"父の残した翼" 第20話
連されていく直、彼は初めて私の元に線を落とした。そしてほとんど聞き取れないようなか細い声で呟いた。 「すまなかった」
その謝罪がからのものだったのか、それともただの保からた言葉だったのか、私には分からなかった。 しかしどちらでもいいことだった。彼というは私のから完全に消えるのだ。
私は何も答えず、ただたく彼を見ろしていた。 彼がから連れされ、パトカーのサイレンがざかっていくと、リビングに張り詰めていた緊張の糸が切れたかのように、い静寂が訪れた。
その静寂を破ったのは母の佐藤け子の泣き声だった。 「うわあん……」 母は子供のように声をげて泣きじゃくった。それはこの、彼女がの奥底に押し殺してきた恐怖としみ、そして堵が入り混じった魂の叫びだった。
私は黙って母の隣に座り込み、そのさな背が落ち着くまでずっとさすり続けた。本先とその部の男性は、そんな私たちの姿を静かに、温かい目で見守ってくれていた。
どれくらいのが経っただろうか。ようやく泣きやんだ母が、涙で濡れた顔をげて私と本先に何度も何度もをげた。 「ゆみ、ごめんなさい。本先、本当にありがとうございました。私がもっとしっかりしていれば、あんな男にこの子を苦しめずに済んだのに……」
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その自責のに駆られた母の姿に、私の胸は締めつけられた。 「お母さんのせいじゃないよ」私は母の震えるを両で包み込んだ。「お母さんは私を守るために、でずっと戦ってくれていたんだもの。私こそごめんなさい。もっとくお母さんの苦しみに気づいてあげられなくて」
私たち親子は互いのを握りしめ、ただ静かに涙を流した。それは悪のような々からの、本当の解放の涙だった。
本先は全ての法続きが完するまで、誠誠私たちを支えてくれた。 直さんとあよりという女が率いていたグループは、私たちが提した証拠が決めとなり、詐欺と組織犯罪処罰法違反の容疑で全員逮捕された。彼らには厳しい法の裁きがされることになるだろう。
母の座から盗んだ 300 万円とご祝儀の 50 万円は、彼の唯の財産だった普通預と両親が残したわずかな田畑を売却することで全額返済された。 2000 万円の慰謝料については彼に支払い能力がないため、事実受け取ることはできなかった。 しかしそんなは、もはや私たちにとっては何のも持たなかった。彼が社会に抹殺され、度と私たちのに現れることがない、それだけで分だった。
全てが片付いた数週、私は本先に連れられて、父が残してくれたという貸庫のにっていた。
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な鉄の扉を父の鍵でける。からてきたのはつのアルミケースだった。本先に促され、私がそのケースをけた瞬、私は言葉を失った。には札束がぎっしりと隙なく詰め込まれていた。
そしてその番に、またしても父の跡でかれた枚のいが添えられていた。
『ゆみへ 驚いたか?これがお父さんがおに残す本当の遺産だ。 そのものがおを幸せにするわけじゃない。だがは、おが自分のを自分で選ぶための自由を与えてくれる。
こので母さんの介護にもっと良い環境をえてやれ。お自も、これまでしてきたこと、何でもやってみるといい。世界を旅するのもいいだろう。しいことを学ぶのもいい。
そしていつかから信頼できるパートナーが見つかった、そののためにこのを使ってもいい。 だが覚えておけ。このはおが誰かに媚びるためのものではない。おがお自の力で堂々ときていくための翼だ。自由に羽ばたいていけ。
する娘へ 父より』
涙がとめどなく溢れてきた。父は本当にすごいだった。ただを残すだけでなく、そのの本当のと使い方まで私に教えてくれようとしていたのだ。 こので流したどの涙とも違う、温かくてしょっぱい涙だった。
これは父のきなに包まれた、幸せな涙だった。
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