みかん小説
本棚

"家族だけと言われた元日の逆転" 第2話

私は瞬激しい戸惑いに襲われながらも、必に顔に笑顔を作り、受話器に向かって声を返した。

「毎恒例のおせちを持ってきたのよ。健吾にも会いたくて」

やがてガチャリと音がして、玄関のドアが半分だけいた。隙から顔をしたの表は、私の記憶にあるまでの笑顔とは、完全に違っていた。たくよそよそしく、まるでアポなしでやってきた見らぬ見当違いの訪問者を警戒するような目つきだった。私たちをに招き入れてくれる気配など、微じられない。

「そうですか。でも、今はちょっと都が悪くて……」

ややかに言い放った瞬ろにっていた正が、私の肩にそっとを置いた。夫もまた、この目のの異常な雰囲気に気づいているようだった。私たちは驚きと困惑ので顔を見わせた。何かがきく、決定違っている、そんな恐ろしい予が胸の奥でみるみるうちに膨らんでいった。

「健吾はいるか?」

がドアの隙から、い声で息子を呼んだ。その問いに対し、は困ったような、しかしどこか優越のようなものがに滲む曖昧な笑みを浮かべた。

「ええ、いますけど……。々お待ちください」

彼女が振り返り、ドアの奥に線を向けると、音を忍ばせるようにして奥から健吾が現れた。

広告

しかし、久しぶりに見た実の息子の顔にも、親を迎えるびの笑顔は切なかった。むしろそこにあるのは、烈な困惑と、何か悪いことを見つかったかのような気まずさが混じった複雑な表だった。健吾は私たちの顔を見ようともせず、頑なに線をへと落とし、目をわせようともしてくれない。

「母さん、父さん、今はその……」

健吾のはっきりとしない、歯切れの悪い言葉をにして、私の胸は激しくざわついた。何かがとても悪い方向にんでいる、そう確信せずにはいられなかった。私は箱を持つに力を込め、必るく振るいながら語りかけた。

「健吾、今もあなたのたために腕によりをかけて作ったのよ。あなたの好きなエビもたくさん入れたの。黒豆も3かけて丁寧に煮込んだのよ」

私は震えそうになるを伸ばし、箱を息子のに差しした。この箱のには、母としての1分のがぎっしりと詰まっている、それをしでも分かってほしい、そうから願いながら。でも、息子は差しされた箱を見ようともせず、ただ気まずそうに線をそらすばかりだった。

「それが……今の両親も来てて、その、数もいから……」

言葉を濁してうつむく健吾。そのあまりにもけない態度に、私の胸は締め付けられるように痛んだ。

広告

すると、ろからが健吾の言葉を引に遮るようにして、徹な声ではっきりと告げたのである。

「あら、族だけですのよ」

その瞬、世界全体の音が消え、すべての景が静止したようにじられた。族だけ。が放ったその残酷な言葉のを、私のはあまりのショックから理解することを拒んだ。キーンと激しい鳴りがして、界が急にぼやけていく。

私は43、この子を必に育てげてきた。夜泣きをすれば付きい、病気のは寝るも惜しんで病し、受験のは自らのことのように共に悩み、社会になってからもながらずっと支え続けてきた。学の教育費はもちろん、この級マンションを購入する際の莫宅購入援助だって、私たちは切おしみなく提供してきたのだ。そして今も、3寝ずに作ったおせちをこうして届けに来た。その私が、このにおいては「族ではない」というのか。

半分いたドアの隙から、きらびやかなリビングの様子が垣見えた。そこには、の両親が等な着物を着て、豪華な正料理を囲んで笑いしながら座っていた。テーブルのには、級料亭の焼き印が入ったきらびやかな箱がいくつも並んでいる。楽しそうな笑い声が玄関まで響き、幸せに満ちた雰囲気が痛いほど伝わってくる。

その、リビングにいたの母親が玄関の私たちに気づき、こちらを値踏みするような目で見て、でせせら笑ったように見えた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: