みかん小説
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"病室の鍵を閉めた嫁" 第1話

 

「お義母さんを入れないで、赤ちゃんにはわせないで」

産婦科病棟の静かな廊に、病のドア越しに息子の嫁である美咲さんの声がはっきりと響いた。そのすぐ、カチャリとたい属音がして、内側から鍵の閉まる音が静まり返った空にこだました。

私は病ち尽くしたまま、作りの産着を切に入れた袋の持ちを、指先がくなるほどく握り締めていた。その袋の底には、無事に退院した活費用にとを込めて用した現の入った封筒と、き夫が遺したさな属箱が静かに収まっている。

初孫がまれたという最良のはずのこの、息子夫婦のためにこれまで700万円以を援助してきた私だけが、酷に扉のへと残されたのだ。けれど、病にいる嫁の美咲さんも、その母親の紀子さんも、まだ何もらなかった。その、張り詰めたで命の危に瀕した嫁と赤ちゃんを無事に救いした医療チームの全員が、かつて私が何もかけて育てげた切な教え子たちだったということを。

私の名野寺佳代、68歳です。3に最の夫をくしてからは、神奈川県にある古い造2階建てのでひっそりと暮らしを続けている。

若い頃から40もの、私は産婦科医として命の現の最線にち、ひたすら働き続けてきた。

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に突然呼びされて病院へすことも、族との事の途ることも、お正に自分のへ戻れないことさえ決して珍しいことではなかった。私のこれまでのには、いつもまれたばかりの赤ちゃんの力い泣き声と、を突く消毒液の匂い、そして厳かに照らす術灯のが常にあった。しかし、現役を退職してからの私は、世から見ればただの老いたの母親に過ぎなかった。

息子の拓哉は38歳になり、医療器メーカーで営業として働いている。当たりはとても良い子なのだ。が、昔から自分の見をく言われると、どうしても見に流されてしまう脆いところがあった。嫁の美咲さんは34歳で、拓哉と結婚する名な美容クリニックの受付をしていたそうだ。

「お義母さん、これからよろしくお願いいたします」

初めて挨拶に来た、言葉遣いも非常に丁寧で、私はくほっと胸を撫でろしたのを覚えている。その、目のげた彼女の姿を見て、拓哉は本当に素らしい良妻を選んだのだと、の底からびをじていた。

美咲さんの妊娠をらされたのは、のことだった。その、私は自宅の台所で、季節のの子を静かに茹でていた。話の向こうで、拓哉がし照れたような、弾んだ声で言った。

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「母さん、実は赤ちゃんができたんだ」

私は菜箸を持ったまま呆然としてしまい、しばらく次の言葉がなかった。話を切った、私は仏壇のにそっと座り、夫の遺を見つめた。

「あなた、私たちに孫ができますよ」

そうにした瞬、胸の奥がじんわりとくなるのをじた。私はで、これからの若い夫婦の活にはできるだけさないようにしよう、とく誓った。今の若い夫婦には、今の代にったやり方があるはずだ。昔気質の母親が余計なでしゃばりをすれば、嫁は息が詰まってしまうだろう。

そうに決めて静かに見守っていたのに、拓哉たちから頼まれれば、親としてどうしても断ることはできなかった。最初は妊婦検診の費用と入院準備のしにと求められ、すぐに30万円を渡した。次に、最のベビーベッドやベビーカー、チャイルドシート、空気清浄などを揃えるためとして120万円を振り込んだ。その、今度は「赤ちゃんがまれるには、今の部では狭すぎる」と言われ、居への引越し費用として300万円を面した。さらに、美咲さんが体調良で仕事を辞めたから活が苦しい、と相談され、毎10万円の活援助まで始めることになったのだ。

「お義母さん、本当にすみません。実の母にも相談しているのですが、産ってこんなにおがかかるものなんですね」

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