"年金七万円の老人ホーム" 第4話
最初のヶは誰とも話さなかった私だが、隣の井さんが、堂やロビーで様々な入居者を紹介してくれたのだ。そののに、77歳の藤本さんという女性がいた。彼女も夫をくしてい暮らしをしていたが、健康へのからこの軽費老ホームに入所したという。
あるの夕、ロビーのソファに並んで座りながら、藤本さんは私を見て優しく微笑んだ。
「田さん、私もね、ここに入った最初の頃は本当に毎が辛くて、アパートに帰りたくて泣いていたのよ」 「藤本さんも、そうだったんですか」 「ええ。でもね、今は慣れたわ。ここには同じような境遇のがたくさんいるもの。みんなないので、何とか夫して懸命にきている。それをった、『ああ、私だけじゃないんだ』って、の底から救われたのよ」
藤本さんの言葉を聞いた瞬、私の胸の奥に温かいものが広がっていった。自分だけが惨めな老を送っているわけではない。ここにいる全員が、同じ荷を背負いながら共にきているのだ。
それからというもの、私と井さん、そして藤本さんの3は、堂の片隅やロビーでよく集まって話をするようになった。若い頃の仕事のい、子供たちの話、本当にのない世話ばかりだったが、そのが何よりも楽しかった。
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アパートで1、静まり返った部にいた頃とは違い、自分はもう1じゃないのだとはっきりと実できたからだ。
に度、施設の堂でレクリエーションが催されるがあった。入居者が全員集まり、スタッフの主導でをったり、簡単なゲームをしたりする催しだ。
最初は「子供騙しの遊びなんて、この歳になってできるか」と、私は部に引きこもろうとしていた。しかし、井さんに引っ張られるようにして会へ向かい、子に座った。
「さあ、皆さまで昔懐かしいをいましょう!」
スタッフの掛け声と共に、ピアノの音が響き渡る。『青い脈』、そして『リンゴの』、さらに『を向いて歩こう』。周りの老たちが、斉に声をわせてい始めた。
私は周囲の様子を観察しながら、恐る恐る自分もをいてみた。
「を向いて……歩こう……」
懐かしいメロディがから溢れた瞬、胸の奥からいものが込みげてきた。皆で声をわせてう、それだけのことで、え切っていたが議なほど温かくなっていくのをじた。
いながら、私は会にいる老たちの顔をずつ見つめた。そして、改めて確信したのだ。ここにいるたちは、みんな自分と同じなのだと。ないで何とかき抜くため、子供や族にこれ以迷惑をかけたくなくて、孤独のから逃れるために、それぞれの覚悟を持ってここへやってきたのだ。
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そう気づいた、私のは層軽くなった。
しかし、良いことばかりではなく、目を背けられない辛い現実も常に付きまとっていた。
毎の事はどこまでも質素で、量もなかった。たまにテレビのグルメ番組で肉料理や豪華な寿司が映るたび、私は唾をみ込み、「もっと美しいものがべたいな」と、烈な切なさに襲われた。だが、私の7万2000円という限界の予算内では、これが受け入れられる最の贅沢なのだ。
さらに、6畳の部はあまりにも狭かった。
アパートから引っ越す際、私は暮らしてきた部にあった膨な荷物をじっと見つめていた。き妻との写真、若い頃に集めた量の本、数々のいの品々。しかし、施設の資料には「持ち込めるのは必最限のの回りの品のみ」と酷にかれていた。娘からも話で『お父さん、ほとんどの荷物は持っていけないから、処分するね』と言われた。
私は涙を呑んで、自らのでいの品々の半をゴミ袋へと詰め込み、処分した。あの瞬が、で1番辛かった。まるで、自分がこれまで歩ん代码てきたそのものを、自らのでゴミ箱へ投げ捨てて消しるような、耐え難い喪失だった。それほどの犠牲を払わなければ、7万円のはに入らなかったのだ。
入居してから3ヶが経ったある週末の午、福岡から娘がわざわざ施設を訪ねてきてくれた。
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