"失敗作のグッバイ" 第1話
「息子は才なのに、子どもは卒の嫁が産した失敗作よ」
悪く笑いながらそう言った姑の声を、私は今でも忘れられない。
うちの息子の何が、どう失敗作だというのか。
その瞬、私と夫ので何かが完全に切れた。こんな義両親とは縁を切ってやる。そう決めた、私たちにはしの悔もなかった。
けれどまさか、10に義両親のほうがく悔することになるとは、そのはってもいなかった。
私の名は奈々子。お菓子作りが趣の45歳だ。
実を言うと、昔はお菓子どころか料理すら苦だった。包丁の使い方もぎこちなく、付けもよく失敗していた。けれど結婚をきっかけに、夫の涼介に「おいしい」と言ってもらえるのが嬉しくて、しずつレシピを試すようになった。
は、んでくれる相がいると変われるものだ。
族が笑ってくれるを作ること。
それが、いつしか私のきがいになっていた。
涼介とは学代に会った。く付きい、1度別れた期もあったけれど、結局お互いに「結婚するならこのしかいない」とい直して復縁した。
結婚活は穏やかに続いていく。
そう信じていた。
けれど、その穏やかさに最初のを落としたのは、義両親だった。
結婚してすぐの頃、義両親は顔をわせるたびに子どもの話をしてきた。
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「奈々子さんは、子どもを産むなら男の子と女の子、どっちがいいの?」
夫はそのたびにし眉をひそめ、
「そういうことは、あまり聞くものじゃないぞ」
と気を使ってくれた。
ただ、当の私はそれほど嫌だとはじていなかった。いつか子どもを持つものだとっていたし、義両親が孫を楽しみにしてくれているのなら、それはありがたいことだとっていた。
だから私は、し考えてから答えた。
「そうですね。女の子かな」
すると姑は、目を見いて私を見た。
「何を言っているの。最初は男の子を産みなさい。継ぎなんだから」
隣にいた舅も、当然だというようにうなずいていた。
私はそので曖昧に笑うしかなかった。
子どもは授かりものだ。男の子を産むぞと決めて、い通りに産み分けられるものではない。それに、私にとって子どもは「夫のの継ぎ」ではなく、私たち夫婦のもとへ来てくれる切なだった。
女の子でも男の子でも、同じようにするつもりだった。
けれど義両親の線には、もし最初に女の子がまれたらがってもらえないのではないかとわせる、妙な圧があった。
そののことを夫に話すと、涼介はすぐに言った。
「距を取っていい。無理に相しなくていいから」
その言葉に救われ、私はアポなしで来られても居留守を使ったり、話になかったりして、しずつ義両親との距を取るようになった。
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しかし、私の妊娠が分かると、状況は変した。
「奈々子さん、体調はどう?」
妊娠が分かってから、姑は頻繁にがへ顔をすようになった。
1で来るもあれば、舅と緒に来るもあった。以なら居留守を使えたが、妊娠で体調が悪い期だとられている以、にいないふりは難しかった。
もし妊婦がしょっちゅうを空けているとわれたら、何を言われるか分からない。
そのも、姑は突然やって来た。
玄関をけた私に、彼女はにこにこと笑いながら袋を差しした。
「これ、いいんですって」
からてきたのは、モーツァルトのCDだった。
「ご所の方のお孫さんが、とってもがいいの。そのお嫁さんが妊娠にモーツァルトを聞いていたんですって。自律神経がうし、お腹の子にもいいそうよ」
「そうなんですね」
私は引きつった笑みを浮かべるしかなかった。
その、たまたま休みだった夫がリビングから顔をした。
「また来たのかよ、母さん」
呆れた声だった。
姑はむっとして言い返した。
「またなんて言わないでよ。私は奈々子さんが配なの。それに、差し入れも持ってきたんだから」
そう言って見せたバッグは、ぱんぱんに膨らんでいた。
涼介は額にを当てた。
「今度は何を持ってきたんだよ」
妊娠して以来、姑が量の“が良くなるべ物”を持ち込むのは、ほとんど恒例事になっていた。
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