"マカオに消えた花嫁" 第11話
「子さんは、客乗務員として世界をび回るのがだったと、よく伺っていました。そのを、何かの形で残してあげられないだろうか、と……」
その言葉に、佳子はハッとして顔をげた。 憎しみとしみに暮れる々ので、娘がきていた頃に抱いていた輝かしいを、ゆっくりといすことさえ忘れていた。 世界図を広げては、まだ見ぬ国にいを馳せていた娘の横顔が、鮮やかに蘇る。 「……子の名で、彼女と同じように世界に羽ばたきたいと願う若いたちを応援できたら……」
佳子のからこぼれたその言葉は、両のを1つにするには分すぎた。 それは、過の劇をただ悼むのではなく、未来への希望へと転換させるための、唯の筋のようにえた。
続きは、両が協力してめられた。 田が資の部分を拠し、田がその運営を担う。 そして、本の最学府である京学に、国際な野を持つ材、特に航空・観分野を志す学を対象とした、返済の付型奨学「田子メモリアル奨学」が設されることとなった。
第1回の授与式は、赤でられる本郷キャンパスので、厳かにわれた。 スーツにを包んだ佳子と健は、緊張した面持ちで最列の席に座っていた。 第1期奨学に選ばれたのは、国際関係論を専攻する女子学だった。
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彼女はし震える声で、壇からスピーチを始めた。 「私は、田子さんのことを、この奨学を通じて初めてりました。彼女がどんなに空を、世界をしていたか、資料を読んでりました。そのはしい事件によって途絶えてしまったけれど、そのいは、こうして私たちに確かに受け継がれています」
その力い言葉が、佳子のにく、く突き刺さった。 娘のは決して無駄ではなかった。彼女のは、ここで終わりではなかった。 見ずらずの、しかし希望に満ちたこの若者の翼となって、もう度空へと羽ばたこうとしているのだ。 佳子の目から、静かに涙が溢れた。隣に座る健がそっと差ししたハンカチを、彼女はく握りしめた。ハンカチには、まだアイロンのしい匂いが残っていた。
この式の様子は、数の聞のさな社会面の記事になった。 マカオに送られてきたその聞の切り抜きを、浩司は何度も、何度も読み返した。 そこには、し緊張した面持ちで並ぶ両の親と、希望に満ちた表で奨学の証を抱く学の姿があった。
浩司の頬を、静かに涙が伝った。 自分が奪ったはずの未来が、形を変えて今ここから始まろうとしている。 その現実に、彼は罪のさを改めてじると同に、これまでじたことのないほどのい救いをじていた。
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子のという、決して消えることのない劇。しみのからまれたさなは、今や国境を越え、世代を超え、未来を照らす確かな灯となっていた。 贖罪のは、を超えて未来への投資へと昇華した。それは、国の子からの、究極の許しのようにもじられた。
毎4がづくと、マカオのの空気は静かにくなった。 それは劉梅だけがじる、夫のの変化だった。 カウンセリングの仕事に打ち込み、養女として迎えたばかりの女と向きう常のにあっても、浩司の魂の部は、決して消えることのない業でくすぶり続けている。 若葉の季節が本に訪れる頃、そのくすぶりは、疼くような痛みに変わるのだ。
「今もってくる」 スーツケースに最限の着替えを詰めながら、浩司は妻に告げる。その背は、贖罪に向かう巡礼者のように、どこか張り詰めて見えた。 劉梅は何も言わず、ただ頷いて、空港へ向かう彼の背を見送る。これが、自分たちの夫婦の形だった。 彼の過も、彼の涯続く贖罪も、そのすべてを受け入れると決めたから、彼女はこの毎訪れる静かな儀式を見守る役目を引き受けていた。
京へ向かうの、彼はいつも窓のを眺めていた。 のを滑るようにむ鉄の塊。そのでキビキビと働く客乗務員の姿を見るたびに、彼の胸は締めつけられる。
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