"お年玉泥棒の末路" 第8話
キティちゃん好きだったことにも驚きましたが、問題はそこではありません。
文さんはりを抑えた声で言いました。
「とにかく、綾音のお玉は返してもらうわ」
そう言って話を切ると、すぐ玄関へ向かいました。
「私もく。お玉返してもらう。残ってたらゼリーとプリンも」
綾音が追いかけました。
「ちょっと待って。私もきます」
病みがりの文さんと綾音だけでかせるわけにはいきません。
ちょうどその、修司さんが仕事から帰ってきました。
私が簡単に経緯を説すると、修司さんはきなため息をつきました。
「はあ……とんでもないな。本当にいい加減にしろってじだ」
そんなわけで、修司さんにをしてもらい、族総で美佐子さんのマンションへ向かうことになりました。
のは、誰もきな声をしませんでした。
でも、全員がっているのは分かりました。
綾音は唇を尖らせていました。
「お玉、返してもらう」
そのさな声に、私はうなずきました。
美佐子さんのマンションに着くと、修司さんがドアチャイムを鳴らしました。
しばらくして、ドアがきました。
美佐子さんは嫌そうな顔をしていました。
「何なのよ。なんで全員で来るの? おかしいんじゃないの?」
文さんが歩にました。
「おかしいのは美佐子、あなたよ」
広告
いつもの穏やかな声ではありませんでした。
「お玉を返しなさい。それから、緒にあったい封筒も持っていったでしょう」
美佐子さんは、周囲を気にするように廊を見ました。
「ちょっときい声さないでよ。のに何かとわれるじゃない」
そう言いながら、しぶしぶ私たちを部のへ入れました。
その部を見た瞬、私はわず息を止めました。
控えめに言って、ゴミ敷歩でした。
おそらく1LDKの部だといます。けれどはほとんど見えません。コンビニ弁当の空き容器、カップ麺の容器、ビールの空き缶、脱ぎ散らかした、雑誌、段ボール。
どこにを置けばいいのか分からないほどでした。
綾音が率直に言いました。
「うわあ……」
美佐子さんは顔を赤くしてりました。
「うるさいわね。私は忙しいのよ」
忙しいからといって、ここまで散らかるものなのでしょうか。
美佐子さんは、ゴミののような物のをかき分け、し折れ目のついたキティちゃんのポチ袋を見つけました。さらに、醤油のシミがついたい封筒も見つけし、文さんに押し付けるように返してきました。
文さんはそれを受け取り、きくため息をつきました。
そして綾音に言いました。
「帰ったら、しいポチ袋に入れて渡すわね」
綾音は満そうでしたが、こくりとうなずきました。
広告
文さんはい封筒のを取りしました。
「これね、本当は元の夜に直美さんに渡すつもりだったの」
そう言って、私に見せてくれました。
それは、きの招待状でした。
『直美さんへ。しいけれど、お誕のお祝いに、みんなでお事しましょう。18、曜18、リストランテ・アルベロにて』
私の誕は110です。
文さんは、もってイタリアンレストランを予約して、私の誕パーティーを企画してくれていたのです。
私は胸が詰まりました。
お正々に入院してしまった文さんが、そんなことまで考えてくれていたなんて。
文さんは静かに言いました。
「この『みんなで』っていうのは、直美さんと修司、それから綾音と私よ。美佐子、あんたのことじゃない」
美佐子さんは目を丸くしました。
「え、そうなの? ひどい。私だって族でしょ」
その言葉に、文さんの表が気に険しくなりました。
「留守のにがり込んで、孫にあげるお玉を勝に持っていくようなは、族じゃありません」
私は、文さんがここまでるのを初めて見ました。
綾音も、まっすぐ美佐子さんを見て言いました。
「おばさん、おばあちゃんのお見いにも来なかったじゃない。族だったら普通来るでしょ」
本当に正論でした。
その、私はふと、ハムのことをいしました。
「それに、お母さんのあたり。末にお姉さんが持ってきたハムが原因だといます」
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
三年前に署名させた離婚届
「息子は金髪美女と再婚するのよ」――玄関先で勝ち誇る義母が突きつけてきたのは、一方的な離婚届だった。大手商社勤務の夫に裏切られ、三ヶ月の海外出張中にも不貞の影に苦しめられていた妻のナナ。だが、見下され続けた妻は取り乱すどころか、冷ややかに微笑んだ。義母も夫も知らなかったのだ。三年前に署名させた一枚の用紙と、水面下で集められた決定的な証拠の存在を。鳴り止まない何十件もの着信を前に、彼女は静かに告げる。「離婚届なら、とっくに提出済みですよ」嫁姑|夫婦2.0万字5 142 -
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 347 -
完結第10話
義母に突き落とされたので、離婚します
十九年間、義母の虐待と夫の無関心に耐えてきたさつき。妊娠中、義母に階段から突き落とされ重傷を負うが、夫は愛人と過ごし、彼女の訴えを切り捨てる。 病室でさつきが残したのは、離婚届と「あなたが守らなかったものを、私は守ります」の一文。元刑事の父と証拠を集め、義母を実刑へ、夫を失職と離婚へ追い込む。因果応報|怒り|嫁姑|修羅場1.4万字5 1139 -
完結第12話
空港に置き去りにされた妻は、もう帰らない
欧州出張から帰国したゆりを、夫と義母は成田空港へ置き去りにした。「四時間歩いて来い」と笑いながら、彼女を貧しいラーメン屋の娘だと見下して。 彼女は、夫の不倫や会社資金四千八百万円の横領を示す証拠を、すでに揃えていた。 空港から一本の電話をかけた三時間後、取引停止が相次ぎ、夫の会社は大混乱に陥る。嫁姑|夫婦|修羅場1.8万字5 844 -
完結第13話
母の遺品と千万円の組紐
「これをどこで手に入れたんですか?」――家賃三ヶ月を滞納し、退去通告を突きつけられた三十九歳のシングルファーザー・大輔。六歳の娘を抱えて困窮する彼は、七十歳で逝った母の遺品である反物と組紐を売ろうとするが、店員に数百円のゴミ扱いされる。だが路地裏の老舗呉服店へ持ち込んだ瞬間、女主人は青ざめ指を震わせた。生前「古臭い」と見下していた母の手仕事。仏壇の奥から見つかった桐箱と、三十年分の手帳に記された数千万円に及ぶ謎の記録。母は何者だったのか? 箱の底に残された「困った時の支えにしなさい」というメモの真意とは――。親子関係|金銭問題1.9万字5 146 -
完結第20話
愛人と帰国した夫、30分の猶予
「この後彼女が来るから早く出て行けよ」 南の島から愛人と帰国した夫と義母は、日焼けした顔で私に吐き捨てた。十六年間、生活費を一銭も入れず寄生してきた挙句、亡き両親が遺した百坪の豪邸を乗っ取り、私を追い出す算段だ。届いた内容証明郵便を「慰謝料の小切手」と勘違いし、ハイタッチで完全勝利を確信する二人。 だが、愚かな親子はまだ知らない。十六歳の息子が密かに仕掛けたボイスレコーダーと、十五年前のベビーモニターが捉えた戦慄の記録を。そして、迎えに来た黒塗りの高級車の正体を。 「あと三十分後に消えます、ご安心を」 私が冷たく微笑んだその時、玄関のインターホンが鳴り響いた――。嫁姑|夫婦3.0万字5 305 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 1048 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 163 -
完結第20話
月30万円の親孝行は、誰の財布から?
夫から突然告げられた、義母への「毎月三十万円」の仕送り。妻・美奈子は反対せず、静かに「いいよ」と答えた。 三日後、銀行で残高四万円を知らされた夫は激怒する。だが美奈子は、二十二年間で家計へ補填した一千二百万円超の記録を並べ、「その三十万円、誰の収入から出すつもりだったの?」と問い返す。嫁姑|夫婦|介護|金銭問題2.8万字5 753 -
完結第15話
白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました
年度末の仕事を終えて帰宅した麻子を待っていたのは、冷めた白米だけの夕食。夫と義母は特上寿司を食べながら、「反省したらおかずを出す」と笑った。 「外で牛丼でも食べてきたら?」という夫に、麻子は静かに「分かりました」と答える。しかし彼女は半年前から新居や弁護士の手配を進め、大切な荷物も運び終えていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 642