"最後の夜の写真" 第7話
「るものは追わず、でもね、さん。いは所に残るのよ」
彼女の指先が、図の点、鶴岡幡宮のい緑をトン、と軽く叩いた。
「7、女の子の子がここの森で見つかっているの。偶然だとう? あなた、あの夜、このくにいなかった?」
その言葉が、見えない楔となっての分い仮面に打ち込まれた。彼の瞳がほんのわずかに揺れる。奥底で固く閉ざされていた記憶の扉が、軋みをてていたのが弓には見えた。
何も続いた沈黙が、ついに破られる。の乾いた唇がゆっくりといた。 「あの、俺は追われていたんだ……」
ぽつり、ぽつりと、まるでい過の残響を辿るかのように、彼の告が始まった。
2013616、午0過ぎ。川崎で経営していた違法賭博の負債が膨らみ、はヤクザの債権者から逃げ回っていた。勘のない鎌倉の暗いを、息を切らしてる。背からは、自分を追い詰める男たちの号が聞こえてくる。殺される、本気でそうった。
その、1台のがゆっくりと角を曲がって彼のに現れた。いカローラ。神の助けかのように見えたそののに、彼は転がり込むようにしてびした。キィィッ、と急ブレーキの甲い音とともにが止まる。
運転席から、の良さそうな若者、浩司が顔をした。「丈夫ですか!?」
広告
と配そうな声。部座席からも、げな女の子たちの顔が覗いている。
「頼む、助けてくれ! 命を狙われているんだ!」
は面に膝をつき、必に嘘を並べてた。しれた全な所まで乗せてってほしい、と。浩司は瞬躊躇した。助席の健が、訝しげな目でを見ている。しかし、血相を変えて懇願する男の姿に、浩司のの良さが勝ってしまった。
「わかりました、乗りましょう」
その言が、4の運命を奈落へと突き落とした。
はの指示通り、川崎方面へと向かった。目指すのは、彼がアジトとして使っていた古い廃倉庫だった。そこには、彼の賭博仲が3、の面をするために待していた。
倉庫に着き、錆びた鉄の扉がギィィ、とい音をててく。に招き入れられた瞬、4は異様な雰囲気を察した。湿まったカビと鉄錆の匂いがをつく。暗い球のに、いかにも柄の悪い3の男がっていたのだ。
「話が違うじゃないか!」
最初に声をげたのは、健だった。彼は危険を即座に察し、子と絵美を庇うように歩にた。そして浩司の腕を掴み、叫んだ。 「逃げるぞ!」
その言葉が引きだった。健が男の1に掴みかかろうとした瞬、別の男が彼の背をいきり突きばした。健の体は宙に浮き、すぐそばにあったコンクリート製の階段を、数回鈍い音をてて転げ落ちていった。
広告
ゴン、という最の音の、彼はピクリともかなくなった。
「いやぁぁぁっ!」
女の子たちの鳴が、広い倉庫に響き渡る。事態はの像を遥かに超えていた。ただの質にするつもりだった。だが、傷を負った若者をに、仲たちは完全にパニックに陥った。もう、戻りはできない。
恐怖に顔を歪める3を、と共犯者たちは倉庫の奥のに監禁した。そして事件から4の620、ことが見するのを恐れた彼らは、取り返しのつかない決断をす。抵抗する力も残っていなかった3を殺害し、そして健を含む4のき骸を、倉庫のに掘った穴に埋めた。
告を終えたは、まるで魂が抜け殻になったように項垂れていた。弓は、ただ静かにそのすべてを聞いていた。彼女の胸を満たしたのは、犯逮捕への揚などではなかった。それは、若者たちの砕かれた親切に対する、どこまでもたく、そしていりだった。
の自から数、夜の帳がりた川崎の業帯に、無数の赤灯が静かに回転していた。
目は、周囲のに溶け込むように佇む巨な廃倉庫。7固く閉ざされていたその錆びた鉄の扉が、捜査員たちのによって、い軋みをてながらかれた。へを踏み入れた瞬、誰もがわず息を止めた。
空気がまるで鉛のようにく、湿まったカビの匂いと埃、あるいはかすかな鉄錆の匂いが混じりい、の奥をツンと刺した。
広告
おすすめ作品
-
完結第6話
十三年目の灯火
2002年、冷たい雨の降る神戸の夜。 港交通のベテラン運転手・田村茂は、1人の乗客を乗せたまま、町から忽然と姿を消した。最後に会社へ入った無線は、「西区の方へ、長距離になりそうです」という短い言葉だけ。 車も、運転手も、乗客も見つからないまま、事件は迷宮入りした。 家族を捨てたのではないか。金を持って逃げたのではないか。心ない噂に苦しめられながらも、妻は13年間、玄関の灯火を消さずに夫の帰りを待ち続けた。 そして2015年春。 神戸の町外れにある廃車場の取り壊し中、何台もの車の下から、潰れた古いタクシーが発見される。車体に残っていたのは、すでに消えた会社「港交通」の文字。 中から見つかったのは、2人分の白骨だった。 あの夜、田村のタクシーに何が起きたのか。後部座席にいたもう1人は誰だったのか。そして、13年前に目撃された“ライトを消した黒い車”の正体とは――。 雨の夜に消えた1台のタクシーが、長い沈黙の底から真実を語り始める。ミステリー|真実9.5千字5 3 -
完結第18話
柿の木の下の守護
2007年、エリート検事・佐藤健太の妻、美咲が自宅マンションから忽然と姿を消した。 財布も靴もパスポートも残されたまま。台所には、夫の帰りを待つように冷えた味噌汁だけが残っていた。夫は涙ながらに妻の捜索を訴え、世間は“妻を失った悲運の検事”に同情した。 しかし17年後、実家を売るために庭の柿の木を抜いた時、土の中から白骨化した遺体が発見される。 右手に握られていたのは、かつて美咲が夫に贈った銀色のネクタイピン。 そこに刻まれていた文字は「守護」。 夫を守るために贈ったはずの小さな証拠が、17年間隠されていた真実を暴き始める。美咲はなぜ実家の庭に眠っていたのか。そして、母が信じ続けた義理の息子は、本当に悲しみに耐える夫だったのか――。ミステリー|真実2.8萬字5 10 -
完結第14話
三輪山に消えた家族
1992年、奈良県桜井市で、一家4人が忽然と姿を消した。 食卓には湯呑みが残され、台所には切りかけのネギ。争った跡もなく、外部から侵入した形跡もない。村人たちは、その不可解な失踪を「三輪山の神隠し」と呼び、やがて誰も真相を語らなくなった。 それから25年後。 解体前の古い家を訪れた遠縁の裕二は、物置の奥から1つの桐箱を見つける。中に入っていたのは、色褪せた家族写真と、母・千代子が残した謎めいた手紙だった。 「巳の日に、あの場所へ」 「柿の葉に、真実を包む」 意味不明な言葉、写真の端に映り込んだ黒い影、口を閉ざす村人たち。 神隠しと呼ばれた一家失踪の裏には、誰にも語れなかった母の覚悟と、25年間守られ続けた秘密が隠されていた――。ミステリー|行方不明2.1萬字5 25 -
完結第13話
マカオに消えた花嫁
2010年4月、マカオへ新婚旅行に訪れた日本人夫婦・田中浩司と山田愛子は、ホテルに荷物を残したまま忽然と姿を消した。 最後に確認されたのは、観光地の監視カメラに映った2人の姿。部屋に争った形跡はなく、財布も荷物もそのまま。誘拐か、事故か、それとも自ら消えたのか――事件は真相不明のまま、12年という歳月に埋もれていった。 しかし2022年、1人の女子大生がSNSで見つけた写真が、凍りついた時間を動かす。 マカオの街で中国人女性と寄り添う中年男性。その顔は、12年前に失踪したはずの夫・田中浩司に酷似していた。 では、彼と一緒に消えた妻・愛子はどこへ行ったのか。 幸せな新婚旅行の裏で、あの夜、本当は何が起きていたのか。 SNSに映った“夫の顔”が、12年間隠されてきた衝撃の真実を暴き出す。ミステリー|真実|行方不明2.0萬字5 52 -
完結第11話
壁の中の美大生
1990年、河口湖で22歳の美大生・佐藤美紀が忽然と姿を消した。 最後に目撃されたのは、アルバイト先の湖畔カフェを出た夜。恋人との口論、急に増えた高価な持ち物、そして誰にも明かさなかった謎の大金――。彼女の失踪には、当時からいくつもの不自然な点が残されていた。 しかし遺体も証拠も見つからないまま、事件は12年間、未解決のまま時を止める。 そして2002年。 解体中の古いカフェの壁の中から、ミイラ化した女性の遺体が発見された。首元に残されていたのは、美紀がいつも身につけていた銀の指輪。 彼女はなぜ壁の中に隠されたのか。 河口湖駅の古いロッカー、偽名口座、消えた親友、そして最後に描かれた一枚の絵。 12年封じ込められていた真実が、静かに暴かれていく――。ミステリー|真相1.6萬字5 81 -
完結第9話
赤いリボンの手紙
1994年3月、横浜で10歳の咲と8歳の愛、2人の姉妹が忽然と姿を消した。 学校へ向かう朝、母・みさ子が結んでやった赤いリボン。それが、娘たちを見た最後の記憶になった。数日後、見つかったのは燃えた鞄と、焼け残った赤いリボンだけ。警察の捜査はやがて縮小され、世間も事件を忘れていった。 けれど、母だけは諦めなかった。 23年後、白髪になったみさ子の家の前に、差出人不明の黄色い封筒が置かれていた。中に入っていたのは、次女・愛の字で書かれた一通の手紙。 「ごめんなさい、お母さん」 止まっていた時間が動き出した時、古い孤児院、破られたノート、夫が隠した過去、そして死んだはずの息子の手紙が次々とつながっていく。 娘たちは本当に死んだのか。 なぜ、事件は封じられたのか。 23年間沈黙していた家族の真実が、赤いリボンとともに静かにほどけ始める――。ミステリー|真実1.3萬字5 116 -
完結第13話
24年目の手紙
1978年、神戸の坂の町で、12歳の少年・健二が自宅前から忽然と姿を消した。 母・よし子が最後に見たのは、新しく買ってあげた真っ白なスニーカーを履き、嬉しそうに坂道を駆け下りていく息子の後ろ姿だった。 学校にも行かず、家にも戻らなかった健二。近所の証言では、彼は知らない男と笑いながらバスに乗っていたという。警察は「家出」と見なしたが、よし子だけは信じなかった。 息子は必ず帰ってくる。 そう信じて、よし子は24年間、古い家を離れず、毎年6月になると玄関に新しい白いスニーカーを置き続けた。 そして2002年の夏、アメリカから一通の書留が届く。 差出人の名前は――高橋健二。 そこに記されていたのは、24年前のあの日、少年を連れ去った人物の名前と、母が知らなかった残酷な真実だった。ミステリー|真実2.0萬字5 75 -
完結第7話
スイカ畑の12年
1989年夏、長野県のスイカ農村で、佐藤一家5人が収穫期の畑を残したまま忽然と姿を消した。 台所には傷みかけたご飯が残り、子ども用の靴も玄関に揃えられたまま。旅行でも夜逃げでもないように見えたが、家族の行方を示す手がかりはどこにもなかった。 村では、借金、不倫、夜逃げ――さまざまな噂が飛び交う。やがて疑いの目は、佐藤茂夫の古い親友・山本武志へ向けられるが、彼には確かなアリバイがあった。 ただ1人、佐藤ゆき子の弟・伊藤和夫だけは諦めなかった。彼は農園を歩き回り、小さなビニールハウスの床に残る“不自然な柔らかさ”に気づく。 しかし、当時の捜査では何も見つからなかった。 それから12年後。農園の新しい持ち主が古いビニールハウスを解体した時、床下から大人と子どもの骨が次々と発見される。 佐藤一家は、どこにも逃げていなかった。 12年前、あの柔らかい土の下で何が隠され、誰が真実を動かしていたのか。 親友の仮面の裏に潜んでいた素顔が、長い沈黙の果てに暴かれていく。ミステリー|真実1.0萬字5 110 -
完結第23話
40.4℃の真実
40.4℃の高熱で救急搬送された、二十歳の女子大学生。 医師は最初、ただの重い感染症だと思っていた。 しかし、診察のために服を少しめくった、その瞬間――診察室の空気は凍りつく。 彼女の身体には、病気では説明できない痕跡が残されていた。 なぜ誰も気づけなかったのか。 彼女は誰にも助けを求められなかったのか。 そして、彼女が涙を流しながら口にした「脅迫されました」という一言が、事件を思いもよらない方向へ動かしていく。 真実を追う刑事。 娘を守ろうとする両親。 そして、権力と金を持つ一人の男。 ページをめくるたびに新たな疑惑が生まれ、最後まで真相が読めない医療サスペンスです。 あなたなら、この事件の真犯人が誰だと思いますか?人生逆転|真実|裡の顔|真相3.5萬字5 166