"長男の嫁の答え" 第3話
カビの臭いがち込める暗い押し入れをけると、そこには何分もの活の痕跡が、井までぎっしりと詰め込まれていた。量の着物、埃をかぶった級器、褪せたアルバム、、賞状、そして夫や義弟が子どもの頃に描いた絵。それらをつひとつ引っ張りし、捨てるもの、残すもの、夫たちの確認が必なものへと仕分けしていく作業は、すべて私の両でわれた。
段ボール箱に荷物を詰め、油性ペンでラベルを貼り、粗ゴミの業者を配する。その都度、捗をスマートフォンで報告すると、夫からは『ありがとう、任せてよかった!』といういLINEのメッセージだけが送られてきた。しかし、夫も、くにむ義弟も、ただの1度も現にを踏み入れることはなかった。温が40度くに達する炎の内で、私は、量の汗をかきながら、の族のいを仕分けし続けた。
ある、古い納戸の奥くにあった段ボール箱の底から、1枚の古い黒写真がてきた。埃を拭き取って見つめると、そこには若い頃の義母と、学くらいの夫の姿があった。夫は義母の肩に乗り、カメラに向かって弾けるような笑顔を見せていた。 私はその写真を、しばらくの、無言で見つめ続けた。 この無邪気に笑っている男を、これまで育ててくれたを、私は4すべてを投げして支えてきた。
広告
それなのに、あの男にとっては、その4がただの「練習」であり、この獄のような空きの片付けも「任せてよかった」という言で消費されていく。 私は静かにその写真を、夫へ渡すための「確認用」の箱の底へと沈めた。
空きの片付けがすべて完したのは、作業を始めてから3ヶが過ぎたの初めだった。最終に、3トントラック2台分に及ぶ量のゴミが運びされ、のはガランとした空洞になった。その際にかかった額の業者費用は、すべて私の個の貯からにて替えて支払った。 その夜、自宅のリビングで、私は業者からの領収を夫のに差しし、静かに言った。 「これ、今回の空き理にかかった費用の領収です。精算をお願いします」 夫はテレビから目をさず、領収をチラリと見ただけで言った。 「おう、ありがとう。任せてよかったよ。費用はで払うから、そこに置いといて」 しかし、その「で」という約束は、1ヶが過ぎ、2ヶが経っても、向に果たされる気配はなかった。私が催促をしようと考えていたある週末の夜、夫は嫌で晩酌をしながら、信じられない言葉をにした。
「あ、母さんのあの実の、産に査定してもらったら、良い値段で売れそうでさ。売却益の1億6000万円が入ったら、俺と弟の2で半分ずつ分けることにしたから」
広告
私は持っていたお皿を落としそうになり、夫を凝した。 「……2で分ける? 私は、あの炎ので3ヶ、で片付けをしたのよ? 業者の費用だって私がて替えたままなのに」 夫はビールをゴクリとみ干し、面倒くさそうに私を瞥した。 「片付けてくれたことには謝してるよ。でもさ、法律の相続権は息子である俺たちにあるんだから、おには関係ないだろう。男の嫁なんだから、実の伝いをするのは当然だ」 謝、という言葉がこれほど汚く聞こえたことはなかった。あまりのショックに言葉を失う私に、夫はさらに追い打ちをかけるように、たい調でこう言い放った。
「あとさ、おの実のお母さんも、そろそろ齢で介護が必になる期だろ? そっちの介護は、自分でなんとかしろよ。俺には関係ないからな。俺の仕事の邪魔はしないでくれ」 夫のその言葉がリビングに響いた瞬、私の胸の奥で、4燻り続けていた最のが消えり、驚くほど澄み切った徹な静寂が訪れた。 片付けをしたのは、私。4介護をしたのも、私。額の費用をて替えたのも、私。それなのに、そこからまれる1億6000万円というは息子2で分けし、私の実母の介護が必になったら「俺には関係ないから自分でやれ」と言い放つ。 この男にとって、私は妻でも族でもない。
「男の嫁」
広告
おすすめ作品
-
完結第17話
しおれた野菜と30万円
正月準備のため妻・綾野に三十万円を預けた修平が帰宅すると、冷蔵庫は空になり、綾野はしおれた野菜を抱えて震えていた。防犯カメラには、合鍵で侵入した母・久美子と妹・ゆりが、食材と現金を奪い、「妻が使い込んだことにする」と脅す一部始終が残されていた。 修平は援助や契約を停止し、父の遺品を調べる。その結果、母は前夫の家から二百万円を持ち逃げし、血のつながらない修平を守ろうとした父に返済を肩代わりさせていたことが判明する。完済後も母は架空の利息をでっち上げ、修平の出生を暴露すると父を脅して、長年金を奪い続けていた。人生逆転|嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場2.5万字5 980 -
完結第17話
母に追い出された私が、介護を手放すまで
三年間、要介護の母・一枝の家事と介護を一人で背負ってきた由美子は、「大好きな長男夫婦と暮らすから出ていけ」と追い出される。彼女は反論せず、通院、服薬、食事、排泄介助まで記した冷蔵庫の予定表だけを外し、新しい生活へ踏み出した。 由美子が消えると、兄・秀樹夫婦は介護の重さと毎月約九万円の費用に直面する。さらに秀樹が母の定期預金三百万円を、不倫相手への手切れ金として使い込んでいた事実も判明。義姉マリは耐えきれず家を出て、秀樹は汚物の処理すらできないまま妹へ泣きつく。 しかし由美子は、母と兄の身勝手な要求を拒み、実家からの電話を着信拒否にする。兄弟姉妹|親不孝|裡の顔|介護2.6万字5 583 -
完結第11話
棺の中で眠る娘と、吠え続けた秋田犬
秋田の豪雪地帯で、七歳の少女・雪の葬儀が営まれていた。ところが愛犬ハチだけは棺に向かって激しく吠え、畳を掻き続ける。周囲が狂犬扱いする中、前妻であり元救命看護師の静子は、棺の内側から聞こえる微かな音と、雪の指先の動きを見逃さなかった。 静子が葬儀を止めて棺を開けると、雪には脈と呼吸が残っていた。静子は的確な応急処置を行い、雪はついに「お母さん」と声を発する。無力だと見下していた静子に娘を救われ、後妻エミリーと父・健一は言葉を失う。 しかし、奇跡の生還で物語は終わらない。救急搬送される娘に付き添いながら、静子は「なぜ雪が猛吹雪の夜、裏山へ出たのか」という疑念を抱く。人生逆転|真実|真相|親子関係1.6万字5 703 -
完結第15話
炎天下に追い出された新人と、5年ぶりに戻った男
正木電気の新人・潮見知夏は、猛暑の中で草むしりを強要され、総務部長・黒岩から執拗な嫌がらせを受けていた。五年ぶりに本社へ戻った滝川武は彼女を救い、腐敗した職場の実態を静かに探り始める。 知夏は書類整理中、解約済みの植栽会社へ毎月五十万円が送金され続けている事実を発見。その直後、地下倉庫へ追放され、ついには炎天下で倒れてしまう。滝川と堀田課長は、黒岩と八谷常務による総額二億三千万円の横領証拠を揃え、臨時役員会を招集する。 そこで滝川が専務執行役員であることが明かされ、帰国した正木社長も黒岩を追及する。職場逆転|因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 506 -
完結第11話
父の葬儀を捨てた夫へ、亡き父が遺した最後の証拠
父の葬儀の読経中、夫のスマホが3度震えた。 「会社で緊急のトラブルがあった」 そう言って席を立った夫は、私の父を見送ることなく姿を消した。 喪主だった私は、何も言えず一人で最後まで葬儀を終えた。 その夜、冷たい家に戻ると、午前2時57分―― 亡くなったはずの父の名前から、メッセージが届いた。 「誰にも言わず、母さんの墓へ行きなさい」 半信半疑で向かった先で、父が残していたものを見つけた。 そこに入っていたのは、夫の知られざる裏切りと、私を守るための証拠だった。 そして私は初めて知った。 父は最後の日まで、私の人生を守ろうとしていたのだ。夫婦|親子関係|修羅場|不倫1.6万字5 480 -
完結第13話
義母に逆らった妻を閉じ込めた夫が、翌朝失ったもの
義母への仕送りを断った夜、菜緒は夫の浩司にトイレへ閉じ込められた。冷たい床で朝を待ちながら姉に助けを求め、夫の発言を録音する。翌朝、姉たちが迎えに来ると、菜緒は「もうこの家には戻らない」と告げた。 避難先で菜緒が止めたのは、義母と義弟への毎月の送金、そして夫に渡していた家族カード。さらに、夫が口走った「部屋の件」を確かめると、菜緒が独身時代に買ったマンションへ、本人に無断で義弟夫婦を住まわせる話が進んでいた。 すでに置かれた荷物を見つけた菜緒は室内を記録し、玄関の鍵を交換する。義母からの抗議にも、援助と部屋の使用を断る意思を伝えた。閉じ込められた夜に握っていたスマートフォンから、菜緒は自分の暮らしを守るために動き始める。嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.0万字5 1708 -
完結第13話
黒い着物の誓い
「お前んち、ヤクザだっけ?w なら今すぐ呼んでみろよ」 同窓会の席で、私は昔のいじめ加害者に笑われました。 祖母の形見の黒い着物を見て、 「極道の真似事かよ」 そう言った男は、私の胸元に酒を浴びせたのです。 周囲は笑っていました。 10年前、教室で机に落書きをされた時と同じように。 私は怒りを抑え、ただ1本の電話をかけました。 「5分で来てください」 すると―― ホテルの前に現れたのは、30台の黒塗り高級車。 そして、誰もが知るはずのない私の本当の立場を前に、笑っていた同級生たちは凍りつきました。 しかし、そこで終わりではありませんでした。 床に這いつくばって謝罪する男の背後には、 母親が隠していた「400万円の借金」と、10年前の雨の日に繋がる秘密があったのです。 なぜ私は、私を傷つけた相手を救うことになったのか。 そして、あの日の1万円が、10年後に大きな運命の変化を起こすことになるとは――人生逆転|怒り|真実|修羅場1.9万字5 507 -
完結第15話
300億円の恩返し
結婚式当日、白いタキシードを着て新婦を待っていた琢磨に告げられたのは、「結婚は最初からドッキリだった」という言葉。銀行の創業家である新婦の家族は、彼を笑い者にし、その様子まで動画に撮っていた。 駆けつけた妹の未令は、兄を見下す銀行一家の前で財務担当者に電話をかける。彼女は世界各地で事業を営む企業グループの創業者で、その銀行には約300億円を預けていた。無名だった未令の夢を信じ、借入れの保証人になったのも琢磨だった。人生逆転|兄弟姉妹|真相|修羅場2.2万字5 774