みかん小説
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"双子の消えた春" 第10話

信夫さんはその子のりませんでした。女性がでこの子をみ、で育てると決め、信夫さんには何も告げなかったからです。その子こそが双子にとっての腹違いの兄、信夫さんが別のでこの世に残していたもうの息子だったのです。

「私はそのことを子にも、也と達也にもずっと隠してきました」信夫さんの声は震えていました。「言えなかった。言えば族が壊れてしまうとった。だから見てみぬふりをして、いないものとしてきてきたんです。卑怯でした。父親として番やってはいけないことを私はしてきたんです」

は止まず、り続いていました。坂巡査の脳裏にふと古いファイルの記述が蘇りました。双子が姿を消す数、喫茶で双子と刻な様子で話し込んでいた謎のの男。代半ばの、ごく普通の男。坂巡査の胸につの考えが稲妻のようにひらめきました。まさかあの、双子と話していた男というのは、その腹違いの兄だったのではないか。

巡査は自分の鼓くなるのをじました。ものに閉ざされていた事件。そのが今、たったつの真実によってゆっくりとれ始めようとしていました。止まっていた計の針が、かちりとつ静かにしたその瞬でした。

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「坂さん」信夫さんは顔をげ、まっすぐに坂巡査を見つめました。その目には分の悔と、そして固い決が宿っていました。「もう隠すのは終わりにします。お願いです。どうか、どうかあの子たちが体どうなったのか。その兄があの子たちに何をしたのか。いや」信夫さんは首を振りました。「何があったのか、本当のことを調べていただけないでしょうか?例えそれがどんなに辛い真実だったとしても、私はもうりたいんです。ぬまでに本当のことをりたいんです」

老いた老のその必の訴えを、坂巡査はまっすぐに受け止めました。そしてく頷いたのです。「わかりました。私にできる限りのことをやらせてください」

窓のではがいつのにかがり始めていました。の切れから柔らかな夕が差し込み、に濡れた桜のびらをキラキラとらせていました。い沈黙が、今ようやく破られたのです。そしてここから、封じられていた事件の真相へと向かうたな歩みが静かに始まろうとしていました。

巡査は信夫婦の元を辞すると、そので駐所へと戻りました。胸のぶっていました。もの誰も解くことのできなかった謎、その固く閉ざされた扉の鍵となるかもしれない真実が今自分に託されている。

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けれども若い巡査は同によく分かっていました。駐所のお巡りさんただの力では、の事件を再びかすことなど到底できないと。

巡査は迷いませんでした。その晩のうちに彼は野県警の本部へと連絡を取りました。「の双子失踪事件について、たなな事実が判しました」

最初、話を受けた本部の係員は驚いたと言います。の、の事件。それを町駐所の若い巡査が今更蒸し返そうというのです。けれども坂巡査が語る腹違いの兄のと、当の喫茶での目撃証言との符を聞くうちに、係員の声の調子が次第に変わっていきました。そしてその報告は配の刑事の元へと届けられました。笠原刑事です。当、あの事件の捜査を指揮し、両親に「必ず見つけます」と約束しながら、ついにその約束を果たせなかったあの刑事でした。

笠原刑事はすでに定に控えるになっていました。に髪はすっかりくなり、現の第線からは退いていましたけれども、あの事件のことを彼はりとも忘れたことがありませんでした。果たせなかった約束は胸の奥にさな棘のように刺さり続けていたのです。坂巡査からの報告を聞いた、笠原刑事はしばらく言葉を失っていたと言います。

そしてい声でただ言こうつぶやきました。

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