みかん小説
本棚

"900円の復活定食" 第2話

「承しました。伺います」

俺は具袋をに取り、エレベーターへ向かった。8階にがる、腰の具が軽く揺れる。扉がくと、廊には清掃の部のドアがいくつもいていた。シーツの、タオルの束、掃除の音。満けのホテルの廊は、ちょっとした戦だ。

805号に入る。

客がの部には、まだの気配が残っている。ベッドは剥がされ、カーテンは半分き、テレビのリモコンがデスクのに置かれていた。

リモコンを取って源を押す。

画面は真っ黒のままだ。

「リモコンじゃないな」

テレビ本体の側にあるスイッチを指で探る。しゃがみ込んで確認すると、主源が切れていた。

「あ、主源切れてる」

スイッチを入れ直すと、画面がぱっとるくなった。

映った。

たったそれだけのことだが、次の客が15に入るったとうと、胸の奥がし軽くなる。客は、チェックインに見つかると気に面倒になる。客を待たせるし、フロントも慌てる。清掃に気づけたのはきい。

13

防災センターに戻るもなく、またリンさんから内線が入った。

「戸田さん、11階の部、シャワーがぬるいです」

「すぐ伺います」

俺はそのまま11階へがった。

に入り、浴のシャワー栓を確認する。サーモを最まで回して湯をすが、確かに温度のがり方がい。

広告

湯温度は央監で正常だった。となると、栓側の問題だ。

「混栓側か」

具袋をけ、ストレーナーをす。細かい垢が詰まっていた。で軽く洗い、組み直して湯をす。

今度はちゃんとい。

「これだな」

本格な交換は業者の範囲だが、この程度なら俺で済む。客が入るなら、応急でもう。

ると、リンさんがワゴンを押して通りかかった。

「戸田さん、いつもありがとです」

リンさんはし汗をかきながらも、いつもの笑顔だった。

「いえ、こちらこそ。リンさんも変ですよね、満だと」

丈夫、丈夫」

そう言って、リンさんは隣の部へ入っていった。

丈夫。

リンさんの癖だ。

分、本もちょっとどころじゃなく変なはずだ。シーツを替えて、浴を磨いて、アメニティを揃えて、忘れ物を確認して、また次の部く。満の清掃スタッフは、見ているだけで息ががりそうになる。

でも、あの「丈夫」に、こっちが助けられる。

俺も具袋を肩にかけ直し、次の確認に向かった。

14

の1件は、点検の603号だった。部に入ると、井のライトが1球切れている。るい帯だったから分かりにくいが、夜になれば客はすぐ気づく。

「次の客が入るに気づけてよかった」

を持ってきて、球を交換する。作業着の袖がし汗ばんでいた。

広告

で古い球をし、しいものをはめる。スイッチを入れると、部全体がるくなった。

は忙しい。

予定って、こういうことか。

防災センターへ戻ると、内線のランプは旦落ち着いていた。俺は子に座り、ペットボトルのんだ。昼にんだプロテインは、もう胃のどこかに消えている気がした。

それでも、まだ夜がある。

夜になれば、弁当をえばいい。

の残りを詰めた自製の弁当が、蔵庫に入っている。そううだけで、し気持ちが楽になった。

18

勤の野さんが帰り支度をしていた。ロッカーから着を取りし、防災センターの机のを軽くえる。

「戸田君、今よく働いてたね。変でしたね」

「いえ、なんとか」

「じゃ、また。何かあったら報告だけ残しといて。お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

野さんが防災センターをていく。

扉が閉まると、内の空気がし変わる。

ここからは俺1だ。

俺は蔵庫をけ、自製の弁当を取りした。昨の残りを詰めただけの簡単な弁当だが、今の俺には分ごちそうに見えた。

「レンジで温めてっと」

蓋をしずらし、子レンジに入れようとした瞬だった。

内線が鳴った。

俺は弁当を持ったまま、数秒だけ固まった。

「……マジか」

受話器を取る。

用件を聞き終えた俺は、弁当を蔵庫に戻し、具袋を持った。

夕飯はどうするか。

まあ、でいいか。

そうったのが、違いだった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: