みかん小説
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"赤いドレスの代償" 第19話

しかし、その類に目を通した瞬、健の顔からさっと血の気が引き、に変わった。 「嘘だ……嘘だろ……。なんだ、この『抵当権』って……。8000万円の負債……!?」

「え、貸せ!」 浩司が慌てて類をひったくり、目を丸くして叫んだ。 「兄貴、これどういうことだ!? この敷、の担保に入ってるじゃないか! しかも8000万円も借があるぞ! 財産どころか、ただの借の塊じゃないか!」 親族たちのに、ざわめきと鳴ががった。

私は静かに、全員に向かっていた。 「義父の会社が経営危に陥った10のことです。義父はこの敷を担保に、から額の融資を受けました。しかし事業は失敗し、義父は倒れました」 「な、なぜ俺がそんなことらないんだ!?」 健が私に向かって鳴りつけた。 「あなたが自分の会社のことだけでがいっぱいで、実のことなど切見ようとしなかったからです。がこのを差し押さえようとした、私が裏で交渉し、義両親がきているだけはなんとかこのませてほしいとげて、毎しずつ利息だけを払い続けていたんです」

私の言葉に、健は言葉を失い、そのにへたり込んだ。 「じゃあ……俺たちは1億円の遺産をもらうどころか、8000万円の借を相続するってことか……!?」 浩司が青ざめた顔でずさりする。 「冗談じゃないわよ! 私は嫁によ! 実の借なんて絶対に払わないからね!」

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恵みもヒステリックに叫び始めた。先ほどまで「男なんだからすべて俺のものだ」「しは分けてやる」と欲を丸しにして盛りがっていた親族たちが、今度は誰が借を背負うのかで、醜い責任の押し付けいを始めたのだ。

「ま、待て! もう1つ封筒があるはずだ!」 健が最の希望にすがりつくように、庫のに残っていたもう1つの封筒を掴み取った。そこには『遺言』と表きがされていた。 「そうだ、お袋のことだ! どこかに隠し座があるに違いけない! ここに本当の財産の隠し所がかれているはずだ!」

は封筒を破るようにけ、から1枚の分を取りした。それは公証役で正式に作成された、公正証遺言だった。健はすがるような目でその遺言の文章を、声にして読みげ始めた。 「『私、田幸子は、私の所する切の財産、並びに私の命保険5000万円のすべてを、以物に包括して遺贈する』……」

がそこまで読むと、浩司と恵みの顔に再び醜い歓の笑みが浮かんだ。 「ほら見ろ! 命保険が5000万円もあるじゃないか! 借はあれで相殺できる! さすがお袋だ!」 「やったわ!」と恵子もを叩いてんだ。 「で、誰に遺贈するっていてあるんだ? 当然、男の俺だよな」

は興奮で元を震わせながら、遺言の受遺者、遺産を受け取る物の欄に目を落とした。

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しかし、その名に目を通した瞬、健体はまるで誰かに首を絞められたかのように、「ひっ」という奇妙な音をてて直した。

の目は見き、球がこぼれ落ちそうなほどしている。持つがガタガタと激しく震え、遺言にパラリと滑り落ちた。 「どうしたのよ、お兄ちゃん? 誰の名いてあるの?」 議にった恵子がの遺言を拾いげ、その名を読みげた。その瞬、恵子も浩司も、親族全員が息を呑んでのように固まった。

遺産と5000万円の保険をすべて受け取る物。そこに記されていたのは、男の健でも、浩司でも恵子でもなかった。そこには、はっきりとした跡でこうかれていたのだ。 『文句つ言わずに私のの世話をし、最まで私をとして扱ってくれた、私のたったの本当の娘――男の妻、田弓にすべてを譲る』

静寂に包まれた古い敷ので、私はただ1に崩れ落ちた健を静かに見ろしていた。

「嘘だ! こんなもの、絶対に認めない!」

静まり返った古い敷の寝で、健の獣のような叫び声が響き渡った。彼はに落ちた遺言を拾いげ、ビリビリに破り捨てようとしたが、が震えすぎてうまく力が入らない。 「おかせたんだ! 認症でボケていたお袋を騙して、自分に全額譲るように無理やりかせたに決まっている! こんな遺言、法に無効だ!」

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