"中卒の兄、結婚式で覚醒す" 第14話
どうして、どうして言ってくれなかったんだよ。
俺はずっと兄ちゃんに苦労ばかりかけているって自分を責めて。
優馬の目から再び粒の涙がこぼれ落ちた。
敬はそっとを伸ばし、弟の肩を優しく叩いた。
俺が会社の社だとったらおはどうう?
「兄ので医学部にけた」と周囲から変な目で見られるかもしれない。
おの実力や努力が、俺の肩きのせいで正当に評価されなくなるかもしれない。俺はそれが嫌だったんだ。
敬はおしげに弟の純のタキシードを見つめた。
おはお自の力で医者になったんだ。
俺はただ、ちょっと苦労した兄貴として、おが誰からもろ指を刺されず胸を張ってきる姿が見たかった。
おが誇れる医者になってくれた、俺にとってはそれだけで分だったんだよ。
そのい兄弟の告に、会のあちこちからすすり泣くような声が漏れ始めた。
もまた両で元を覆いながら声にならない涙を流していた。
夫がこれほどまでに偉でいを持った兄に守られていたこと。
そしてその兄を、自分の父親が公衆の面で徹底に踏み躙ったことへの申し訳なさで胸が張り裂けそうだった。
ふざけるな。
な空気を切り裂くように、義父のみ節のような声が響いた。
広告
義父はりと恐怖で膝を震わせながら、それでも必に威張ろうとしていた。
おが会社の社だから何だと言うんだ。ただの荷物運びの元締めだろうが。私は歴史ある病院の院だぞ。
学歴もない成りがりが私に偉そうに説教をする気か。
義父のその言葉に、敬は再び表を引き締め鋭い線を義父へと向けた。
に散らばったグラスの破片が敬の革靴のでカタカタとたい音をてた。
義父様、あなたは何も分かっていないようだ。
敬の声は氷のようにたく、そしてかった。
ただ荷物運びをしているとおっしゃいましたね。
ではあなた方の病院で使われている医療器はどうやって運ばれているかごですか?
術用の特殊なメス、から輸入される最の抗がん剤、MRI などの精密器。
それらを毎全に通りに病院へ届けているのは誰ですか?
な、義父の顔がはっと青ざめた。
先、あなたの経営する総病院はがクラウンロジスティクスの医療事業部と、物資の全面な専属輸送契約を結んだはずです。
院であるあなたが最終決裁のサインをしたのではないですか?
その言葉に、先ほどスマホを確認していた病院の幹部医師が鳴のような声をげた。
院、そうです。
先の規模な契約で、クラウンに全ての医療物資の物流を委託する契約を結んだばかりです。
広告
もし今クラウンに取引を止されたら、うちの病院はガーゼ枚、注射本すらに入らなくなります。
義父の顔からついに全ての血の気が失せた。
目は極限まで見き、はだらしなくき、喉の奥でヒュッと引きつったような音をてている。
敬はそんな義父を徹に見ろしながら静かに最通告を突きつけた。
私が話本かければ、の朝からあなたの病院の物流は全てストップします。
命を救うための具が切届かなくなる。
あなたが底辺と蔑んだが、今あなたの病院、そしてあなたの絶対な権力の命綱を握っているんですよ。
会はに耐えたかのような完全な沈黙に包まれた。
絶対な優位にっていたはずの傲な病院が、瞬にして自分が見していた卒の男の元にひれ伏すしかない状況へ、完全にが逆転した瞬だった。
静寂に包まれた披宴会に、義父の喉から漏れたけない鳴が響いた。
先ほどまでふんぞり返り傲な態度で敬を見していた男の威張った姿はもはやどこにもなかった。
義父の顔は気のように青ざめ、額からは滝のような油汗が流れ落ちている。
ひどく震える膝が自分自を支えきれなくなったのか。
義父は力なくそのにへたり込み、くの子にすがりついた。
ま、待ってくれ。いくら何でも物流を止めるなど、そんな無茶な権力の使い方は……
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
父の残した翼
結婚 1 週間後、夫は毎晩汗だくで私の母の部屋から出てくる。 あまりに不自然な様子に不安を抱いた私は、部屋に隠しカメラを仕掛けた。 録画映像を再生した瞬間、私は衝撃でその場に膝から崩れ落ちた…… 夫の優しい仮面の裏に隠された、金欲と脅迫の悪夢が、全て記録されていた。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係3.2萬字5 32 -
完結第6話
他人と言われた娘
5歳の娘・マリが、義実家のクリスマスパーティーで泣きながら尋ねた。 「おばあちゃん、マリのは?」 長男嫁の子どもたちにはプレゼントを渡した姑。けれどマリにだけは、冷たい言葉を浴びせた。 「低学歴の嫁から生まれた子なんて、うちの孫じゃない」 施設で育ち、大学には行けなかった美優。結婚当初から姑に見下され続けても、夫の母だからと我慢してきた。しかも美優は、姑が知らないところで、何年も仕送りを続けていた。 しかし、娘まで“他人”扱いされた瞬間、美優の中で何かが切れる。 「分かりました。今後は他人として接します」 翌月、姑は初めて知ることになる。 自分の生活を支えていた仕送りが、誰から届いていたのかを。 そして、他人だと笑った相手に頼っていた姑の暮らしは、静かに崩れ始める――。嫁姑|親子関係9.2千字5 1 -
完結第22話
銀の指輪の応募者
赤ん坊をおんぶして、大和建設の面接会場へ現れた貧しい青年・田中優斗。 妻は病に倒れ、治療費も払えず、息子のミルク代にも困る中、彼が徹夜で描いた設計図だけが、家族を救う最後の希望だった。だが高級スーツの応募者たちが並ぶ会場で、赤ん坊連れの彼は冷笑され、人事部長から追い出されそうになる。 その時、床に散らばった設計図を見た女性会長・北川文子の表情が変わった。 図面に描かれていたのは、25年前に亡くなった夫と語り合ったはずの「風の道」。そして青年の顔には、事故で失った夫の面影があった。 さらに文子は、優斗の左手に古びた銀色の指輪を見つける。 それは、25年前の事故現場から消えた、世界に2つしかない夫婦の指輪だった。 貧しい応募者は、本当にただの青年なのか。 なぜ彼は、その指輪を持っていたのか。 25年前に死んだはずの息子をめぐり、財閥一族に隠された真実が動き出す――。人生逆転|第二の人生3.4萬字5 0 -
完結第10話
母が家を消した日
75歳の高橋幸は、お盆の夜、廊下の向こうから聞こえてきた家族の会話に足を止めた。 「おばあちゃんが施設に行ったら、この家、私たちのものになるの?」 息子夫婦は、幸を介護施設へ入れ、そのマンションを売って自分たちのローンや教育費に充てる計画を立てていた。しかも、その話は一時の思いつきではなく、すでに何か月も前から進められていたものだった。 翌朝、息子と嫁は何事もなかったように優しい顔で接してくる。病院での認知症検査、施設リスト、マンション売却後の資金計画――幸は静かに証拠を集めながら、最後の決断を胸に秘める。 そして、息子一家が海外旅行へ出かけた日。 幸は長年暮らしたマンションを売り、誰にも告げず東京を離れた。 旅行から戻った家族を待っていたのは、もう開かないオートロックと、母が残した一通の手紙だった――。因果応報|絶縁|親子関係1.4萬字5 0 -
完結第7話
何もしない姑の居場所
68歳の絹江は、息子夫婦の家に5年間住み続けていた。 料理も掃除も洗濯もせず、昼はテレビを見ながらお菓子を食べ、嫁のリナが作り置きした食事を当然のように食べ尽くす毎日。リナは仕事と家事に追われ、限界を感じながらも、姑だからと黙って耐えていた。 そんなある日、仕事を辞めた娘・夏帆が家に戻ってくる。 何もしない姑と、社会に疲れて動けなくなった娘。家の中に増えた“何もしない人たち”に、リナの心はついに折れかける。 しかし深夜のリビングで、絹江と夏帆が交わしていた本音を聞いた時、リナは初めて知る。 姑は本当に怠けていただけなのか。 娘は本当に甘えていただけなのか。 壊れかけた家族が、不器用に変わろうとする物語。嫁姑|親子関係1.1萬字5 0 -
完結第23話
鬼母の末路
3年ぶりにドイツから帰国した俺を待っていたのは、温かい食卓ではなかった。 真っ暗な部屋。止まった電気。震える妻。 そして、7歳の娘が笑って差し出したのは、お湯をかけただけの白米だった。 毎月50万円。 家族のために送り続けた金は、どこへ消えたのか。 その夜、俺は知ることになる。 家族を地獄に落としていたのは、他人ではなく――俺の実の母だった。怒り|祖父母と孫|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係3.4萬字5 169