"消えた女性巡査" 第3話
しい署員たちも事件のをってはいたが、それは次第に「昔、この署の警察官が1消えた」という話として語られるようになった。
そんなで、田巡査部だけは、定まで美咲の捜索を続けた。
休になると、1で温泉へ向かった。には桜のを歩き、には観客の波のを探し、には落ち葉の積もった裏をのぞき、にはにを取られながら段をがった。
「みんなが忘れても、俺だけは忘れない」
田はそうに決めていた。
60歳で退職する、田は輩たちに言った。
「美咲のことを忘れるな。警察官の仲が消えたんだ。これは俺たちの責任でもある」
輩たちは黙ってをげた。けれど、現実には捜査はき詰まっていた。2003当のデジタル技術には限界があり、力な物証拠も見つからなかった。
2013。
美咲の失踪から10が経った。
本社会ではスマートフォンが普及し、防犯カメラも性能化していた。だが、10の事件には、その恩恵を分に受けることができなかった。
その頃、美咲の族にもきな変化が訪れていた。
父の正は2011、筋梗塞でくなっていた。美咲の失踪による精神な負担が因だったのではないかと、族はじていた。千鶴子は70歳を過ぎ、体調を崩すことが増えた。それでも美咲へのいは衰えなかった。
広告
「美咲、お母さんはここにいるからね」
千鶴子は毎426になると、伊保温泉を訪れ、段の途で静かにをわせた。
方、温泉でも世代交代がんでいた。美咲をる古い民や旅館経営者は齢化し、くなったもいた。吹荘の女将、本清子も80歳を超え、旅館を息子夫婦に任せていた。
それでも清子は、折美咲のことをいした。
「あの子は、本当にいい子だったのに」
清子の記憶ので、美咲はいつまでも24歳の若い警察官のままだった。
2015。
群馬県警は、未解決事件再捜査班を設置した。科学技術の歩を活用し、過の事件を見直す試みだった。
田美咲失踪事件も、その対象となった。
再捜査班の責任者は、吉田敦子警部。52歳。捜査課のベテランで、数くの難事件をがけてきた刑事だった。
「12の事件か。当の関係者で、まだ話を聞けるはどれくらいいる?」
吉田は部たちにそう指示した。
当の資料が改めて検討され、関係者への再聞き込みが始まった。しかし12というはくのものを変えていた。記憶は曖昧になり、証拠は散逸し、関係者のにはすでにくなったもいた。
それでも、吉田たちは諦めなかった。
だが肝の物証拠はしない。美咲の持ち物も、最にいた所の特定もできていなかった。
科学技術は歩していた。
広告
けれど、調べるべき「もの」がなければ、力を発揮できなかった。
2018。
美咲の失踪から15が経った。
この、群馬県内で活するフリージャーナリストの佐々亮が、この事件に注目した。38歳の佐々は、未解決事件を追うことをライフワークにしており、な取材でられていた。
「15の警察官失踪事件。これは必ず何かあるはずだ」
佐々は、古い聞記事を読み返しながらそうじた。
勤務の警察官が忽然と消える。しかも、温泉というのい所で。自発な失踪とは考えにくかった。何らかの事件性があると見る方が自然だった。
佐々はまず、美咲の族を訪ねた。
母の千鶴子は75歳になっていた。背はし丸くなっていたが、娘のことを話すの記憶ははっきりしていた。
「あの子は本当に真面目で、責任のい子でした。絶対に自分から消えるようなことはしません」
千鶴子の言葉には、15変わらぬ確信があった。
佐々は静かにメモを取りながら、千鶴子の目を見た。いを待ち続けたの目だった。諦めと希望が入り混じり、それでも娘を信じようとするさがあった。
次に佐々は、当の同僚だった田元巡査部を訪ねた。
田はすでに退職し、内で警備員として働いていた。制は変わっていたが、ち姿には警察官だった頃の名残があった。
「美咲のことは、今でも毎考えています」
田はゆっくりと語った。
「あの子に何が起きたのか、りたくてたまりません」
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
ETCに残らない白バイ
2003年春、千葉県の高速道路を巡回していた女性白バイ隊員・水島舞が、サービスエリアで忽然と姿を消した。 監視カメラには、彼女が白バイを降りて建物へ入る姿が残されていた。だが、その18分後、白バイに乗って走り去ったのは舞ではなく、ヘルメットで顔を隠した見知らぬ男だった。 舞本人も、白バイも見つからない。料金所の記録にも、ETCログにも、その後のはっきりした足取りは残っていなかった。 結婚を控えていた婚約者、娘の帰りを待ち続ける両親、そして答えを出せないまま止まった捜査。 10年後、古い監視映像を最新技術で解析した時、画面の隅に映っていた“あるもの”が、事件を再び動かし始める。 白いバイクは、どこへ消えたのか。 そして水島舞が最後に見た人物とは――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 213 -
完結第11話
雪峠の五発
2006年11月15日、長野県北部。 その年最初の雪が降り始めた高木峠へ、1人の巡査が向かった。展望台に不審な車があるという匿名通報を受け、霧谷慎也は「確認だけ」のつもりでパトカーを走らせる。 だが午後6時15分、現場到着を知らせる無線を最後に、慎也からの連絡は途絶えた。 雪の展望台に残されていたのは、鍵のかかったパトカーと、車内に置かれた制帽と手袋。慎也本人だけが、吹雪の峠から忽然と姿を消していた。 事故なのか、事件なのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、自ら山へ入ったのか。 妻と幼い娘は、答えのないまま13年を過ごすことになる。 そして2019年春。雪解けの斜面から、慎也が持っていた古い懐中電灯が見つかった。 13年間沈黙していた峠が、初めて返した小さな手がかり。 その光の先に隠されていたのは、匿名通報の本当の意味と、雪の下に封じられていた一夜の真実だった。ミステリー|行方不明1.7萬字5 535 -
完結第13話
5枚で消された妻
1994年4月、長野県の山あいにある古いビジネスホテルで、31歳の女性・高橋美幸が冷たくなって発見された。 部屋には睡眠薬の空箱と酒の瓶。夫との離婚調停を控えていたこともあり、警察は早々に「事件性なし」と判断する。記録はわずか5枚だけ。母のよし子がどれだけ訴えても、娘の死が再び調べられることはなかった。 それから12年。 美幸の夫だった男は別の町で再婚し、真面目な父親として穏やかに暮らしていた。一方、よし子は痛む膝を抱えながら、毎年娘の墓へ通い続ける。 「娘は、自分から死を選ぶような子ではない」 誰にも届かなかったその言葉が、ある夜、古い薬物帳簿に残された一つの名前によって動き出す。 12年前のホテルで、本当は何が起きたのか。 そして、たった5枚の記録が隠していた真実とは――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 392 -
完結第13話
床下の学級日誌
1995年、福岡の小さな離島・相島に、一人の若い女教師が赴任してきた。 藤野理子、26歳。全校児童わずか11人の分校で、子どもたち一人ひとりに寄り添い、島の人々にも少しずつ受け入れられていく。だが彼女は、ある少女の腕に残る不自然な痣に気づいてしまう。 「このまま見過ごすことはできない」 そう決意した夕暮れ、理子は本土へ渡ろうとしていた。しかし、その日を境に彼女は島から姿を消す。 残された荷物、桟橋で見つかったスカーフ、そして口を閉ざした11人の子どもたち。 警察はやがて、理子が自ら島を出た可能性が高いと判断する。けれど、子どもたちは知っていた。 あの日、桟橋で本当に何が起きたのかを。 それから10年後、取り壊される分校の床下から、理子の学級日誌と万年筆が見つかる。封じられていた記憶が、静かに動き出した――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 216 -
完結第10話
白木蓮の偽証
2003年、東京大学法学部を卒業し、都内で弁護士として働いていた藤代優一が、長野の実家へ帰省した後に姿を消した。 継母・沢子は「東京へ帰ると言って家を出ました」と涙ながらに証言し、防犯カメラにも優一らしき男の姿が映っていた。携帯電話の記録も長野から東京へ移動しており、警察は彼が東京へ向かった後に何かに巻き込まれたと考えた。 しかし17年後、空き家となった藤代家の解体工事中、庭の白木蓮の根元から一体の人骨が見つかる。 それは、東京へ帰ったはずの優一だった。 当時の捜査で継母の涙を信じた元刑事・黒瀬は、再び事件と向き合うことになる。防犯カメラに映った男は誰だったのか。なぜ携帯電話は東京まで移動していたのか。そして沢子は、何を守るために嘘をついたのか。 白木蓮の下に17年間埋められていたのは、遺体だけではなかった。ミステリー|行方不明1.5萬字5 134