"白いドレスの告白" 第8話
廊にると、披宴会の賑やかさがざかった。化粧に向かう途、桂子は京子の姿を度見失った。
辺りを見回していると、奥の化粧からさな声が聞こえた。
桂子がづくと、鏡のに京子がっていた。
京子は自分の顔を見つめ、震える声でつぶやいていた。
「美智子ちゃん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
桂子はを止めた。
京子は続けた。
「もう耐えられない。毎、毎晩、あなたの顔が浮かぶの。私がやったこと……私が……」
桂子は息をんだ。
その言葉を聞いた瞬、8の失踪事件がをよぎった。
京子は洗面台ので顔を洗い、鏡に映る自分を見つめた。
「今は幸せなのはずなのに。でも、あなたを裏切って、私だけ幸せになっていいはずがない」
桂子は静かにそのをれ、会に戻った。
臓が激しく打っていた。
今聞いた言葉は何をしているのか。
美智子の失踪と関係があるのか。
披宴はそのも続いた。
京子は化粧を直して戻ってきたが、目はらかに泳いでいた。
披宴は無事に終わり、京子と田は婚旅へ発する予定だった。
しかし桂子のから、京子の言葉はれなかった。
翌、桂子は警察へ連絡することを決めた。
もし何でもなければ、それでいい。
けれど、もしあの言葉にがあるなら。
彼女は受付で、8の佐藤美智子さんの失踪事件について話したいことがある、と伝えた。
広告
桂子の話を聞いたのは、当も事件を担当していた佐藤巡査部だった。
彼は8が過ぎても、美智子の事件を忘れていなかった。がかりのないまま終わってしまった失踪。最に緒にいた京子の証言に、どこかさな違が残っていた。
佐藤は桂子をに、慎に尋ねた。
「結婚式で、田京子さんがそう言ったのですね」
桂子はうなずいた。
「はい。はっきり聞きました。『美智子ちゃん、ごめんなさい』『私がやったこと』と」
佐藤はしばらく黙っていた。
それだけで逮捕できるわけではない。
だが、見過ごすにはあまりにもい言葉だった。
彼は部を集めて指示をした。
「8の事件を洗い直す。田京子の当のを再確認し、伊豆の現をもう度徹底に調べる。何か見落としがあったはずだ」
警察は再び伊豆半島の温泉周辺を捜索し始めた。
8に調べた所を、今度はさらに細かく調べた。岸沿いの崖、、林の。昭49当の捜索では見つけられなかったものが、今なら見つかるかもしれない。
昭575旬。
再捜索始から2週が過ぎた頃、な発見があった。
温泉からしれた展望スポットのく、崖約30メートルの所だった。い茂った々ので、骨化した遺体が見つかったのだ。
発見したのは元の消防団員だった。
広告
崖の斜面を調べていた、の根元に引っかかっている布を見つけた。づいてみると、そこに骨が横たわっていた。
すぐに警察と鑑識が現へ駆けつけた。
遺体は完全に骨化しており、8というのさを物語っていた。しかしの部が残っており、それは昭49当に美智子が着ていたものと致する能性があった。
遺体のくには、さなハンドバッグも見つかった。にはに濡れて判読能になった片と、錆びた鍵が入っていた。
鑑識係が慎に遺体を調べた。
「蓋骨に損傷が見られます。崖からの転落、あるいは何らかの衝撃によるものとわれます」
佐藤は現を見ろしながら、帳に詳細を記録した。
遺体は京の科学捜査研究所へ送られ、詳しい鑑定がわれた。、齢、歯の状態などから、この遺体が佐藤美智子である能性が極めていことが判した。
美智子の両親が呼ばれた。
残されていたと所持品を確認した母親は、そので泣き崩れた。
「これは、美智子が旅に持っていったものです。違いありません」
父親も声を押し殺し、娘の名を呼んだ。
8探し続けた娘は、あの夜の展望台くの崖にいた。
佐藤は遺族にくをげた。
「遅くなって申し訳ございません。必ず真相をらかにします」
そのらせは、婚旅から戻ったばかりの京子のもとにも届いた。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
昭和44年、最終バスから消えた女性車掌
昭和44年、女性車掌・藤村紀子は最終バスの途中で姿を消し、車掌鞄から三万円を盗んで逃げたと噂された。25年後、娘の美和が廃校の屋根裏で十三枚の乗車券を発見する。当夜の公式記録は乗客十二人だったが、十三枚目は家庭で虐待されていた九歳の少年・高瀬誠の切符だった。 紀子は帰宅を拒む誠を継父・大島へ渡さず、夫の英一に託して鉱山会社の不正資料を取りに向かった。事故隠蔽や児童労働の証拠を掴んだものの追われて富山へ逃れ、その後三度手紙を送っていた。しかし英一は、最初は誠を守るため、後には自分の嘘が露見する恐怖から、すべて受取拒否にしていた。三万円の盗難も、運転手や営業所長らが作った偽装だった。 生存していた紀子と再会した美和は、母の潔白を証明しても、25年の不在まで無条件には許さない。会社記録は訂正され、十三枚の切符は廃校の資料室に保存される。父母は離婚し、美和は双方と境界を定めながら関係を築き直す。最後に母娘は一緒に資料室の戸締まりをし、次に会う日を、初めて誰にも決められず自分たちで選んだ。歴史|昭和|ミステリー|真相2.7万字5 445 -
完結第18話
昭和五十一年、消えた父の声を十八年後に聞いた
昭和51年、深夜番組の途中で言葉を止めたアナウンサー・孝一が、そのまま姿を消した。局から消えた200万円を持ち逃げしたと疑われ、家族には盗人という噂だけが残る。18年後、娘の奈津美は放送局の壁から、当夜の未放送音声を記録したテープを発見する。 調査の末、孝一はダム建設に伴う戸籍偽装と土地補償の不正を知り、死亡したことにされた女性の娘を守ろうとして町を離れたと判明する。200万円の受領書も局幹部による偽装だった。しかし危険が去った後も、孝一は家族に拒絶されることを恐れ、自ら帰らない年月を重ねていた。 奈津美たちは父と再会するが、すぐに昔の家族へ戻ろうとはしない。父の潔白だけでなく、その後の沈黙も記録に残し、それぞれの距離で関係を築き直す。資料館では途切れた放送と地域の声が保存され、孝一は新たな記録に《今度は、返事がなくても、自分から確かめる》と書き残した。昭和|ミステリー|真相|行方不明2.7万字5 272 -
完結第16話
廃線駅に殘された最後の切符
昭和43年、廃線となった白沢駅で、老駅長・源吉は毎年3月12日になると、昭和25年の日付が入った東京行きの切符を机に置いていた。若い駅員の修一が調べると、その日は14歳の少年・健一が故郷を離れた日だった。 健一は別の少年を助けるために名前を貸し、故郷では東京へ就職したことになっていた。しかし本人は別の土地で働き、母へ送った手紙も届かないまま、帰る場所を失っていた。源吉は、東京へ行きたくない健一を時代の流れに任せて送り出したことを、長年悔やんでいた。 源吉の死後、白沢駅へ戻った健一に、修一は最後の切符を渡す。それは旅立ちを促すためではなく、「いつでも帰ってきてよい」と伝えるために残された一枚だった。健一は草に覆われた廃線跡を歩き、置き去りにした故郷との時間に向き合う。歴史|昭和|ミステリー2.4万字5 178 -
完結第10話
31年間、母が捨てなかったマットレスの秘密
31年間、両親が頑なに使い続けてきた古いマットレス。中央は大きく沈み、父の腰痛も悪化していたが、母はなぜか買い替えを拒み続けていた。 息子のデイヴィッドは、両親を旅行へ連れ出した隙に新しいものと交換しようとする。ところが搬出業者から、「お母様を寝室へ入れず、まず一人で確認してください」と切迫した電話が入る。 マットレスの下から現れたのは、古い手紙や小さな靴、写真、ぬいぐるみ。そこには両親が31年間、息子にさえ存在を明かさなかった幼い娘・グレースの記憶が封じられていた。 娘を失った悲しみから逃げるため、名前すら口にしなくなった父。そして誰にも見つからない場所で、毎年娘へ手紙を書き続けた母。古い寝台が取り払われた日、沈黙の下に閉じ込められていた家族の時間が、ようやく光の中へ戻り始める。ミステリー|真実|真相|親子関係1.5万字5 372 -
完結第15話
午前2時17分、亡き妻が病室を訪れる
午前2時17分。夜勤看護師の由衣は、面会時間を過ぎた病棟で黒いコートの女性を目撃する。 女性が立ち止まったのは、家族との連絡を拒み続ける71歳の患者・久世修一の病室前。だが受付記録にも防犯カメラにも姿はなく、乗り込んだエレベーターからも忽然と消えていた。 修一は女性の特徴を聞くと顔色を変え、10年間疎遠だった娘へ連絡してほしいと頼む。やがて判明したのは、黒いコートが10年前に亡くなった妻・美佐子のものと同じだったこと。そして彼女が息を引き取った時刻も、午前2時17分だった。 妻の最期に間に合わなかった父と、その父を許せなかった娘。再び同じ時刻にエレベーターが開く夜、10年間止まっていた家族の時間が静かに動き始める。ミステリー|夫婦|真実|真相1.4万字5 104 -
完結第10話
昭和51年、閉山した炭鉱町から消えた父
昭和51年、炭鉱が閉山した3日後、保安係だった父・修一が姿を消した。玄関には泥のついた長靴と作業帽が残され、母は「探さなくていい」と口を閉ざす。だが娘が父の作業着から見つけた紙片には、閉鎖された坑道の名と、謎の時刻が記されていた。 調べるほどに浮かび上がる、改ざんされた保安記録、帳簿から消された作業員、そして会社が隠そうとする閉山直前の事故。やがて坑道に残された録音から、父が誰かを救おうとしていた事実が明らかになる。しかし数十年後に届いた父の名札には、さらに不可解な言葉が刻まれていた。 「北の出口から出た。家へは戻れない」 父はなぜ、生きて坑内を出ながら家族のもとへ帰らなかったのか――。時代|歴史|昭和|ミステリー|真相1.5万字5 225 -
完結第11話
火曜日だけ「受取済」が増える町
昭和22年、大阪。配給日の火曜日になると、まだ米を受け取っていない家の通帳に、なぜか《受取済》の判が押されていた。 ある日、十六歳の俊夫の家も米を受け取れず、家族は一週間分の食料を失う。印影は母の判子と酷似し、配給所では叔父が帳簿を管理していた。 真相を確かめるため、俊夫は夜の配給所へ忍び込む。そこで見つけた裏名簿には、死亡者や未帰還兵の名義で今も米が支給されていた。 そして、その中には二年前に亡くなった父の名前もあった。 《高橋勇作 一人分》 《受取人 芳江》 母はなぜ、死んだ父の名で米を受け取り続けていたのか。さらに調べるうち、善意から始まった秘密の配給と、それを利用して本当に米を奪っていた人物の存在が浮かび上がってくる。歴史|昭和|ミステリー1.6万字5 158 -
完結第19話
廃線の駅で待ち続けた父
昭和37年、源吉は毎週金曜日、15年前に列車が来なくなった青谷駅のベンチで誰かを待っていた。駅員の中村が古い記録を調べると、源吉の息子・修一は終戦後の列車事故で消息を絶っていた。 しかし修一は、事故の直前に戦災孤児の健一を助けるため列車を降りていた。源吉が本当に待っていたのは息子ではなく、「修一さんに助けられた。いつか会いに行く」と手紙を送った健一だった。 中村は30歳になった健一を探し出す。修一の家族を苦しめることを恐れ、15年間会いに行けなかった健一は、最後の金曜日に青谷駅を訪れる。源吉はその顔へ震える手を伸ばし、「修一に似ている」と静かに告げた。歴史|昭和|ミステリー2.9万字5 276 -
完結第12話
消えた姉と18年後の手紙
昭和39年、19歳の佐和子は東京の洋裁店へ働きに出るため、柳行李を上野駅へ送った。しかし本人は店に現れず、上野に届いた荷物からは財布、印鑑、戸籍関係の書類だけが消えていた。家族は、佐和子の帰りを待ち続ける。 18年後、弟の浩二は父の遺品から、姉が乗るはずだった夜行列車とは別方向の列車に印を付けた時刻表と、失踪から2か月後に届いた姉の手紙を見つける。父は、佐和子が生きていることも、自ら家を離れたことも知りながら、家族へ隠していた。 横浜で姉を見つけた浩二は、佐和子が家族のために決められた人生から逃れ、自分の道を選んだと知る。やがて佐和子は弟と列車に乗り、母の墓がある故郷へ向かう。今度は誰かに決められた旅ではなく、自分の意思で選んだ帰郷だった。時代|歴史|昭和|ミステリー1.7万字5 381