"隠された十五年の物語" 第5話
黒田は任同で警察に呼ばれ、何度も取り調べを受けた。
宅は控えのガラス越しに、取り調べを受ける黒田の姿を見ていた。
落ち着かない目つき、くいた元、質問にはぼそぼそと曖昧な答えを返すだけで、決定な供述は切しない。
「、美さんを見ましたか?」
「見たような、見なかったような……」
「その畑にきましたか?」
「ったかもしれない……」
「彼女をに乗せましたか?」
この最の質問に、黒田は完全に黙秘した。
だが、証拠は何つてこなかった。
女の遺体も、の切れ端も、痕跡も切発見できず、黒田の自宅、、を徹底捜索しても、決めとなるものはしなかった。
証拠分のため、黒田は釈放された。
元民の疑惑の目は黒田に向けられたが、警察はそれ以捜査をめる段がなかった。
黒田はそのほど町に残ったが、平成の、突然を畳み、を捨てて完全に姿を消した。
方はらくのままだった。
宅はその、何度も転勤を繰り返し、県内各の警察署で勤務した。
だが、どこへっても机の引きしには、美の写真を忍ばせてきた。
「美ちゃん、すまない」
く、この悔のが彼のに残り続けていた。
夜、宅は袋をはめ、缶のをつずつ慎に確認していく。
写真、ノート、カセットテープ。
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写真は違いなく崎美本のもので、族のアルバムにも残っていない貴な枚だ。
ノートをくと、最初のページにの文字が記されていた。
『平成、美、方』
宅はページをめくるを止め、胸の奥がく締め付けられた。
ノートには、淡々とした致で、黒田の取りが記録されていた。
『平成、黒田、雑貨にて女性客と接触』
『同、黒田、畑周辺を徘徊、畑には侵入せず』
『同、黒田、酒を購入、本と目がう』
万とボールペン、種類の跡が交互に使われており、男女が共に記録していたことがわかる。
ページがむにつれ、記録はを超えて続いていた。
『平成、黒田、町をれる』
『同、隣町にて黒田の姿を確認』
『平成、の町に定、アパートを借りる』
『同、寺の庭仕事の職に就く』
『同、内職の妻と会い、夫婦となる』
この記録は、まさに桜と静のそのものだった。
にわたり、に数、にはヶに、途切れることなく黒田の向が記録され続けていた。
付にの狂いもなく、を排した観察記録は、すべて真実を捉えている。
そして、ノートの最終ページ。
これまでの淡々とした文字とは異なり、震えた致でこう記されていた。
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『もしこの記録を見つけたがいるなら、どうか美ちゃんのために、真実を伝えてください』
宅はノートを閉じ、両で顔を覆った。
肩が細かく震え、いくことができなかった。
窓のでは、再びがい始め、のを超えた女の笑顔が、彼のにまっすぐに映っていた。
「美ちゃん……」
宅はようやく顔をげ、抱え続けた悔と、隠されたの真実に、静かに向きった。
窓のではまたが散らつき始めていた。
蛍灯のの、の女の笑顔が桜並のからまっすぐに彼を見つめていた。
「美ちゃん」
宅はようやく顔をげ、のでもう度語りかけた。
「待たせてすまんかったな」
声はほとんど自分にしか聞こえないほどさかった。
カセットテープはまだ再されていなかった。
それを聞くにはもうしがるようにえた。
い眠りから事件は静かに目を覚まそうとしていた。
カセットテープを聞くより先に、宅警部にはめなければならない仕事があった。
ノートに記された跡、淡々とした観察記録を残した。
それが岸本と静であることはもうほぼ違いがなかった。
にこの町から忽然と消えたあの老夫婦の暮らしと、寺の庭仕事、内職といった記録の活が完全になっている。
しかし宅にはどうしても腑に落ちないことがあった。
事件の起きた平成、被害者崎美の族や親類は、当の捜査本部が通り当たっていた。
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