰っていきました。

内に戻ると、ゆかが側の部を見回していました。

「あの部、赤ちゃん部にされるはずだったんだよね」

子はコーヒーを淹れながら頷きました。

「今は読席よ。誰かが静かに休める所にしたかったの」

「お母さん、くなったね」

子はカップにコーヒーを注ぎ、しだけ笑いました。

くなったんじゃないわ。やっと自分の名きることにしただけ」

の扉についた鈴が、さく鳴りました。誰かが最初のお客様として入ってくるには、まだでした。けれど、子のしいは、もう静かに営業を始めていました。

信じていたに裏切られたはつい自分の価値までく見積もりたくなります。けれど、は変えられなくても、自分を差し所は選べるのです。子が守ったのは、平だけではありませんでした。登記簿に残っていた名と、その名きる尊厳でした。

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