"中卒の兄、結婚式で覚醒す" 第24話
会のあちこちで列席者たちがスマートフォンをにさな声で囁きっている。
「ニュース速報がた。成功総病院にマルサが入り、院を含めた複数が逮捕されたらしい」
「の裏作と脱税だ。あの院、自分の病院を私物化して随分と私腹を肥やしていたんだがな」
「学歴や柄を盾に私たちを見していたくせに、結局はただの犯罪者だったとは本当に恥ずかしい男だ」
彼らの声にはもはや義父に対する恐れも媚びも切なかった。あるのは軽蔑と呆れだけだった。
絶対な権力を持っていたはずの流階級の象徴は、たったらずで社会位も名誉も、そして族からの信頼も全て失い、の底へと転落したのだ。
自分の権力を盾に、学歴のない者を底辺と呼び、嘲笑い踏みにじった男の、あまりにも惨めで自業自得な末だった。
その方で、会の線をに集めている男がいた。敬、K 社である。
垣を割って敬のに歩みてきたのは、義父の病院で副院を務めている髪の初老の男性だった。
彼は先ほどの取り巻きの教授たちとは違い、義父の暴に対してずっと目を伏せ、苦しい顔をしていた物だ。
副院は敬のでち止まるとくをげた。
「この度は当院のトップである院があなた様、そして優馬先に対し、決して許されない数々の暴言を吐き、なるご迷惑をおかけしましたこと。
広告
病院を代表してよりお詫び申しげます」
副院は顔をげ、言葉を続けた。
「お恥ずかしい話ですが、々のにも院の権力に怯え、彼の横暴を見て見ぬふりをしてきた者が数おります。彼が逮捕された今、病院はかつてない危に瀕しています。ですが」
副院は真摯な面持ちで敬を見つめた。
「社が先ほどおっしゃってくださった、患者の命に関わる物流は止めないというお言葉に々はどれほど救われたか。社のよりいお遣いに、医療従事者としてただただががるいです。本当にありがとうございます」
副院が再びくをげると、そのろに控えていた数名の医師たちも斉にくをげた。
それは保のための謝罪ではなく、本物のさと優しさを持つ敬に対する、からの敬の現れだった。
「をげてください、副院先」
K は穏やかな声で答えた。
「先ほども申しげた通り、私は当然の仕事をするだけです。罪のない患者さんたちを救うため、からもが社のトラックは確実に物資をお届けします。どうか皆様も患者さんのために、これまで以に尽力してあげてください」
「はい。必ずや内部の腐敗を掃し、クリーンで誠実な病院へとて直すことをお約束いたします」
副院の力い宣言に、周囲の列席者たちから堵のため息が漏れた。
広告
卒だと見され、物のスーツを着ていると嘲笑われた男が、ただの言で崩壊しかけた病院の危を救い、エリート医師たちのをつにまとめたのだ。
その圧倒な器のきさと、切ぶれない信。誰もが目のにつ敬という男のとしての本質の違いに魅され、打ち震えていた。
副院は今度は郎婦の方へと向き直った。
「君たちには本当に辛いいをさせてしまった。院が逮捕されたことで、君たちをろ指で見るもいるかもしれない。だが君たちは何も悪くない。もしよかったら、これからも々と緒にしい病院を作っていってくれないだろうか」
副院の温かい言葉に、優馬はしだけ目を見き、そして隣のと顔を見わせた。は静かに頷きうと、優馬が歩にた。
「副院先、ありがとうございます。そのお言葉だけで胸がいっぱいです」
優馬は真っすぐな声で答えた。
「でも俺は病院をやめようといます」
「え」
会が再びざわついた。
「せっかく幹部たちが引き止めてくれているのに、なぜやめるのか」
「義父の逮捕は関係ありません。ただ俺は今まで恵まれた環境ので、兄に守られ、院の権力に守られ、どこか甘えていた部分があったんだと気づきました」
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
消えなかった500円
昭和42年、町工場で働く佐々木正雄は、給料日のたびに茶色い封筒から500円だけを抜いていた。 家計を預かる妻・春江にとって、その500円は決して小さな額ではなかった。米代、学校の集金、娘の靴、毎日の食卓。10円、20円を切り詰めて暮らす中で、夫が理由も言わずに毎月同じ金額を消していくことが、春江にはどうしても許せなかった。 酒なのか、競馬なのか。それとも、妻には言えない誰かのためなのか。 問い詰めても、正雄はただ「俺の小遣いだ」としか答えない。夫婦の間に小さな疑いを残したまま、500円の謎は長い年月の中へ埋もれていった。 やがて時代は流れ、娘たちは巣立ち、正雄もこの世を去る。 遺品整理の途中、春江は押し入れの奥から一冊の古い大学ノートを見つける。そこに残されていたのは、昭和42年から何年も続く「500円」の記録だった。 夫が最後まで語らなかった、その金の行き先とは。 20年以上たって初めて明かされる、不器用な父の小さな秘密。人生逆転|親子関係1.5萬字5 267 -
完結第13話
消えた託児代7万円
2001年、東京の外れにある義実家で暮らす保育士のゆいは、夫の妹・安奈から何度も娘の子守りを押しつけられていた。 「保育士でしょ?」 「家族なんだから」 「今日だけお願い」 そう言われるたび、ゆいは仕事帰りに1歳のクレアを風呂に入れ、寝かしつけ、夜泣きにも起きてきた。けれど夫も義母も、それを“当然の手伝い”としか見ていなかった。 ある朝5時半、安奈は39度の熱を出したクレアを抱えて現れる。 「娘の子守りよろしく」 仕事を理由に断ろうとするゆいへ、夫は笑って言った。 「保育士なんだから慣れてるだろ。ケチくさいこと言うなよ」 その一言で、ゆいの中で何かが切れた。 なぜ安奈は、そこまで頻繁に娘を預けていたのか。 なぜ“仕事”と言って家を空ける日が増えていたのか。 そして、クレアの父親だけが知らなかった事実とは――。 便利な保育士として扱われ続けた嫁が、初めて「無理です」と告げた日、義家族の隠された嘘が静かに崩れ始める。兄弟姉妹|夫婦1.9萬字5 228 -
完結第12話
赤身を笑った女の末路
15年前、木村実乃里は“親友”を名乗る女・高子に夫を奪われた。 妊娠したと泣きながら告げてきた高子。沈黙する夫。幼い娘を連れ、実乃里はすべてを失ったような思いで家を出た。 それから15年。 実乃里は娘・由美香を育てながら、小さな店から会社を立ち上げ、ようやく穏やかな日々を手に入れていた。 そんなある日、社会人になった由美香が、初任給で母を回転寿司へ連れていく。ささやかで幸せな食事の席で、実乃里は15年ぶりに高子と再会する。 「相変わらず貧乏臭いわね」 「うちの子は国家公務員なの」 昔と変わらず人を見下し、勝ち誇る高子。 しかし次の瞬間、由美香が静かに言った。 「ママ、あの人クビにしたら?」 高子が働いている“高級ショップ”の本当の経営者。 15年前に壊されたはずの母娘の人生。 そして、高子自身が知らなかった本当の立場。 回転寿司の小さなテーブルで、15年越しの因果が静かに動き出す。因果応報|人生逆転1.8萬字5 547 -
完結第11話
聖火と十円玉
昭和39年10月10日。東京オリンピック開会式の朝、町中が歴史的な一日に浮き立つ中、大田区の小さな町工場では、職人・佐伯正治がいつも通り旋盤の前に立っていた。 急ぎの部品6個を仕上げ、「俺が届けてくる」と自転車で工場を出た正治。取引先には確かに到着し、部品も無事に渡していた。 しかし、その後、彼は家にも工場にも戻らなかった。 妻も仲間も警察も行方を探す中、正治は4日間姿を消す。そして4日目の朝、髭を伸ばし、汚れた上着のまま、左手に包帯を巻いて工場へ戻ってきた。 彼が作業台に置いたのは、1枚の病院の領収書。 東京中が聖火を見つめていたあの日、名もなき職人はどこで何をしていたのか。 歴史には残らなかった、けれど誰かの人生を確かに支えた、昭和の小さな選択の物語。人生逆転|真相1.6萬字5 893 -
完結第10話
終電の風呂敷
昭和36年の冬、東京郊外の小さな私鉄駅に、毎晩必ず終電だけに乗る老婦人がいた。 午後11時38分。灰色の着物に黒い羽織、そして胸に抱えた紺色の風呂敷包み。彼女はいつも同じ時間に現れ、同じ行き先――工場前駅までの切符を買っていく。 昼間には一度も姿を見せず、帰りの切符も買わない。翌朝戻ってくる姿を見た者もいない。それなのに、次の夜になると、老婦人はまた何事もなかったように駅へ現れる。 若い駅員・高木修一は、次第にその風呂敷の中身と、彼女が毎晩終電に乗る理由が気になっていく。 そして小雪の降る夜、高木は初めて老婦人の後を追った。 終電の先にあったのは、眠らない工場街と、夜勤を終えて戻ってくる幼い少女たちの姿。老婦人が風呂敷をほどいた時、高木はようやく知ることになる。 彼女が毎晩運んでいたのは、ただの荷物ではなかった。 誰にも頼まれず、名前も残さず、昭和の片隅でそっと続けられていた小さな恩返し。その温もりが、時代を越えて誰かの心に受け継がれていく――。人生逆転|真相1.4萬字5 2597 -
完結第14話
35万円の空冷蔵庫
大晦日、妻の弓が35万円かけて用意した正月料理が、冷蔵庫から一つ残らず消えていた。 持ち去ったのは、夫・健一の母と弟。松阪牛、タラバガニ、有名料亭のおせちまで奪いながら、彼らは笑ってこう言い残す。 「明日はカップ麺でも食べてなさい」 20年間、“長男の嫁”として姑に尽くし続けてきた弓。いつか本当の家族として認めてもらえると信じ、理不尽な仕打ちにも耐えてきた。 しかし、その夜、健一は知ってしまう。食材を奪っただけでは終わらない、母と弟が5年前から隠し続けていた金の秘密を。 元日の新年会。食卓に並んだのは、豪華な料理ではなく一箱のうどんだけ。 だが、襖の向こうには親戚たちが集まり、20年間隠されてきた佐藤家の本性を静かに聞いていた――。兄弟姉妹|夫婦2.1萬字5 2285 -
完結第12話
7階に戻るな
70歳の高橋恵子は、夫を亡くしてから6年、都心のマンションで静かに暮らしていた。 ある夕方、いつものように買い物帰りのエレベーターに乗った彼女は、隣人の老人・木村から一枚の紙切れを渡される。 「病気のふりをして、次の階で降りろ。絶対に7階へ戻るな」 意味も分からないまま指示に従った直後、エレベーターの中で木村は命を落とす。さらに残された紙には、「このマンションでは、誰も信じるな」と書かれていた。 なぜ木村は恵子を逃がしたのか。なぜ7階へ戻ってはいけなかったのか。 やがて事件は、6年前に事故死したはずの夫・優一郎の死、息子夫婦の秘密、そしてマンションから消された5分間へとつながっていく。 たった一枚の紙切れが、穏やかな老後に隠されていた真実を暴き出す――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 1324