"白いドレスの告白" 第6話
「私は先に部で休んでいました。美智子ちゃんが1でくと言ったので」
佐藤は女将にも確認した。
女将は、昨夜9過ぎに2が散歩へかけるのを見ていた。しかし、11頃に美智子が1でていく姿は見ていないと言った。
佐藤は京子に目を戻した。
「夜9過ぎの散歩というのは?」
京子は慌てて言った。
「あ、それは2でったんです。そのは緒に戻ってきました。でも、その、美智子ちゃんがもう度1でかけたんです」
佐藤の表がしくなった。
「もう度理させてください。まず9過ぎに2で散歩にて戻ってきた。その、11頃、佐藤美智子さんが1で再びした。そういうことですね」
京子はうなずいた。
「はい。そうです」
警察はすぐに捜索を始した。
温泉周辺、岸沿い、、旅館の裏。あらゆる所を探した。昼過ぎには本署から応援の警察官が到着し、元の消防団も加わった。
総勢50名以の規模な捜索になった。
崖も調べた。
にも潜った。
しかし、美智子の姿はどこにもなかった。
夕方、佐藤は再び京子に話を聞いた。
「佐藤美智子さんは、何か悩みを抱えていましたか。自ら姿を消すような理由に当たりはありませんか」
京子はく首を横に振った。
「そんなこと、あるはずありません。美智子ちゃんは来結婚するんです。幸せいっぱいだったんです」
広告
「誰かにまれるようなことは?」
「美智子ちゃんは優しいで、誰からも好かれていました。そんなこと、あるはずがありません」
夜になっても捜索は続いた。
だが、美智子は見つからなかった。
京子は旅館の部で、警察官に付き添われながら待ち続けた。部には美智子の荷物がそのまま残されていた。旅鞄、着替え、化粧品。
まるで、今すぐ戻ってくるようだった。
京子はその荷物を見つめ、さく震えながらつぶやいた。
「美智子ちゃん……どこにったの。く戻ってきて」
その声が誰に向けられたものなのか、京子自にも分からなかった。
翌になっても、美智子は見つからなかった。
警察は京にいる美智子の族へ連絡し、両親と婚約者が伊豆へ駆けつけた。母親は旅館に到着するなり泣き崩れ、婚約者は青ざめた顔で警察に協力を求めた。
京子は彼らに何度もをげた。
「すみません。すみません。私が緒にいれば……」
美智子の母親は、京子を責めなかった。
しかし、そのしみに満ちた目が京子の胸に突き刺さった。
捜索は1週続けられた。
だが、がかりは何ひとつ見つからなかった。
警察は事件と事故の両方の能性を野に入れて捜査を続けた。しかし決定な証拠はない。
昭496。
美智子の失踪から1かが経っても、状況は変わらなかった。
広告
佐藤巡査部は、京子を何度も呼びして事を聞いた。
「11頃、1でかけたんですね。何か見落としていることはありませんか」
京子は毎回、同じように答えた。
「はい。違いありません。私は部で休んでいて、美智子ちゃんが散歩にくと言ってていったんです」
佐藤は京子の表を注く観察した。
らかな審点はなかった。
しかし、何かが引っかかる。
女将は11頃に美智子を見ていない。京子の証言以に、美智子が1でした証拠はなかった。
それでも、遺体も所持品も見つからないままでは、それ以めることができなかった。
美智子の婚約者は、毎週末のように伊豆を訪れ、捜索に参加した。
疲れきった顔で岸を歩く彼を見るたび、京子の胸は痛んだ。
「すみません。私がもっとちゃんと見ていれば」
京子が謝ると、婚約者は力なく首を横に振った。
「あなたのせいじゃありません。でも、本当に何もいせませんか。さなことでもいいんです」
京子は涙を流しながら答えた。
「本当に何も。ただ、美智子ちゃんが幸せそうだったことだけは覚えています」
が過ぎ、が来ても、美智子は見つからなかった。
警察は次第に捜索の規模を縮し、事件は未解決のままのに沈んでいった。
昭50。
昭51。
が過ぎていく。
京子は元静岡での活を続けていた。
会社での仕事、と職の往復、変わらない々。
しかしのでは、恐怖と罪悪が消えることはなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
新潟校十二年の悪闇
1992年、新潟県小学校女教師失踪事件|12年後、校長の醜悪な裏顔がついに暴かれた 1992年、新潟の田舎町小学校で、一人の30代女性教師が忽然と姿を消した。 通学路、自宅、学校施設、周辺の山林……警察が徹底的に捜索したものの、彼女の痕跡は一つも見つからなかった。 当時、失踪は「自発的な家出」「遠方への転居」と断定され、事件は迷宮入り。 誰もがこの謎を忘れかけた12年間。 誰も信じなかった真実が、ついに白日の下に晒される。 穏やかで人格者と慕われていた校長先生。 その裏に隠された、人間性を失った醜悪な素顔。 女教師が二度と帰らなかった本当の理由、閉ざされた学校の闇、隠蔽された12年の悪事―― 全ての真相が今、明かされる。因果応報|裡の顔|遺體発見|行方不明1.7萬字5 198 -
完結第6話
7時15分の黒い日記
昭和56年、浜松市で29歳の銀行員・吉田道子が忽然と姿を消した。 毎朝7時15分、同じ停留所から同じバスに乗り、銀行へ向かっていた道子。真面目で几帳面な彼女は、ある日から家の前に残る見慣れない吸い殻と、背後からの視線に怯えるようになる。 「誰かに見られている気がする」 そう夫に訴えても、気のせいだと片づけられた。 そして11月の夜、親睦会の帰りに乗ったはずのバスを最後に、道子は家までわずか300mの場所で消息を絶つ。 事件は未解決のまま7年が過ぎた。 昭和63年、1人のバス運転手の遺品から十数冊の日記が見つかる。そこに記されていたのは、道子を3年間見つめ続けた男の、あまりにも歪んだ記録だった――。ミステリー|行方不明9.4千字5 186 -
完結第6話
43番の帰還
9年前、京都の住宅街で小学2年生の少女・彩佳が忽然と姿を消した。 公園で遊んでいたはずの娘は、夕方になっても家に戻らなかった。警察も住民も必死に捜索したが、目撃者も手がかりもなく、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていく。 そして9年後のある朝。 1人の少女が、古びた行方不明者のチラシを手に警察署へ現れる。彼女は受付で静かに告げた。 「私は……彩佳です」 戻ってきた少女の手には、「43」と刻まれた小さな真鍮のタグがあった。さらに彼女は、自分が名前ではなく番号で呼ばれていたこと、他にも“42”や“44”がいたことを語り始める。 単なる誘拐ではなかった。 家族の家に隠されていた地下室、壁に刻まれた迷路、死んだはずの男の名前、そして母が隠していた「クレア」という過去。 9年間消えていた少女は、なぜ今になって戻ってきたのか。 そして彼女が最後まで忘れなかった「消さないで」という声の正体とは――。因果応報|人生逆転|行方不明9.0千字5 284 -
完結第8話
十年目の数珠
昭和60年、長野県の山奥にある古い寺で、参籠会に参加していた印刷所経営者・田中誠が忽然と姿を消した。 朝4時のお勤めの時間になっても現れず、部屋には畳まれた布団と鞄だけが残されていた。財布も着替えもそのまま。だが、彼がいつも手にしていた茶色い数珠だけが消えていた。 事業の不振、義弟との対立、取引先との金銭トラブル、そして最後に田中と会話していた若い僧侶――。 疑われる者はいた。けれど、決定的な証拠は何一つ見つからず、警察は田中が自ら山に入った可能性が高いと判断する。 それから10年後。 寺の修繕工事中、かつて若い僧侶が使っていた部屋の床下から、田中の数珠が発見される。 なぜ、消えた男の数珠が僧侶の部屋に隠されていたのか。 山寺に沈黙していたあの夜の真実が、10年の時を経て静かに動き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 109 -
完結第8話
消された天才少女の証明
1896年、東京帝国大学の数学演習室。 誰もいないはずの夜の教室で、黒板に残された未解決問題が、何者かによって解かれていた。 大学院生たちが数週間かけても辿り着けなかった証明。その式を直したのは、清掃員の母に連れられて校舎に入っていた、わずか12歳の少女・黒田ハナだった。 学校にも通えず、浅草の長屋で貧しく暮らしていた彼女。しかしその頭脳は、帝国大学の教授たちでさえ説明できないほど異質で、圧倒的だった。 だが、時代は彼女を“天才”とは呼ばなかった。 下層出身の少女であること。女子であること。正式な教育を受けていないこと。そのすべてが、彼女の才能を認めない理由にされた。 やがてハナは、学ぶ者ではなく“研究対象”として扱われ、歴史の表舞台から姿を消していく。 そして1964年。 大阪の古い長屋で、無名の女性が残した大量の紙束が見つかる。そこに記されていたのは、日本の学術史を根底から揺るがす、ある理論の原型だった。 黒田ハナとは何者だったのか。 そして、彼女の名はなぜ歴史から消されたのか――。ミステリー|行方不明1.2萬字5 417 -
完結第6話
松の根の告発
2008年の梅雨の夜、都内の10億円の豪邸から、70代の母と40代の長女が忽然と姿を消した。 玄関の鍵は開いたまま。台所には作りかけの料理、寝室には飲まれないままの薬。金庫の中の現金や貴金属は手つかずで、強盗の形跡もない。 ただ、防犯カメラだけが不自然に切られていた。 疑いの目を向けられたのは、海外出張中だった末の息子・西村匠。だが彼には、ホテルの記録、カード決済、目撃証言までそろった完璧なアリバイがあった。 事件は未解決のまま15年が過ぎ、匠は莫大な遺産を受け継ぎ、慈善家として世間の表舞台に立つようになる。 しかし2023年、豪邸の解体工事中、庭の松の木の下から古い2つ折り携帯が発見される。 そこに残されていたのは、長女が命の最後に録音した“ある声”だった。 15年間、コンクリートの下で眠っていた母娘の真実が、ついに動き出す――。ミステリー|行方不明9.0千字5 216