みかん小説
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"病室の鍵を閉めた嫁" 第4話

ただ、私ので何かが静かに、音をてずに終わったような気がした。

すると、換気のためにしだけいていたドアの隙から、彼らのヒソヒソ話が廊に漏れてきた。

「お義母さん、もう帰ったかしら?」

美咲さんの声だった。紀子さんがく笑いながら答える。

「ああいうプライドのはね、たくあしらえばすぐに引くのよ」

拓哉がい、ためらうような声で言った。

「でもさ、これでもうおしてくれなくなったら本当に困るよ?」

美咲さんが悪びれもせずに答える。

丈夫よ、で落ち着いてから赤ちゃんの写真を何枚か見せればいいのよ。そうすれば、またいくらでもおしてくれるわよ」

さらに、義父の夫さんの声もなった。

「それよりも、あのの名義変更の話はめにした方がいいぞ。老むには、あの敷は広すぎるからな」 「そうね、いうちに施設に入ってもらって、通帳と印鑑だけ拓哉さんが預かる形にすれば、私たちはよ」

紀子さんが言葉を続ける、拓哉は切それを否定しなかった。

「……うん、それが1番いいとう」

息子のその答えをにした瞬、私は膝の袋のにある、属箱にそっとを置いた。

『自分の老だけは任せにするな』

夫の遺した力い文字が、私の脳裏に鮮に浮かびがった。

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私はゆっくりと子からがった。

(わかりました。もう、自分のに帰ろう)

からそうった。彼らと言い争う気力も、閉ざされたドアを叩き割るような気力も、今の私には1ミリも残っていなかった。私はただ、このい産着を静かにに持ち帰り、誰もけない引きしの奥にしまおう、それだけを考えていた。

そのだった。取りでナースステーションのを通り過ぎようとした私に、向こうから歩いてきた配の護師が、驚いたような声をかけた。

野寺先……?」

私はハッとしてを止めた。振り返ると、そこには護師の坂真梨子さんがっていた。坂さんは20、同じ学病院の病棟で何度も過酷な夜勤を共に戦い抜いた、気れた護師だった。仕事には誰よりも厳しいけれど、患者さんに向ける目が何より温かいだった。坂さんはづき、私の顔をじっと見つめた。

「やっぱり、野寺先だ! どうしてこちらの病棟に?」

私が事を答えようとした、そのだった。廊の向こうから、回診を終えたの女性医師がに歩いてきた。彼女も私の姿を見るなり、信じられないというに目を丸くしてを止めた。

「先……! 野寺先ですか!?」

それは、藤沢玲奈先だった。彼女がまだ何もしつか気のできない若い研修医だった頃、初めて執刀する帝王切術でがガタガタと震えていた彼女の肩を掴み、私は何度も厳しく指導したのだ。

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「患者さんを見なさい! 自分のばかり見ないの!」と。その藤沢さんが、今やこの病院を背負って派な産婦科医になって、私のっていた。

「藤沢さん……。あなたが、あの部の美咲さんの術を担当してくれたの?」 「はい! 昨夜の術は私が執刀しました。母子ともに、完全に無事です!」

その言葉を聞いた瞬、私は昨から張り詰めていた胸の奥の息を、初めてく吸い込むことができた。「よかった……」というその言だけは、私の偽りのない本だった。

すると、藤沢さんのろから、さらに若い医師が2と、助産師が1、私に気づいて々とげて集まってきた。

野寺先! その節は、変お世話になりました!」 「の頃、先度な縫技術を叩き込んでいただきました」 「何度も厳しく叱っていただきました。今の私があるのは先のおかげです」

瞬にして、静まり返っていた廊の空気がガラリと変わった。私は自分から何も言っていないし、自分がかつてここの名医であったことなど言も説していない。けれど、集まった彼らの敬に満ちた表と震える声が、私のこれまでの40の誇りき過を、そので完全に証していた。

護師の坂さんが、怪訝そうな顔で、先ほど私がっていた美咲さんの病のドアを見つめた。

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