"洞窟に残った少年の声" 第4話
けれど、答えることができなかった。
施設をる、実は鉄格子の向こうからを振っていた。はそのに座り込み、声を失った。
医師は、極度の精神ショックによる選択性緘黙だと診断した。
しかし自はっていた。
これは病気ではない。
息子を守れなかった母親として、自分にした罰なのだと。
その、は阪へ移り、清掃員として働き始めた。毎晩、実にをいた。ごめんなさい。会いたい。健康に育ってほしい。そんな言葉を何度もいた。
だが、度も投函できなかった。
自分には、母親を名乗る資格がないとっていたからだった。
2009916、は仕事を終えて部に戻り、いつものようにさなテレビをつけた。
ニュースから、聞き慣れた名が流れた。
「1987に失踪した子役・田実さんの所持品と見られるバッグが、22ぶりに発見されました」
のからリモコンが滑り落ちた。
画面には、古いバッグと、幼いの写真が映っていた。
違いなかった。
自分の息子だった。
ニュースはさらに続いた。
田実は女優の佐藤恵に引き取られ、子役として活していたという。
佐藤恵。
その名を聞いた瞬、はさらにきな衝撃を受けた。
1983、が精神病院に入院していた、同じ病だった女性の名だった。佐藤は当、スキャンダルと薬物治療で入院しており、子どもを持てないことを何度も嘆いていた。
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「私も誰かのお母さんになりたい。本当にを持って育てられる自信があるんです」
佐藤がそう言ったのことを、ははっきり覚えていた。
その頃、は実を施設に預けたばかりで、罪悪に押し潰されていた。佐藤はの話を聞き、実にい関を示した。
「もしよかったら、その子を私に養子にす気はない?」
は断った。
それなのに、実はに佐藤恵のもとへ渡っていた。
は震えるで報を調べた。実の養子縁組に関する公式記録はほとんど残っていなかった。期は198611。が精神病院を退院してから6かだった。
偶然にしては、あまりにも来すぎていた。
翌、は27ぶりに阪をれた。
京へ向かう幹線の座席で、彼女はさな帳を握りしめていた。声はせない。けれど、文字ならける。
目は、事件を追っている記者、川子のいる週刊誌の事務所だった。
子に会ったは、震えるで帳にいた。
「田実は、私の息子です」
最初、子は信じられなかった。
だがが見せた古い写真を見て、言葉を失った。幼い実がの腕に抱かれ、無邪気に笑っていた。
は、実を施設に預けたこと、佐藤恵との病院での会い、そして27をき続けてきたことを、ひとつひとつ文字で伝えた。
子が佐藤恵の写真を見せると、はそので倒れた。
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識を失う直、の唇からかすかな声が漏れた。
「実……」
27ぶりにた、最初の言葉だった。
林との会いの、川子は眠ることができなかった。
の証言は、これまで集めてきた報のすべてを別の形に並べ替えていた。
実の養子縁組。
佐藤恵との奇妙な因縁。
ドラマ『』への突然の演。
そして、渡辺浩司の。
翌朝、子は1986から1987にかけてのドラマ制作資料を調べ直した。
『』はもともと別の制作会社で企画されていた。ところが撮始の1かにスポンサーが突然変更され、本文化振興財団が支援に入っていた。当の理事は渡辺浩司だった。
さらに、実のキャスティングにも自然な点があった。
本来、その役は別の子役に決まっていた。だが撮始の2週、スポンサー側のい向で田実に変更されていた。
子は当のスタッフを1ずつ追い始めた。
くは連絡が取れなかった。くなっている者、業界をれた者、へ移った者。まるで事件の、関係者が散らされるように消えていた。
ただ1、当スクリプターだった吉田美咲だけが、今も放送業界に残っていた。
子は彼女を訪ねた。
50代になった吉田美咲は、子の名刺を見るなり表をくした。
「22ものことを、どうして今さら掘り返すんですか」
「真実がりたいんです。
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