"いただきますのない食卓、私は家を出た" 第8話
10 5 、孝志さん。最帰りが遅く胃の調子が悪いみたい。の朝は消化の良いおかゆとお汁の効いた卵焼きにしよう。
6 20 、姑さん血圧がめ。はお薬の補充、絶対に忘れないよう朝番で声をかけること。煮物の付けはいつもよりお醤油を控えめに。
11 2 、匠。から学の試験。夜には胃にもたれない温かいおうどんを作ってあげること。
4 15 、翔太。最残業続きで顔が悪い。お弁当にはニンニクとお肉でスタミナがつくおかずをめに入れる。
健康診断の結果、アレルギー、そのの体調、帰宅。
私たちが「お母さんならやって当たり」と見向きもしなかった々の事。
その裏には、族をずっと見守り続けてきた母のいと観察の記録が残されていた。
彩佳はでを覆った。
私たちが毎無言でべていたものは、ただの料理ではなかった。
疲れていないか、無理をしていないかという、母からの無言のメッセージだったのだ。
ノートの余にはさな文字でこうかれていた。
孝志さんが仕事で頑張れるように、姑さんがきできるように、子供たちが笑顔での世界へ羽ばたけるように、私にできることはご飯を作ることくらいしかないから。
彩佳の目から粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。
サンドイッチを持っていたが震える。
広告
私たちはお母さんに事を作ってもらっていたんじゃない。
私たちの命とを、毎温めて守ってもらっていたんだ。
それなのに私たちは 27 、そのぬくもりに度も「いただきます」「ありがとう」を返してこなかった。
お母さん、ごめんなさい。ごめんなさい。
彩佳は休憩の机に突っ伏し、声を殺して泣き続けた。
自分たちの愚かさと傲さが、ようやくはっきりと見えた瞬だった。
夕方、彩佳は泣き腫らした目を隠すようにし、い取りで帰宅する。
のは朝よりもさらに惨な状況になっていた。
「おい、どういうことだ?着ていくスーツがないじゃないか」
リビングに入ると、父親の孝志が鳴り声をげていた。
ソファのには週末にクリーニングにすはずだったスーツがシワだらけのまま放置されている。
いつもならみわ子が休のにクリーニングへき、曜の朝には綺麗な状態でクローゼットにかかっているはずだった。
「体あの女、今で 3 目だぞ。俺がカードを止めたのに、なぜ泣きついてこないんだ」
苛ちを隠せない孝志の元では、姑のかよが青い顔をしてソファに横たわっていた。
「孝志、私なんだかがふらふらして胸が苦しいの」
「母さん、どうしたんだよ。丈夫か?」
「お薬をどれをめばいいのかわからなくて、昨から血圧のお薬をんでいないのよ」
広告
震える声のかよに、孝志は舌打ちをした。
「だから病院に話して聞けって言っただろうが」
「話したわよ。でも診察券も見当たらないし、何ていう名のお薬だったかいせなくて」
みわ子が管理していた薬のケースは空のまま、引きしのを探しても、かよの薬のストックがどこにあるのか族の誰もらないのだ。
ゴミ箱からはゴミの嫌なにおいが漂い、流し台には 3 分の器が積みになっている。
洗面所の脱かごからは男たちの汚れた着やシャツが溢れ返っていた。
のの能が完全に止していた。
「クソ。あの女、絶対に許さん。ここまで族に迷惑をかけてただで済むとうなよ」
孝志はスマートフォンを取りし、再びみわへ向けメッセージを打とうと画面をく叩き始めた。
彼のではまだ、が回らないのは自分勝な妻のストライキのせいであり、自分は被害者だとい込んでいるのだ。
その父親のろ姿を見つめながら、彩佳は通勤カバンのにあるノートをく握りしめた。
違うよ、お父さん。
お母さんが迷惑をかけてるんじゃない。
お母さんがいなくなっただけで、私たちはまともにきていくことすらできないんだ。
彩佳は散らかり果てたたいリビングのでち尽くした。
私たちは今、とんでもないものを失ってしまったのだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
置き去り後27分
給与口座の通帳と暗証番号を義母へ渡すよう迫られた美和。拒絶すると、夫は彼女を真冬の国道へ置き去りにし、「怖い思いをすれば折れる」と走り去った。 美和は泣いて追いすがらず、900メートル先のファミレスで夜を明かす。翌朝、夫から届いていたのは41件の着信と、「すぐに戻った」という釈明だった。 だが店を出ようとした美和を、見知らぬトラック運転手が呼び止める。彼のドライブレコーダーには、夫が戻ったのは27分後だったこと、さらに義母との電話で置き去りの目的を語る肉声まで残されていた。 口座を守るための夫婦喧嘩だと思っていた夫。しかし映像が暴いたのは、妻を恐怖で屈服させようとした計画的な支配だった。美和は金だけでなく、自分の人生を決める権利を取り戻すため、24年間の結婚に静かに決着をつける。夫婦|第二の人生|ATM扱い|金銭問題2.2万字5 11 -
完結第13話
お湯を奪われた嫁
真冬の夜、義母から「安月給の嫁には水で十分」と風呂を禁じられた真理子。三年間、家計と家事を支えながら侮辱に耐えてきた彼女は、その日を境に生活費の負担をすべて停止する。 月九万円と無償の家事が消え、夫と義母の暮らしはたちまち崩れ始めた。そんな中、真理子は床下から亡き義父の黒革の手帳を発見する。 そこには、彼女の生活を守るために遺された二千万円の信託と、虐待があれば義母の居住権を失わせる誓約書が隠されていた。しかも夫は、その金を三年間にわたり遊興費へ流用していた。 お湯さえ惜しんだ親子に突きつけられる、凍結された口座と刑事告訴の可能性。沈黙を捨てた真理子は、奪われた金だけでなく、自らの尊厳と人生を取り戻すため、静かな清算を始める。因果応報|嫁姑|修羅場1.9万字5 32 -
完結第12話
産後5日、家を売られた私の人生やり直し
出産から5日後、生まれたばかりの娘を抱いて帰宅した美緒を待っていたのは、家具も家電も消えた空の部屋だった。夫はマンションを売り、妻の預金860万円を持ち出し、愛人との新生活へ逃げていた。さらに、美緒の署名を偽造した離婚届まで提出されていた。 結婚指輪を売って実家へ帰る切符を買った美緒は、駅で妻の最期に間に合わないと嘆く老人へ、その切符を譲ってしまう。 数日後、老人は企業グループの創業者として美緒の前に現れた。しかも夫が盗んだ金で設立した会社は、老人の会社へ1億2000万円の出資を求めていた。 すべてを奪って勝ったつもりの夫は、まだ知らない。自分の会社の命運が、捨てた妻の手元に集まり始めた証拠によって左右されることを夫婦|裡の顔|金銭問題1.7万字5 40 -
完結第15話
午前2時17分、亡き妻が病室を訪れる
午前2時17分。夜勤看護師の由衣は、面会時間を過ぎた病棟で黒いコートの女性を目撃する。 女性が立ち止まったのは、家族との連絡を拒み続ける71歳の患者・久世修一の病室前。だが受付記録にも防犯カメラにも姿はなく、乗り込んだエレベーターからも忽然と消えていた。 修一は女性の特徴を聞くと顔色を変え、10年間疎遠だった娘へ連絡してほしいと頼む。やがて判明したのは、黒いコートが10年前に亡くなった妻・美佐子のものと同じだったこと。そして彼女が息を引き取った時刻も、午前2時17分だった。 妻の最期に間に合わなかった父と、その父を許せなかった娘。再び同じ時刻にエレベーターが開く夜、10年間止まっていた家族の時間が静かに動き始める。ミステリー|夫婦|真実|真相1.4万字5 22 -
完結第20話
妻のスマホに残っていた半年先の「2名様」
妻の美和を亡くして半年。直人は解約できずにいた妻のスマートフォンから、6日後に迫ったレストランの予約を見つける。 予約したのは、亡くなる12日前。日時は何の記念日でもない土曜日の夜で、人数は「2名」。相手を知らされていなかった直人は迷った末、店へ電話をかける。 そこで告げられたのは、美和が封筒を預けていること、そして彼女が来られない場合も、直人だけで料理を食べてほしいという願いだった。 最初の一皿を食べ終えた時、ようやく渡された妻の手紙。そこに記されていたのは別れの言葉ではなく、残される夫が一人でも暮らしていけるように用意された、最初の「練習」だった。夫婦|真相1.9万字5 59 -
完結第10話
60万円の命の値段
危篤の父を救うため、夫に60万円を貸してほしいと土下座した美央。だが夫は、父を「無価値な老人」と嘲り、金を拒んだうえ、離婚と義母の無給介護まで言い渡した。 美央は静かに家を出て、3年間封印していた一本の電話をかける。 彼女の正体は、日本最大級の企業連合「天馬グループ」の後継者。そして夫が誇る勤務先は、その巨大組織の末端企業にすぎなかった。 調査を進めると、夫の横領だけでなく、総額3億2000万円に及ぶ不正取引への関与まで判明する。何も知らない夫は、父の葬儀へ美央を連れ戻しに来ると宣言した。 しかしその会場で彼を待つのは、捨てた妻ではなく、数万人の頂点に立った新たな統帥だった。裡切られた|怒り|夫婦|介護|修羅場1.5万字5 33 -
完結第13話
娘夫婦に貸した愛車を「名義変更して」と言われた日
67歳の修司が、娘夫婦へ半年だけ貸した愛車。返却を求めると、婿は当然のように言った。 「もう僕の名義に変えてもらえませんか」 だが車はすでに420万円で査定され、600万円を超える新車の下取りに使われようとしていた。さらに、娘夫婦へ貸した住宅資金1000万円も、返済されたはずの30万円が一度も届いていない。 調べるほど現れる、消えた500万円の投資、偽造された「300万円返済済」の記録、そして亡き妻名義の借用書。 家族への援助は、いつから「もらって当然の財産」に変わったのか。修司は車の鍵だけでなく、自分の人生を決める権利まで取り戻そうとする。親不孝|絶縁|親子関係|金銭問題1.9万字5 92 -
完結第15話
「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた
夫を亡くし、川越でひとり暮らす翻訳者・高橋さくら。彼女はスーパーで398円のラーメンを棚へ戻した隣人の源蔵を見かけ、傷つけないよう理由をつけて2180円の箱を贈った。数日後、源蔵は自宅で静かに息を引き取る。遺言執行者の黒田と書斎へ入ったさくらが見つけたのは、巨大金庫と、その上の神棚に供えられた未開封のラーメンだった。そこへ源蔵の息子夫婦が現れ、父の死を悼むことなく金庫を探し、さくらを遺産目当ての泥棒と罵る。だが源蔵には、31億円の遺産だけでなく、息子が最も恐れる4億8120万円の記録があった。相続|金銭問題2.4万字5 168