"消えた人妻と15年の嘘" 第1話
1997911の夜、埼玉県の宅にある型スーパーの駐で、1の女性が姿を消した。
女性の名は、佐藤ゆみ。
31歳。
彼女はその夜、買い物カゴを載せたカートを押しながら、自分のへ向かって歩いていた。防犯カメラの映像には、暗い駐を横切る彼女の姿が、確かに残されていた。
いトヨタ・マークIIがまっている列へ向かい、佐藤ゆみはしで歩いていた。カートのには、今夜の材と用品が入っている。普段の買い物帰りと変わらない景だった。
だが、にづく直、彼女は突然ち止まった。
肩がわずかに揺れた。
そして、ゆっくりとろを振り返った。
まるで、誰かに名を呼ばれたかのようだった。
映像はそこで角に入った。
次に残されたのは、静まり返った駐だけだった。
佐藤ゆみは、その瞬を境に姿を消した。
の鍵はアスファルトのに落ちていた。買ったばかりの品物は、カートのに残されたままだった。のドアはいていたが、彼女の姿はどこにもなかった。
その夜、夫の佐藤健は、妻を待っていた。
埼玉内のマンションで、2は結婚して3目を迎えていた。ゆみは毎朝7に起き、朝を用し、夫が勤すると事を済ませ、夕方には笑顔で帰宅を迎える妻だった。
健にとって、ゆみは穏やかで完璧な妻だった。
広告
ただ1つだけ、奇妙な点があった。
彼女は決して過の話をしなかった。
「ねえ、子どもの頃はどんなじだったの?」
結婚してもない頃、健が何気なく尋ねたことがある。ゆみはその、台所で皿を拭いていたを止め、しだけ笑った。
「平凡でしたよ」
「ご族には、いつ会えるのかな」
「まだ難しいですね。くにんでいますので」
それ以、彼女は語らなかった。
3、健は妻の族に1度も会ったことがなかった。友も同じだった。ゆみには、過につながる関係がほとんど見えなかった。
まるで3に突然現れた物のようだった。
そのも、始まりは普段と同じだった。
曜の午7。
ゆみは買い物袋をに取り、玄関で振り返った。
「すぐにってきますね。夕飯は9に緒にべましょう」
健はテレビの方を見ながら、軽くうなずいた。
「気をつけて」
ゆみはいつものように微笑み、玄関をた。
しかし、その30分ほど、自宅の話が鳴った。
健はし議にいながら受話器を取った。
「もしもし」
話の向こうから、見らぬ男の声がした。
「佐藤ゆみはいますか?」
声はく、かすかに震えていた。
健は眉をひそめた。
「妻は今、していますが。どちら様ですか?」
数秒の沈黙があった。
「ああ……違い話だったようですね」
男はそう言うと、方に話を切った。
広告
健は受話器を置いたあと、しばらく話を見つめていた。
奇妙だった。
佐藤ゆみに話をかけてくる相など、ほとんどいないはずだった。彼女は友もおらず、族とも連絡を取っていないと言っていた。
はあった。
それでも健は、ゆみがすぐ帰ってくるとっていた。
しかし、9になっても、10になっても、彼女は帰ってこなかった。
11を過ぎた頃、健はついにをびした。
をらせ、型スーパーへ向かった。駐に入った瞬、彼は妻のを見つけた。
いマークIIは、駐スペースにまっていた。
ドアはいている。
鍵は面に落ちている。
買い物カゴはの横で倒れ、品物が散らばっていた。
「ゆみ!」
健は叫びながら駐をった。
の周りを探し、スーパーの入へ向かい、再び駐に戻った。それでも、妻の姿はどこにもなかった。
彼は震えるで警察へ通報した。
「妻がいなくなりました。違いなく誘拐されたんです」
その声は、恐怖と混乱でかすれていた。
だが、この失踪事件は、単なる誘拐では終わらなかった。
捜査がむにつれて、佐藤ゆみという女性の過には、誰もらない空があることがらかになっていく。
通報を受け、現に現れたのは警部補だった。
彼は駐に残されたと買い物カゴを見たあと、佐藤健から事を聞いた。
健は顔を失い、何度も同じ言葉を繰り返していた。
「妻は絶対に、自分からいなくなるようなではありません」
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
深淵に沈んだ家族
1998年、仙台に住む14歳の森本純平は、インフルエンザで家族旅行に行けず、玄関先で父、母、姉、妹を見送った。 黄色いホンダ・アコードは、いつものようにクラクションを2度鳴らして角を曲がった。 それが、家族を見た最後だった。 事故なのか、失踪なのか、事件なのか。答えが出ないまま20年が過ぎたある日、純平のもとに岩手県警から電話が入る。 「ご家族の車を発見した可能性があります」 見つかったのは、岩手の森の奥に開いた巨大な陥没穴。そこには、何十台もの車が墓標のように積み重ねられていた。 その中に、家族が乗っていた黄色い車があった。 さらに後部窓には、鋭いもので刻まれた一言。 「助けて」 純平の家族は、なぜこの森にたどり着いたのか。車を売った中古車店の男は、20年前に何を知っていたのか。 そして、穴の底に眠っていたのは、ひとつの家族の悲劇だけではなかった――。ミステリー|行方不明1.4萬字5 46 -
完結第11話
半月傷の弟
42歳のタクシー運転手・中村蒼太は、会社を失い、家族とも離れ、3ヶ月もの間、車中泊を続けていた。 彼には、18歳以前の記憶がない。滋賀県の国道沿いで倒れているところを発見され、身元不明のまま「中村蒼太」という仮の名前で生きてきた男だった。 そんなある朝、梅田のホテルから乗せた1人の男性が、バックミラー越しに蒼太の顔を見て表情を変える。 「23年前に、弟を失いました」 男が口にした名前は、森田優。18歳で家を出たまま戻らなかった、行方不明の弟だった。 失踪時期、滋賀での目撃情報、そして左肩に残る半月型の傷。 偶然とは思えない一致が、蒼太の失われた過去を静かに揺らし始める。 自分は本当は誰なのか。 23年前、あの日の国道で何が起きたのか。 車内で眠るしかなかった男の人生は、1人の乗客との出会いをきっかけに、思いもよらない真実へと動き出す。ミステリー|行方不明1.6萬字5 0 -
完結第7話
足柄サービスエリア失踪事件
1991 年春、東名高速足柄 SA で起きた未解決だった悲劇。 大阪へ新婚旅行に向かう途中、「トイレへ行く」と言った妻が跡形もなく消えた。 夫は毎月現場を訪ね、テレビの人探し番組にも出演し、私立探偵まで雇い 11 年待ち続けた。 時が流れ老朽化した SA の改修工事で、ロッカーの隙間から古い財布が出土。 進化した科学捜査が財布から犯人の指紋を検出し、長年隠されていた殺人の事実が白日の下に晒される。 一方的な執着は愛ではない、拒絶を受け入れられない歪んだ欲望が一人の女性の人生を奪った実話。真相|遺體発見|行方不明1.1萬字5 7376 -
完結第11話
雪に閉ざされた 6 人の高校山岳部
「5 人が帰って来ないんだ…」 一人テントで待ち続けた少年の叫びが吹雪に飲まれる。 計画書を偽り、顧問の許可なしで冬山へ踏み込んだ 6 人の高校生。 予期せぬホワイトアウト、装備不足、分断された仲間たち。 凍てつく岩木山で繰り広げられた、冷たく残酷な 6 人の冬山物語。 生き残った二人が一生抱え続ける後悔と、4 人の少年たちの最後の足跡。 60 年経った今も遺族が山を見上げて涙する、実録山岳遭難ノンフィクション。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.7萬字5 1379 -
完結第12話
世田谷一家殺害事件:隠された真実
昭和から平成を跨ぎ、25 年も国民の心に重くのしかかった世田谷一家惨殺事件。 長年流れていた外国人犯・国際組織の説は、すべて犯人が仕掛けた壮大な罠だった。 今回、長年閉ざされていた目撃証言、パソコンに残る夫婦の秘密相談記録、最新 DNA 鑑定の結果が一斉に明らかに。 地域で穏やかな人物として知られた隣人が、なぜ一家四人を惨殺するに至ったのか。 先祖から背負わされた重い十字架、古き因縁、一家が踏み込んでしまった禁忌の領域 —— 邸宅の壁に刻まれた 25 年分の悲しみと真実、一語一句逃さずお伝えします。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.8萬字5 454