"赤いドレスの代償" 第5話
健は部の甘い誘惑と甘い言葉に溺れ、会社のだけでなく、私たちの老資にまでをつけていたのだ。
「おい、聞いてるのか?」 健の苛った声で、私は現実に引き戻された。 「おには銭も渡さないからな。も俺の財産だ。おはただの専業主婦で財産形成に何の貢献もしていないんだから、財産分与なんて権利はないんだぞ。りいに聞いたんだから違いない」
彼がどこでそんな浅な識を仕入れてきたのかは分からない。おそらく美が途半端な識を吹き込んだのだろう。私は静かにちがり、健のためにお茶を入れた。 「あなた、つだけお聞きしてもいいですか? 娘の結婚式でいただいたご祝儀はどうなりましたか?」 あえて平静な声で尋ねると、健はで笑いながら、悪びれる様子もなく答えた。 「あんなもん、美との結婚資のしにするに決まってるだろう。直君の親戚どもさ、すが持ちだけあってかなりの額を包んできてたからな。佐藤会からのご祝儀なんてを見て震えたぜ。あれなら美が欲しがっていたが買える」
その言葉を聞いた瞬、私ので何かが完全にえ切る音がした。娘のしいをお祝いしていただいた切なお。あの子の将来のためにと皆様がを込めて包んでくださったご祝儀を、あの女との遊興費に使うというのか。
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私はテーブルのの婚届に線を落とし、静かに呼吸をした。 「わかりました。ていく準備をします」 「はん、最初からそうやって素直に従えばいいんだ。おは本当に面みのないつまらない女だな」
健は満そうにちがり、嫌で呂へと向かった。「あーあ、く美の料理がいたいな」とわざとらしく独り言を言いながら。彼の音が完全にざかり、浴のドアが閉まる音を確認してから、私はリビングの観葉植物のにを伸ばした。葉の裏側に隠してあったさな黒い械を取りす。録音状態を示す赤いランプが静かに点滅している。ここには、今の彼の暴言と、娘のご祝儀を勝に使い込むという自がはっきりと録音されていた。
しかし、私が用している罠はこれだけではない。私はスマートフォンを取りし、画面に表示された1枚の画像データを見つめた。これは今の昼、ある物から送られてきた健の会社の裏帳簿のコピーだった。、夫は自分の会社で、彼にとって致命傷となるいがけない訪問者を迎えることになる。彼はまだらない、自分が誰を敵に回してしまったのかを。
「お母さん、ごめんなさい。私、お父さんのこと、もう絶対に許せない……!」 婚届を突きつけられた翌の昼がり。
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私のスマートフォンに、婚旅へ向かう準備をしているはずの娘、菜々から泣きじゃくる声で話がかかってきた。話の向こうから聞こえる震える声に、私の胸はギュッと締め付けられた。 「菜々、どうしたの? 落ち着いてゆっくり話しなさい」 私が優しく問いかけると、菜々はをすすりながら、信じられないような事実をにした。 「さっき、お父さんの携帯に話したの。直さんの親戚や佐藤会からいただいたお祝いについて、内祝いの品物を用したいから額やリストを教えてほしいって。でも、話にたのはあの女、美だったのよ!」
菜々の声にりとしみが混じっていた。 「あの女、私に向かって笑いながらこう言ったのよ。『あのおはね、健さんと私の婚旅としい具を買うために使わせてもらうわ。あなたたち夫婦は若いんだから、自分たちで何とかしなさい。もう私たちに関わらないでね』って……!」
私はスマートフォンを握るに、わずい力を込めた。昨夜健が「ご祝儀は美との結婚資のしにする」と言い放ったのは、ただの嫌がらせや脅しではなく、本当に娘の切なおにをつけていたのだ。 「菜々、今すぐに来なさい。丈夫、お母さんが全部なんとかするから」 私は静かに、けれどい決を込めてそう伝えた。
1、目を真っ赤に腫らした菜々が、慌てた様子で実に駆け込んできた。
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