みかん小説
本棚

"スイカ畑の12年" 第2話

警察から見れば分怪しい状況だった。しかし、当の捜査環境には限界があった。1989の農の駐所に、分な捜査員も科学捜査の設備もなかった。現の精密な鑑識や血痕鑑定も、今のように迅速にはまなかった。

そして何より、事件はまだ「」として扱われていた。

夜逃げの能性が残っている以、警察が全力で殺事件としてくことは難しかった。

そんな、名古から1の男がへやってきた。

伊藤夫。

佐藤ゆき子の実弟だった。

が消えたと聞き、仕事を休んで駆けつけてきたのである。

伊藤夫は警察よりも積極いた。を歩き、畑を回り、佐藤を1ずつ訪ねた。

そので、彼は1つのな話を聞いた。

男の健太が、失踪の3、友にこう話していたという。

「うちに最、変なおじさんがよく来るんだ」

が「変なおじさんって誰」と尋ねると、健太はさな声で答えた。

「お父さんの友達なんだけど、目が怖いんだ」

その話を聞いた、伊藤夫の背筋にたいものがった。

警察も再び本武志をい浮かべた。だが、本はきっぱり否定した。

「7に入ってからは、佐藤にはっていません」

しかも本にはアリバイがあった。佐藤が最に目撃された期、本は松本に2していたという。

広告

宿の主も、緒にいたもそれを証言した。

アリバイは成した。

捜査は再びき詰まった。

その頃、では別の噂が広がり始めていた。

佐藤茂夫がの女性と関係を持っていたのではないか。妻のゆき子がそれをり、子どもを連れてたのではないか。

噂は、真実よりもく広がる。

そして々が噂に目を向けている、本当に見なければならないものは、静かに見落とされていった。

佐藤のビニールハウスのに、自然なほど平らに均された跡があったことを。

噂の矛先は、渡辺美子という女性に向いた。

同じむ40歳の女性で、夫は都会へ稼ぎにっており、彼女は1で畑仕事をしていた。佐藤茂夫が彼女の畑を伝っていたことが、噂の根拠にされた。

しかし農では、所の畑仕事を伝うことは珍しくない。そこに特別なを見いだしたのは、事件に答えを求めるたちの像だった。

警察が渡辺美子を訪ねると、彼女はがるほど驚いた。

「佐藤さんはただの所のです。私の夫もっています。そんな関係なんて、あるはずがありません」

彼女は泣きながらった。

倫の証拠は何もなかった。佐藤の失踪と結びつくものもなかった。

噂はただの噂で終わった。

方、伊藤夫は別の所を見ていた。

広告

彼は佐藤だけではなく、農園の隅々まで歩いた。警察がに調べていたのに対し、伊藤は畑とビニールハウスに目を向けていた。

佐藤の農園にはビニールハウスが2つあった。そのうち、さい方のビニールハウスのが妙だった。

く使われたビニールハウスのは、で踏み固められ、のようにくなる。ところが、そのの片側だけが、妙に柔らかかった。まるで最誰かが掘り返し、またを戻したかのようだった。

伊藤はすぐに警察へらせた。

警察官たちが来て確認した。確かに自然ではあった。だが、ビニールハウスのを掘るには正式な許が必だった。単なる事件として扱われている段階では、私内の掘削許を得るのも簡単ではなかった。

類を提し、許を待つが必だった。

そのが、12だった。

12、ようやく許り、警察はビニールハウスのを掘った。

しかし何もなかった。

が柔らかい理由については、が溜まりやすい形で、湿気のためにがもろくなっているのだと説された。専見も同じだった。

伊藤夫は納得できなかった。

けれど、証拠がなければ何もできなかった。

そのごろ、事件は事実未解決として片づけられ始めた。

公式には失踪事件として残ったが、実質な捜査は止まったも同然だった。

伊藤だけが諦めなかった。

名古へ戻らず、に残って聞き込みを続けた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: