"43番の帰還" 第3話
と刻まれた真鍮のタグが置かれていた。
美咲は急がなかった。
彩佳が言葉を選ぶを待った。
蛍灯のい音だけが、部のに響いていた。
やがて彩佳は、ゆっくりをいた。
「話してはいけないと言われていました」
その声はかれていたが、確かながあった。
美咲は静かに尋ねた。
「誰に?」
彩佳はしを置いた。唇を閉じ、線を机ののタグに落としたまま、い声で続けた。
「全になるまではをくな。ぬまで待て、と」
美咲は息をえた。
「そのの名は?」
彩佳はすぐには答えなかった。けれど、やがてさく、しかしはっきりと言った。
「」
美咲の胸が凍りついた。
。
9、事件の関係者として度だけ名が浮かびがった物だった。だが正式に容疑者として追及されたわけではなく、記録のでも曖昧なまま残されていた。
しかもは5、野の奥で起きた事でしたとされていた。焼け跡から元の遺体が見つかり、そばに残っていた腕計と靴からと判断されたのだ。
だが、今、彩佳はその名を告げた。
「は、あなたに何をしたの?」
美咲が尋ねると、彩佳は机ののタグに指を置いた。
「これは、その証拠です」
「43という数字のこと?」
彩佳は頷いた。
「私は43番でした」
その言葉を聞いた美咲は、喉の奥が締まるのをじた。
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「にも……いたの?」
彩佳は線をげなかった。
「いました」
で話を聞いていた刑事たちも、息をんだ。
彩佳はではなく、番号で扱われていた。
それは迷子や単独の誘拐ではなかった。何らかの仕組みので管理されていた能性を示していた。
廊にいた恵子にも、その言葉は伝わった。彼女は再び泣き崩れた。自分の娘が、名ではなく数字で呼ばれていた事実を、母として受け止めるにはあまりにも残酷だった。
美咲は慎に聞いた。
「43番のやにも、誰かいたのね」
彩佳はさく首をかした。
「42も、44も……いました」
それ以、彩佳は語らなかった。
だが、い告だけで分だった。
9の空は、単なる失踪ではなかった。計画な誘拐と監禁、そして複数の子どもたちのを示していた。
さらにその背には、んだはずののがあった。
会議では捜査員たちが資料を広げ直した。の記録、5の災、方者の覧、古い捜索メモ。そのすべてが再びを持ち始めた。
淳也は顔をこわばらせた。
「そんなはずはありません。はんでいるんです」
直美は静かに首を振った。
「んでいるかどうかではなく、彩佳さんにとって、そのが現実だったということがです」
美咲はタグを見つめた。
43。
その数字は、ただの属片ではなかった。
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9に閉じたとわれていた扉を、再びく鍵だった。
美咲は胸の奥で確信していた。
彩佳の帰還は、終わりではない。
始まりに過ぎないのだと。
彩佳の「43番」という証言によって、事件の性質は変した。
警察は、9の捜査資料を最初から洗い直した。特に、彩佳の庭周辺に見落としがなかったかを再確認する必があった。
その夜、数の刑事が恵子の自宅を訪れた。
恵子は玄関で青ざめた顔をしていた。
「もう何も残っていないはずです」
彼女はそう繰り返した。
だが警察は止まらなかった。の、物置、庭、ガレージ。ひとつずつ確認していった。
ガレージに入った刑事が、の角でを止めた。
古いカーペットが敷かれている。そのに、自然な段差があった。
カーペットをめくると、さな扉が現れた。錆びた京錠がかけられている。けられていないように見えたが、そこにあること自体が異様だった。
具で錠を切断すると、湿った空気がからちった。
狭い階段が続いていた。
懐灯のを向けながら刑事たちがりていくと、そこにはコンクリートで囲まれた部があった。窓はない。具らしいものもない。ただ壁に、奇妙な模様が刻まれていた。
迷のように線が入り組み、そのには、円を横切る1本の線が描かれていた。
さらにの隅には、数字が彫られていた。
「45」
刑事たちは黙り込んだ。
彩佳が持っていたタグは43。の数字は45。そこに何らかの連続性があることはらかだった。
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