"浴室の鍵" 第7話
指先ほどのさな黒いレンズ。 買ってきたばかりのカメラをのひらに乗せ、私はじっとそれを見つめていた。 まさか自分のので族を監するために、こんなものを使うが来るなんて像したこともなかったけれど、もう戻りはできない。 母の腕に残された赤黒いあざと、怯えきった母の瞳が、私に覚悟を決めさせていた。
私は達也がやってくる数、脱所と浴にカメラを設置した。 つは脱所の棚の、タオルのに紛れ込ませ、内全体が見渡せるようにした。 もうつの防型カメラを浴内の換気扇のく、方が見える位置に貼り付けた。
臓が鐘のように鳴っている。 もし見つかったら、浩司にどれほど鳴られるか分からない。 達也に勘づかれたら、証拠を消されてしまうかもしれない。
震えるで角度を調し終えた直、玄関のインターホンが鋭く響いた。 「ゆみ子さん、いるんでしょう。けなさい。」
モニターに映っていたのは義母の浩司の母だった。 私は慌てて平常を装い、玄関のドアをけた。
「お義母さん、いらっしゃいませ。急にどうされたんですか?」
「どうしたもこうしたもないわよ。浩司から、あなたが親の介護で事をおろそかにしているって聞いたから、様子を見に来てやったのよ。」
義母は私の挨拶もそこそこに、で踏み込むような勢いでリビングへとがっていった。
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リビングの隅のソファには母がさくなって座っていた。 義母は母を見るなり顔をしかめ、でを覆うような仕をした。
「なんだかこの、老ホームみたいな匂いがするわね。換気くらいちゃんとしているの?」
「申し訳ありません。気をつけてはいるのですが……」
「浩司がで懸命働いて帰ってくるのに、こんな臭いじゃ休まらないじゃないの。」 義母の言葉はいつも容赦がなかった。
「体ね、ゆみ子さん。自分の親の面倒をうちの浩司に見てもらっているって自覚、ちゃんとあるの?その、妹の息子の達也まで伝わせるなんて、男の嫁として恥ずかしくないの?」
「本当に申し訳ありません。」 私がくをげると、義母はで笑ってソファに腰をろした。 怯えて私の背に隠れようとする母をたい目で見ろしながら、信じられない言葉をにした。
「達也から聞いたわよ。お母さん、もう自分の名もあやふやなんですって。夜も起きして暴れるって言うじゃない。そんな状態じゃ浩司も落ち着いて眠れないわね。」
「ええ?」 私はわず顔をげた。 母は確かに認症だが、夜に起きして暴れたことなど度もない。徘徊することはあっても、静かに歩き回るだけだ。 達也は体義母に何を吹き込んでいるのだろうか。
「あの達也くんがそう言っていたんですか?母は夜に暴れたりなんて……」
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「言い訳はいいのよ。」 義母は声を荒げ、私の言葉を遮り切った。 「いいこと、ゆみ子さん。お母さんが完全にボケ切ってしまうに、やらなきゃいけないことがあるでしょう。お母さんの実のとか預とか、そういう財産の管理、今のうちにちゃんと浩司に任せる続きをしておきなさいよ。」
その瞬、私のので何かがカチリと音をててつながったような気がした。 こうして義母が母の財産のことなんてにするなんて。 母の実はし便な所にあるが、まとまった広さのがある。 しかしそのことは結婚当初にし話した程度で、義母が執着するような話題ではないはずだった。
「お母さんが何も分からなくなってからじゃ座も凍結されて面倒になるんだから、うちの浩司が管理してあげるのが番でしょう。私はそう言っていたわ。」
義母はそれだけ言い捨てると、「あ、嫌な匂いがについちゃった」と文句を言いながら帰ってった。 義母がったのリビングで、私はたい汗が背を伝うのをじていた。
浩司が母の財産の管理について義母に話している。 そして達也は母の症状をげさに悪化しているように親族に吹聴している。 単なる悪な義母とたい夫という図式では説がつかない、得体のれない黒い渦がこのので渦巻いている。
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