"最後の夜の写真" 第11話
緑の芝、レンガ造りの舎、周りには髪の学たちが楽しそうに談笑している。浩司はしびた顔つきで正雄の方を振り返ると、あの懐っこい笑顔で言いた。
「こっちのハンバーガー、本当にでかいんだよ。父さんに見せてやりたかったな」
これは、彼が冗談めかして言っていた言葉だった。正雄はだとは分かっていながら、必に息子に話しかけようとする。しかし、声がない。 (ごめんな。守ってやれなくて……)
そうので叫んだ、浩司はまるでその声が聞こえたかのように、穏やかに首を振った。
「父さんのせいじゃないよ。俺、こっちでちゃんとやってるから。だから、もう自分を責めないで」
こう言うと、彼はを振り、仲たちが待つ輪のへと駆けていった。その背が、次第にのに溶けていく。
ハッと目を覚ますと、窓のはまだ暗かった。頬にたいものが伝う覚があった。涙だった。事件以来、では決して涙を見せまいと頑なに拒んできた彼が、声を殺して子供のように泣いていた。息子の温かい言葉が、彼を縛りつけてきた「悔」というい縄を、静かに解き放ってくれたかのようだった。
あの夜、息子をく送りしてしまった自分。もっとく引き止めていれば、という「もしも」の悔のトゲが、ずっと胸の奥に突き刺さっていた。
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のの息子の言葉は、「許し」だった。それは犯への許しというより、むしろ正雄が彼自を許すための、息子からの最の贈り物だったのかもしれない。
翌朝、正雄は仏壇のに座り、静かにをわせた。そこに置かれた浩司の写真の笑顔が、いつもよりし優しく見えた。彼は昨届いたを、引きしの奥にそっとしまった。返事をくつもりはまだない。しかし、破り捨てることもしなかった。
憎しみは消えない。だが、それだけを抱えてきていくには、残りのはあまりにもすぎた。空は静かに、み始めていた。
事件から10という歳が流れた。あれほどくえぐられた社会の傷跡も、々の常のにしずつ融し、たな記憶の層のに埋もれていった。4の族たちもまた、それぞれのの流れので、しみを抱えながらも静かにを向いて歩み始めていた。
あるの週末、4つの族はまるで示しわせたかのように、再び鎌倉のを訪れていた。浩司の父、正雄の提案だった。 「あの子たちが最に見た景を、私たちも見ておきたい」 その言葉に、誰も反対するものはいなかった。
彼らが向かったのは、かつて4が最の夜を過ごした、あの辺の旅館だった。建物は10という歳の分だけし古びていたが、潮に吹かれながら、変わらずそこに佇んでいた。
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旅館の主である健の叔父が、皆を黙って迎え入れる。
4つの族は言葉なに荷物を解くと、誘われるようにして砂浜へと歩みた。
ザザン、ザザン。寄せては返す波の音は、10と何も変わらない。空との境界が曖昧になる夕暮れ、太陽が平線の向こうへとゆっくりと沈んでいく。空全体が、燃えるようなオレンジから優しいへとその表を変えていく、見事なグラデーション。
砂浜に並んでち、その美しい景を、誰もがただただ黙って見つめていた。その沈黙は、しいだけのものではなかった。いをかけてようやくに入れた、穏やかながそこには流れていた。
ふと、子の母が空を指差した。 「あら……見て」
見げると、4羽の鳥がまるで互いに戯れるかのように、夕焼け空に円を描いてっていた。その姿は、空を自由に駆け回るあの4の若者たちの魂、そのものにも見えた。鳥たちはやがてさな黒い点となって、平線ののへと消えていった。
が完全に落ち、番が空に瞬き始める頃、正雄が々しくをいた。
「あいつ、アメリカででっかいハンバーガーをべるんだって、ずっと言ってましてね……」
その言葉を皮切りに、ぽつり、ぽつりと、みんなが子供たちのいを語り始めた。
健が代にサッカー部で活躍した話。
絵美が文化祭でみんなの装を作ってくれた話。子がテストになるといつもみんなにノートを貸してくれた話。
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