"年金七万円の老人ホーム" 第1話
私の名は田清、78歳である。5にする妻をくしてから、アパートでの暮らしを続けていた。子供は娘が1いるが、現は福岡にんでいて、自分の庭を築いている。
暗いアパートの6畳で、私は古い計簿のノートをき、ため息をつきながら数字を睨みつけていた。私のはに7万2000円。受しているのは国民だけだった。若い頃、自営業をして職の世界できていたので、には入っていなかったのだ。その過の選択が、今になってくに響いていた。
ペンを置き、賃の領収を観察する。アパートの賃が4万5000円。毎の費の請求をめくれば約1万1000円。毎の費を極限まで切り詰めても2万円。それらをのでし算するだけで、もう7万6000円という数字が弾きされる。私のは7万2000円なのだから、当然これだけでは毎の暮らしが成りたない。
「今も、りないな……」
私はさく呟き、クローゼットの奥から古い通帳を取りした。これまでは毎、僅かな貯を切り崩して活を補填していたが、その貯もいよいよ底をつきそうだった。
そんなあるの夕方、事件は起きた。暗い共階段をりようとした、元がふらつき、私はバランスを崩して方に転倒したのだ。
「うわっ!」
幸いにも自然にを突いただけで、きな怪はなかった。
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しかし、私はたいコンクリートのに倒れ込んだまま、激しい恐怖に襲われていた。自分の震える両を見つめながら、このまま暮らしを続けることの危険性を、を以ていったのだ。もしまた転んでけなくなったら、誰にも気づいてもらえないかもしれない。孤独という言葉が、気に現実を帯びて脳裏をよぎった。
私はすぐにスマートフォンを握りしめ、福岡の娘に話をかけて現状を相談した。
『お父さん、だったらうちに来ない?』
受話器の向こうから、娘は優しい声で提案してくれた。しかし、私は受話器をに当てたまま、さく首を振った。
「いや、それはできないよ。おにはおの活がある。旦さんもいるし、い子供もいるんだ。私が緒にんだら、迷惑をかけるだけだからね」
それは父親としての最のプライドだった。すると、話の向こうで娘がしを置いてから、たな言葉をにした。
『じゃあ、老ホームはどうかな?』 「老ホームか……。でも、あれは凄くおがかかるだろう。私のようなないでは無理だよ」 『調べてみようよ。んな種類があるみたいだから』
娘のな言葉に押され、私たちは緒に老ホームについて詳しく調べることにした。
数、娘が郵送してくれた何冊ものパンフレットを、私は机のに広げて観察した。
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最初に目に入ったのは「料老ホーム」の資料だった。パンフレットを見ると、綺麗な観の建物、ホテルのように広い個、そして豪華な事が並んでいた。しかし、費用のページをいた瞬、私は目を剥いた。
「入居が300万円、額利用料が15万円……。無理だ、私にはそんなおは到底ない」
パンフレットを静かに閉じ、次に「サービス付き齢者向け宅」の資料を見た。だが、これも額10万円以の費用が必だとかれており、やはり私にはが届かなかった。希望が消えかけ、私が肩を落としていると、再び娘から連絡が入った。
『お父さん、特別養護老ホームっていうのがあるよ。公な施設で費用がいんだって』
娘の言葉に従って調べてみると、特別養護老ホームは額6万円から8万円で入れるとのことだった。
「これなら、私のでも何とかなるかもしれない」
私は胸を躍らせ、筋の希望を持った。しかし、すぐに厳しい現実をることになる。資料を読みめると、特別養護老ホームに入るには「介護3以」の認定が必だと記されていた。現の私の介護認定は「介護1」であり、入居条件を満たしていなかったのだ。さらに、どの施設も待者が何百もいて、何も待つのが当たりだという事実をった。
「どうすればいいんだ……」
私は資料を机に放りし、を抱えて途方に暮れた。
その、諦めずに調べていた娘が、またつの施設を見つけてくれた。
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