"壁の中の妻" 第5話
寝のカーテンをけると、窓から入ってくる朝の差しが肌にかかった。本格なが始まる、そんな兆しをじさせる朝だった。
子さんは台所にち、簡単にトーストと牛乳で朝を済ませると、カバンを持ってをた。いつものように歩いて15分、740分のバスに乗り込んだ。内は曜の朝ということもあり、勤する会社員や通学する学たちで激しく混雑していた。
バスが松本駅くに到着し、子さんが内科医院の通用に入ったのは午820分だった。
「子さん、おはようございます」
すでに廊の掃除を始めていた清掃員の女性が、モップを止めて先に挨拶をしてくれた。
「はい、おはようございます。今も朝から暑い、ご苦労様です」
子さんはいつも通り、周囲の々に温かい笑顔を向けた。
曜の午は、邪の患者が非常にかった。季節の変わり目のせいか、待のベンチには咳をする々がい列を作っていた。子さんは受付から名を呼び、優しく引きした。
「こちらのお席にお座りください。まず体温を測りますね」
子さんは15のキャリアで培った慣れた付きで、次々と患者たちを迎え入れた。医師の指示に従って注射の準備をし、薬の庫を確認し、カルテを棚へ理した。
正午になり、昼休みに入ると、同僚の恵子がりで子さんにづいてきた。
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「子さん、今のお昼は何にします? 私は、さっぱりしたお蕎麦がべたいな」
「そうね、お蕎麦をべにきましょうか」
2はのにカーディガンを羽織り、病院のくにある馴染みの蕎麦へと向かった。のれんをくぐり、いつもの座敷に座る。
「すみません、ざるそばを2つお願いします」
子さんが員に注文を通すと、恵子が湯呑みを持ち直しながら、し申し訳なさそうな顔で切りした。
「子さん、実は今週の曜に、急に実に帰らなきゃいけなくなっちゃって……。もしよかったら、曜の夜勤を変わってもらえないかしら?」
子さんはお茶をすすり、く頷いた。
「曜ね、私は特に予定もないから丈夫よ。それじゃあ、私はいつ休めばいい?」
「曜に私が代わりに変わってあげるわ。本当に助かる!」
「いいわよ、そうしましょう」
2は笑いいながら、運ばれてきた蕎麦をすすった。それはあまりにも平凡で、どこにでもある同僚同士の会話だった。これが2にとっての、涯最の会話になるとは、このは誰もる由もなかった。
午の診療も忙しさは衰えなかった。午3頃になると、今度は予防接種を受けに来た赤ちゃんたちと、その母親たちで待が溢れ返った。チクッとする注射の瞬に泣きす赤ちゃんを、子さんは優しくあやした。
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「泣かないで、丈夫よ。すぐに終わるからね」
子さんが慣れた付きで素く注射の部位を固定し、処置を終えると、若い母親たちは様にしたようにをげた。
午6になり、ようやく退勤のとなった。
「恵子さん、お先に失礼するわね。また」
「はい、子さん。気をつけて帰ってくださいね」
子さんはカバンを肩にかけ、まだ夕の残るるいへとた。6なのでがかった。駅のバスからバスに乗り、島の自宅へと向かう内で、子さんはカバンから折りたたみ式の携帯話を取りした。当はまだスマートフォンが普及するの代だった。彼女はボタンを何度も押し、1文字ずつ丁寧に夫へのメールを入力した。
『あなた、今退勤しました。今の夕飯は何にしようかしら?』
しばらくして、画面に返信の通が届いた。
『僕も今、退勤して駅に向かうところだよ。夜9頃にまた話するね』
メールを確認して携帯を閉じると、バスは島の留所に到着した。子さんが自宅の玄関ドアをけ、に入ったのは午710分頃だった。
鍵を閉めてリビングに入ると、当然ながらのは静まり返っていた。子さんはエアコンのスイッチを入れ、部の気を点けた。台所へって蔵庫をける。
「今は何を作ってべようかしら……」
棚の奥に、昨使ったカレーの材料がし残っているのが見えた。
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