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"十七年目の「ただいま」" 第2話

「違います。私が産んだ子を、私がわからないとでもうんですか。この子は静ではありません」

周囲の々が息を呑む気配がしました。

「しいちゃんのお母さん、ショックで……」

「現実を受け入れられないんだろう」

そんな囁きが、の奥に刺さりました。

けれど、私のの確信は揺らぎませんでした。

その夜、私はで霊に残りました。夫も警察官も、町のたちも帰っていきました。たい子に座り、さな遺体を見つめ続けました。

私はようやくきました。

「ごめんね、ぼうや」

私の声は、静かな部さく響きました。

「あなたが誰かはわからない。でも、あなたも誰かの切な子供だったでしょうに」

私はい布のげました。

「でも、あなたは私の子じゃない。私にはわかるの」

葬儀は質素にわれました。

町の々は典を集め、「それでも葬式はしてあげないと」と言いました。私は黙って続きに従いました。

けれど、度も泣きませんでした。

弔問客が「しいちゃん、国で……」と慰めるたび、私はただ静かに答えました。

「ありがとうございます」

では、何度も同じ言葉を繰り返していました。

んでいない。

あの子は、どこかできている。

葬儀のあと、私のは町の々には奇妙に映ったようでした。

私は毎朝、の縁台に座りました。

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膝のには、静が最に着ていたさな着を置いていました。も、も、私はを見つめ続けました。

通りかかるには、必ず尋ねました。

「静を見ませんでしたか」

所のたちは困った顔をしました。

「柿さん、しいちゃんはもう……」

その言葉を聞くたび、私は首を横に振りました。

「いいえ。静きています。私にはじられるんです」

最初のうちは、皆、私を気の毒そうに見ていました。しかしく続くと、その線は憐れみからさへ変わっていきました。

夫の武弘も、に苛ちを募らせていきました。

ある夜、彼は居のちゃぶ台をく叩きました。

「柿、もうやめろ。静んだんだ。俺たちは葬式までしたじゃないか」

私は静着を抱きしめたまま、夫を見げました。

「あなたに何がわかるんですか」

「何?」

「私が産んだ子です。私がわからないとでもっているんですか」

夫の顔が赤くなりました。

「おはおかしくなったんだ」

その言葉は、私の胸にたく刺さりました。けれど私は泣きませんでした。おかしいと言われても構わない。狂っていると言われても構わない。静きているという確信だけは、誰にも奪えませんでした。

町では、私の噂が広がっていきました。

「しいちゃんのお母さん、毎で娘を探しているらしい」

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「現実を受け入れられないんだろう」

「かわいそうに、が壊れてしまったのね」

その言葉は、障子の向こうからでも聞こえてきました。けれど、私は何も言い返しませんでした。

やがて夫は、私の兄弟たちと相談しました。

「今の状態では、まともな活は無理だ」

「治療を受けさせた方がいい」

そうして私は、名古の精神病院へ入院させられることになりました。

でした。

私はさな荷物をまとめながら、静の写真を枚だけ胸元にしまいました。その写真の裏には、静跡でこうかれていました。

「まだ言ってないけど、昨の夜、に誰がいたかってるよ」

私は写真を指先でなぞりました。

「静。母さん、ってくるね。待っててね」

誰もいないに向かって、私はそう言いました。

夫に腕を引かれ、私は玄関をました。元を濡らし、の匂いが濃くちのぼっていました。

私は振り返りませんでした。

けれど、胸のではつの確信が燃え続けていました。

きている。

いつか必ず帰ってくる。

り続き、私の跡を流して消していきました。

しかし、胸に抱いたさな写真と、その裏にかれた謎めいた言葉だけは、消えることなく私のに残りました。

、その言葉がすべての真実へつながる鍵になるともらずに。

岐阜県郊さなで、私はひっそりと暮らしていました。

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