"霧の峠に消えた後継者" 第2話
総郎は、その3代目として族の次代を担う物だった。
幼い頃から切に育てられ、名をて、族企業へ入り、いずれは当主の座を継ぐ。周囲から見れば、何自由ないに見えたはずだった。
しかし沢田は、類の端にさく線を引いた。
継者争い。
総郎のほかにも、親族のには当主の座にい者がいるという。華やかな世界は、表がるい分、裏には濃いができる。
沢田は帳をき、2つの言葉をいた。
自分ので消えたのか。
それとも、消されたのか。
野駅に着くと、元署の刑事が迎えた。沢田はそので現の峠へ向かい、そこで巡査と顔をわせた。
「ご苦労様です。駐のです」
「京から来ました、沢田です。第1発見の状況を、もう1度詳しく聞かせてください」
は子を取り、丁寧にをげてから、発見当の様子を語った。がかったこと。ヘッドライトだけが点いていたこと。内に鞄と鍵がきちんと残されていたこと。争った跡がまったく見当たらなかったこと。
沢田は黙って頷きながら、すべてを帳にき留めた。
やがてが、し慮がちにをいた。
「沢田さん、わしのの勘で申し訳ねえですが、これは無理やり連れられたというじじゃねえようにうんです」
沢田は顔をげた。
「と言いますと」
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「連れるなら、こんなにきれいに鞄や鍵を残してはいかんでしょう。それに、運転席にいたまま襲われたなら、何かしら争った跡が残るはずです。でも、それがない」
はに包まれたの先を見た。
「まるで、自分からをりて、どこかへ歩いていったような……」
沢田はしばらく黙っていた。
それは、列ので自分がきつけた言葉となっていた。
そのから、本格な捜査が始まった。
警察は誘拐、事故、自発な失踪。その3つすべてを野に入れた。
誘拐を疑い、族の元へ代求が来ないか話を見張った。事故を疑い、峠の崖から沢の奥まで警察犬を連れて捜索した。
だが、何経っても代の求は来なかった。崖からも、沢からも、総郎の姿はもちろん、がかり1つてこなかった。
沢田は総郎の取りを洗い直した。
総郎が京の自宅をたのは、そのの昼過ぎだった。族が代々使っている軽井沢の別荘へ、1で向かうところだったという。
いつもなら運転をつけるはずだった。
それを証言したのは、族にく仕える配の使用だった。
「坊ちゃま……いえ、総郎様は、々お1になりたいとおっしゃることがありました。お1でを運転して、ふらりとかけられることもございました。でも、別荘に着けば必ずそののうちに話をくださったんです。
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あのは、その話がありませんでした」
沢田は総郎という物の輪郭を、しずつ掴み始めていた。
表向きは何自由ない財閥の継ぎ。
けれどその内側には、1でをらせ、どこかへ姿をくらましたくなるようながあった。
別荘に着いていれば、必ず話があったはずの夜。
その話は、ついにかかってこなかった。
捜査本部の黒板には、総郎の写真が貼られた。仕ての良い背広を着て、品のある笑みを浮かべた若者だった。
けれど沢田には、その目元に、どこか世界のを見ているような寂しさがあるように見えた。
「おさん、体どこへ消えたんだ」
沢田は写真に向かってさく呟いた。
夜になると、また峠にはがりた。捜査員たちが懐灯をにを歩き回り、そのがので滲んで揺れた。
だがは、ただ静かに沈黙しているだけだった。
11に入る頃、総郎が消えてから1か余りが過ぎていた。
野の峠はすっかり葉を落とし、朝晩にはがりるようになった。捜査本部はまだいていたが、誘拐を示す代求も、事故を示す証拠もてこない。
捜査は、のを探りで歩くようなものだった。
き詰まった、刑事は消えたの内側を見にく。
沢田は京へ戻ることにした。
総郎という青が、どんな物だったのか。
その暮らしの奥に、消えた理由が隠れているのではないか。そう考えたからだった。
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