"樹海の白いマスク" 第4話
の鳥の声も、の音も、ほとんど届かなかった。
男は1に数回、洞窟を入りした。戻るたびにや缶詰を持っていた。彼女にはなない程度のべ物とだけを与えた。
「名は」
男が聞いた。
は答えなかった。
すると男は彼女を殴った。
「名は」
「……島、」
「誰がっている。ここにいること」
は乾いた喉で答えた。
「レンジャーに登録している。友が19に帰りを待っている。戻らなければ、捜索が始まる」
男はマスクので笑ったようだった。
「探す。見つけない。この洞窟は誰もらない」
その言葉で、の体から力が抜けた。
男は続けた。
「3に見つけた。は広い。洞窟はたくさんある。誰も来ない」
は震えながら尋ねた。
「あなたは……何がしたいの」
男はし首を傾げた。
「したいことをする。おはここで俺のもの」
その瞬、は声を失った。
恐怖は、痛みだけではなかった。
この男が、彼女をとして見ていないこと。
それが何よりも恐ろしかった。
数が過ぎた。
正確に何目か、には分からなかった。洞窟のでは朝も昼も夜も混ざりい、は痛みと眠気と恐怖のでぼやけていった。
男は決してマスクをさなかった。
眠るでさえ、顔を隠したままだった。まるで、自分の正体をにられることを恐れているようだった。
声はく、片言の本語だった。
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国なのか、で育った本なのか、には分からなかった。背はく、約185cmはあるように見えた。体格はがっしりしていた。
男は折、断片に話した。
「女は嫌いだ」
「みんな同じだ」
「痛みに値する」
の通らない言葉もかった。だが、にはそれを分析する余裕はなかった。
それでも、彼女はき延びるために考え続けた。
どこにがあるのか。
男はいつ洞窟をるのか。
首のロープは緩むのか。
何か武器になるものはないのか。
ある、男は朝に洞窟をた。
「べ物を取りにく。夜に戻る」
そう言って、のを縛ったまま、洞窟をていった。
音がざかり、洞窟に静寂が戻る。
は息を殺して待った。
完全に気配が消えたことを確認すると、彼女は体を壁の方へ寄せた。岩の壁には鋭く突きた部分があった。彼女は首のロープをそこへ押し当て、しずつ擦り始めた。
痛みで息が詰まった。
首の皮膚はすでに傷だらけだった。ロープがくたびに血がにじみ、がついたように痛んだ。それでも、はやめなかった。
ここでやめたら、もう次はない。
そう自分に言い聞かせた。
何も続けた。汗と血でが滑った。腕はしびれ、肩は震えた。けれど夕方く、ロープがし緩んだ。
は歯をいしばり、片を抜いた。
自由になった瞬、涙がそうになった。
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しかし泣いているはない。
もう片方のをし、の縄を解いた。のテープを剥がすと、唇の皮が裂れた。痛みよりも、空気を自由に吸えることの方がきかった。
彼女はちがろうとした。
だががうまくかなかった。縛られていたせいで血が巡らず、膝が崩れた。をついて体を支え、しずつ洞窟のへ向かった。
狭い通をうように通り、へた。
森が広がっていた。
密集した々。暗い緑。面を覆う苔と根。見える範囲にはなかった。
太陽の位置も分からない。コンパスもGPSも男に奪われていた。
は斜面のへ向かうことにした。はい方へ流れる。川にれば、もしかするとにつながるかもしれない。
裸にい状態で、彼女はった。
枝が肌を打ち、が裏を切った。固まった溶岩は刃のように鋭く、をつくたびに痛みがった。それでもった。
20分か、30分か。
背から叫び声が聞こえた。
男だった。
はさらにろうとした。だが体力は限界だった。太いの根につまずき、のめりに倒れた。額をに打ち、界がく弾けた。
次に目をけた、男がにっていた。
いマスクが、を見ろしていた。
「逃げるとったか」
男はりに満ちていた。
は抵抗できなかった。
洞窟へ引きずり戻され、今度は以よりも固く縛られた。
ロープは皮膚にい込み、血が滲んだ。男は激しく暴力を振るい、が逃げようとしたことを罰した。
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