"死んだふりの母" 第9話
鈴院は、まるでその内を見透かしたかのように、静かに首を横に振った。
「遺言ではありません。法な効力を持つ形式のものではありませんが、しかし、彼女の魂の叫びとも言える、通の『表』です。これはしず子さんが5以も、まだお元気だった頃に、『万が、私が自分のを伝えられなくなったに、健太と弓に必ず渡してほしい』と、私に直接託されたものです」
そう言うと、鈴院はの内ポケットから、し古びた茶封筒を厳かにおもむろに取りした。 表面には「親展」と、見慣れた私の跡でかれている。健と弓は、ゴクリと唾を呑んだ。彼らの線が、その封筒に縫い付けられる。
「私が今、ここへ来たのは、あなた方が延命治療の止という、まさにこのをけるべき最終段階の決断をそうとしたからです。これも何かの巡りわせでしょう。ここで、しず子さんの真をあなた方にお伝えするのが、私の役目のようだ」
鈴院はそう言うと、封を切り、から便箋を取りして、朗々と読みげ始めた。
『する息子、健太、そして弓さんへ。このをあなたたちが読んでいるということは、私はもう、自分の言葉でいを伝えることができなくなってしまったのでしょう』
そこまで読んだところで、弓が苛たしげにを挟んだ。
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「置きはいいですわ。件だけ、っ取りくお願いします」
鈴院はその無礼な態度を静かに瞥すると、表を変えずに淡々と続きを読む。
『私がをかけて築き、き夫と共に守ってきた財産のほぼすべては、に契約を済ませた社会福祉法「青い鳥の会」へ寄付される続きが完しています。これは、子供たちに恵まれなかった私たち夫婦が、せめて世のの恵まれない子供たちのために役てたいと、交わしてきた約束だからです』
「は……!?」
健太と弓のから、同に素っ頓狂な声が漏れた。 財産が寄付される……? 自分たちには1円も入らない……? 信じられないという表で、2は互いに顔を見わせた。 しかし、衝撃はそれだけでは終わらなかった。鈴院は髪を直すと、髪入れずに決定な文を読みげた。
『ただし、この寄付契約には、1つだけ特別な条項が付されています。それは、もし息子の健太とその妻が、私のに何かあった際、見として誠誠、真のこもった介護を尽くし、その責務を派に果たしたと認められたに限り、この寄付契約は撤回され、すべての財産は健太夫婦に相続されるものとする。……以です』
病は、を打ったように静まり返った。 健太と弓は、まるで言葉のを理解できないかのように、呆然とち尽くしている。
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自分たちが湯のように使い込んできた財産が、実は「条件付き」のものであり、その条件を、自分たち自のこれまでのによって完璧に踏みしていたという事実。 8000万円という莫な財産を、自らのでドブに捨てていたという、あまりにも皮肉な現実。 彼らの顔から、血の気がスーッと引いていくのが見て取れた。 絶望に染まったその表を見届けた鈴院は、最に静かな声で、とどめの撃を放った。
「そして……この『誠実に責務を果たしたか』を客観に判断するのは、しず子さんがに指名した弁護士と、私を含む第者委員会です。そして、その最終判断の最もな材料となるのが、この5、あなた方がってきた介護のすべてが記録された、この病院の公式な護記録と、監カメラの映像です」
鈴院の静かな、しかし刑宣告にも等しい響きを持っていた言葉。 「監カメラ」 その4文字が、健太と弓の脳をハンマーで殴りつけたかのように、彼らの考を完全に止させた。 この病の井の隅に、何の変哲もないドーム型のカメラが設置されていることに、彼らは5、1度たりとも気づいていなかったのだ。 自分たちがこの部で交わしてきた会話、 「どうしてさっさとなないんだ」という暴言、 命維持装置のコードにをかけたあの瞬、 遺産をどうやって使い込むかの卑しい相談――。
そのすべてが、音音声も映像も完璧に記録されている。
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