"自由を返した春" 第5話
向かいにい根が見える。
そのに広がる空は、っていたよりもきかった。
紀子はカップを両で包み、窓のを眺めた。
誰かの分を作らなくていい朝は、まだし議だった。
朝を作るも、洗濯を回すも、買い物へるも、すべて自分で決められる。
それなのに最初のうち、紀子は何をしていいのか分からなかった。
自由とは、っていたより静かなものだった。
段ボールはしずつ片付いていった。
図館へき、帰りにスーパーへ寄る。
そんな々がしい常になっていく。
スーパーでは、今まで買わなかったものをしずつ買うようになった。
さなグリーン。
自分用のしい茶。
美優が来たのためのプリンカップ。
誰かに必かどうかではなく、自分が欲しいかどうかで選ぶ。
その為が、紀子にはまだし贅沢にじられた。
ある夕方、図館で田さんが声をかけてきた。
「引っ越されたんですね。しいところ、慣れましたか?」
「しずつ」
「暮らし、変じゃないですか?」
紀子はし考えた。
「変かどうか、まだ分からないんです」
正直な答えだった。
ただ、苦しいとはわなかった。
帰り、スーパーに寄った。
鮭はさいものを切れ。
豆腐は半丁。
野菜もしだけ。
レジでし迷って、さなグリーンをつ加えた。
曜に美優が来る。
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部に戻り、夕を作った。
台所は狭かったが、きやすかった。
蔵庫も、棚も、鍋も、すべて自分が使いやすい所に置ける。
べ終えて、子に座る。
その、スマホが鳴った。
画面を見ると、夫からだった。
紀子はなかった。
しばらくして、メッセージが届いた。
『施設から話が来た。面談に族で来るよう言われた。事がうまくいってない。台所もそのままだ。どうすればいいかわからない』
紀子は画面を読んだ。
返信はしなかった。
スマホをテーブルに伏せる。
夫からの着信は、今だけで回になっていた。
窓のは暗くなっていた。
部は静かだった。
誰かに気を遣わなくていい静けさが、部のに満ちていた。
紀子はその静けさので、ゆっくりとお茶をんだ。
曜の朝、紀子はいつもより丁寧にプリンを作った。
しい台所は狭い。
鍋を置く所も、ボウルを広げる所も限られている。
それでも順は変わらなかった。
卵を溶き、牛乳を温め、砂糖を混ぜる。
カラメルを焦がすだけ、し緊張した。
鍋の底で砂糖がゆっくりづいていく。
甘くてし苦い匂いが、狭い台所いっぱいに広がった。
美優が来るに、プリンを蔵庫へ入れる。
それだけで、部全体が待ちわせ所のようにるくじられた。
チャイムが鳴ったのはをし過ぎた頃だった。
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ドアをけると、美優が廊にっていた。
さなリュックを背負い、目を輝かせている。
「おばあちゃん!」
「いらっしゃい」
美優は部に入ると、きょろきょろと辺りを見回した。
そして窓のそばでち止まった。
「空、広いね」
紀子は笑った。
「広いね」
午、で卵焼きを作った。
台所が狭いので、美優の踏み台を置くと、ほとんどきが取れない。
美優は壁に肘をぶつけて笑った。
「狭いね」
「狭いね」
「でも楽しい」
紀子はその言葉に、胸が温かくなった。
卵焼きができると、美優は切れつまんで目を細めた。
「おばあちゃんのだ」
「変わらない?」
「うん。変わらない」
昼ご飯をべ、絵本を読んだ。
読み終えると、美優がふと尋ねた。
「ねえ、おじいちゃんはどこにいるの?」
紀子はしを置いた。
「別のところ」
「ふうん」
美優はそれ以聞かなかった。
その代わり、膝のの絵本をもう度いた。
子どもは、がうよりずっとくのことをじ取る。
けれど、今はそれでよかった。
夕方、弓が迎えに来た。
美優は玄関で靴を履きながら振り返った。
「また来ていい?」
「いつでもいいよ」
「プリンまた作って」
「作る」
扉が閉まると、部のはまた静かになった。
テーブルのには、プリンの空き容器が残っていた。
スプーンで綺麗にべてあった。
紀子はそれを見て、し笑った。
片付けをしていると、スマホが震えた。
夫からのメッセージだった。
『頼む、話せるか。事が続いていない。洗濯も片付いていない。
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