"夫と義姉の忌まわしい一夜" 第11話
私は休憩のソファで仮眠を取った、何ごともない顔で夜勤の引き継ぎ業務をこなしていた。
「佐藤さん、昨夜は変でしたね。もう体は丈夫なんですか?」勤の護師が配そうに声をかけてくる。
昨夜の来事はすでに院内に広まっているようだった。同と好奇、しの軽蔑が入り混じった線が私の背に突き刺さる。
「お配をおかけしました。もう丈夫です。」私はいつも通りの静な笑みを浮かべて答えた。
私のあまりに平然とした態度に護師はし戸惑ったような顔をしたがそれ以は何も聞いてこなかった。
引き継ぎを終え私はタヤと霊子が入院している病へと向かった。2 は術の経過観察のため隣りった部に入れられていた。
という名目だが、実質にはの患者から隔するため、そして病院側の監に置くための措置だった。
まずタヤの部のドアをノックする。
「どうぞ。」から々しい声が返ってきた。
部に入るとタヤはベッドので半を起こしていた。顔は気で目のにはいくまが刻まれている。
私を目見ると気まずそうに、そして怯えるように線をそらした。
「体の調子はどうですか?痛みは?」私はを切廃した事務な調で尋ねる。
「ああ、痛みは薬が効いているからなんとか…」
広告
タヤはぼそぼそと答える。
術は成功したものの、彼の男性としての能が今どうなるかはまだ誰にも分からなかった。そのが彼の表をさらに暗くしている。
「何か必なものはありますか?」
「いや、ない。」気まずい沈黙が部に流れる。タヤは何度も何かを言いかけてはをつぐむ。謝罪の言葉を探しているのかもしれない。あるいは言い訳を考えているのか。
だが私は彼にそんな隙を与えなかった。
「そうですか。では失礼します。」私は彼のを探るようなことは切せず、背を向けて部をようとした。
そのたい態度にタヤはたまらなくなったのだろう。
「ま、待ってくれ。みさ。」背から必の声がんできた。
私はドアの取っにをかけたまま振り返らずにち止まる。
「あのことは本当にすまなかったとっている。俺がどうかしていたんだ。」ようやく絞りした謝罪の言葉だがその声にはまだどこか自己弁護の響きがあった。
「霊子とはそのただの来事、事故みたいなものなんだ。信じてくれ。」
事故。彼はそう言った。にわたる裏切りをただの事故という言で片付けようとしている。
私のの奥で黒い炎が静かに揺らめいた。だが私はまだその炎を顔にはさない。
「今は治療に専してください。」それだけを言い残し、私はタヤの部をにした。
広告
ドアが閉まる直、ベッドので彼が絶望な表でを仰ぐのが見えた。
次に霊子の部へ向かう。彼女はまだ麻酔の響が残っているのかい眠りに落ちていた。その寝顔は普段の棘々しさが嘘のように穏やかですらあった。
だがその腹部には々しい術の跡が刻まれている。私は彼女のバイタルをチェックし、点滴の落ちる速度を調する。
その霊子のベッドサイドテーブルに見慣れないものが置かれているのに気づいた。それは義母の里子が持ってきたのだろう。さな瓶に挿けられた輪のカーネーションだった。
おそらく娘の無事を祈ってのことだろう。私はそのカーネーションを無表で眺めた。
そしてポケットからこっそりと持ち込んでいたさなハサミを取りした。清潔な病で私はそのカーネーションのびらを 1 枚また 1 枚と静かに切り落としていく。
美しかったは見るも無惨な姿に変わっていく。最に残った茎だけの無様な姿。それを私はまるで何事もなかったかのように再び瓶に戻した。誰も気づかないだろう。
さやかで、しかし残酷な復讐。霊子が目を覚ました、この無惨なの残骸を見て何をうだろうか。それはこれから彼女が辿る未来の姿そのものなのだとる由もない。
全ての準備を終え私は病院をにした。朝のが夜けに眩しくじた。私のスマートフォンがポケットのでひっきりなしに震えている。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
隠し子を知っていた55歳妻
結婚30年。55歳の律子は、61歳の夫・正典から突然「好きな人がいる」と告げられる。相手は34歳の女性。そして2人の間には、3歳の男の子までいた。しかし律子は驚かなかった。「れん君でしょう? 1年前から知っていました」。夫の顔から血の気が引く。離婚届を差し出されても、律子は微笑んで「離婚しません」と拒否した。夫への愛が残っていたからではない。この1年間、弁護士への相談、財産や年金の確認、仕事探しまで、誰にも知られず自分の人生を立て直す準備をしていたからだ。30年間、自分の人生を夫の都合で決められてきた妻は、最後の別れの日だけは自分で選ぶと決めていた――夫婦|不倫1.4万字5 205 -
完結第13話
離婚後に生まれた息子
10年間の不妊治療の末、「子供もできなかった」と姑に責められ、夫・健一から離婚を告げられた38歳の由美。ところが離婚から2週間後、最後に受けた治療が実っていたことが判明する。由美は悩んだ末、元夫には知らせず、実家で1人の男の子を出産した。それから1か月。離婚から10か月後のある日、玄関に現れたのは健一と、彼が再婚する28歳の美香だった。「来月、結婚式をするんだ」と招待状を差し出そうとした健一。しかし、由美の腕に抱かれた赤ん坊を見た瞬間、その笑顔が消える。「その子……まさか俺の?」。10年間「子供を産めない妻」と責められ続けた由美の人生が、そこから大きく動き始める。夫婦|真相|修羅場2.0万字5 3748 -
完結第13話
閉じ込められた臨月の妻
妊娠38週、予定日まであと12日の加奈。夫が海外出張へ出た2日後、突然訪ねてきた義両親は「様子を見に来た」と言いながら、家事や学歴を責め続けた。そして義母に促され、家庭用サウナの中を確認しようと入った瞬間、背後で扉が閉まる。外側には南京錠。スマートフォンまで奪われた。「私たちから息子を奪った罰よ」。そう言い残し、義両親は5泊7日の温泉旅行へ出発した。水もなく、いつ陣痛が始まってもおかしくない密室。しかし加奈には、義両親が知らないことがあった。このサウナは、かつて一級建築士だった加奈自身が安全設計に関わった機種だった――。嫁姑|親子関係|修羅場2.0万字5 742 -
完結第12話
娘の結婚式で夫は愛人を新しい妻と紹介した
52歳の由美は、27年間連れ添った夫・剣一との夫婦関係がすでに壊れていることを知りながら、一人娘・美穂の結婚式までは何も起こさないと決めていた。ところが披露宴の最中、剣一は180人の招待客を前に、34歳の愛人・理香を「これからの妻になる人です」と紹介する。会場が凍りつき、娘が青ざめる中、由美は怒鳴りも泣きもせず、静かに立ち上がって拍手した。「あなたの本性を、私が説明する手間が省けました」。すると突然、新郎の父・誠が由美の前まで歩み寄り、深く頭を下げる。「これまで、本当によく耐えてこられました」。そして彼が口にした「準備はできています」という一言に、夫の表情が変わった――。人生逆転|不倫|熟年離婚1.8万字5 1136 -
完結第10話
ブラックカードを止めた10分後
結婚5年目、38歳の小百合は夫・拓也から離婚を突きつけられた。拓也が選んだのは、35歳の女医・玲子。「5年間も専業主婦で楽できたんだから十分だ」「これからは自分で稼げ」と笑う夫と義家族は、小百合を“1円も稼げない女”だと思い込んでいた。離婚届に判を押したその日、拓也は玲子を連れて両親との祝いの席へ向かう。小百合は何も言い返さず、玄関が閉まってから10分後、カード会社へ1本の電話をかけた。「家族カード3枚、すべて利用停止にしてください」。その夜、高級レストランで45万8000円の会計を前に、拓也一家が初めて知ることになる。自分たちが当然のように使っていた“豊かな生活”は、いったい誰のお金で成り立っていたのか――。人生逆転|夫婦|不倫1.5万字5 1782 -
完結第12話
面接官の誤算
夢だった大手企業の最終面接。 24歳の小館達郎は、人事の仕事に憧れ、努力を重ねてようやく最終面接までたどり着いた。だが、中央に座っていた人事部長は、彼の学歴や家庭環境を見下し、面接の途中で冷たく言い放つ。 「低学歴の貧乏人は、面接する必要なし。不採用で決まりだな」 母子家庭で育ち、必死に支えてくれた母への思いまで踏みにじられた達郎。悔しさをこらえながらも、彼はその場で言い返さず、静かに会社を後にした。 しかし1か月後、達郎は再び同じ会社へ呼び出される。 案内されたのは、あの日と同じビルの役員会議室。そこには人事部長の佐野、社長、そして達郎のよく知る一人の男が座っていた。 達郎の姿を見た瞬間、佐野の顔色が変わる。 あの日の「不採用」は、ただの終わりではなかった。 一人の応募者を見下した面接官が、会社全体に隠されていた問題を暴き出すきっかけになる――。真実|修羅場1.8万字5 472 -
完結第10話
父の葬儀の日_夫は愛人を車に乗せて去った
48歳の由美は、3年間ほぼ1人で父を介護し、78歳の父を見送った。ところが葬儀の帰り、20年連れ添った夫・浩司は、愛人と思われる女性を助手席に乗せたまま、喪服姿の由美を雨の駅前で車から降ろす。「俺だって1日付き合って疲れてるんだ」。由美は泣かず、父が亡くなる2日前に渡してくれた古い革鞄を開いた。中にあったのは、1通の手紙、弁護士の名刺、そして夫の会社に関する資料。手紙の最初には、「浩司君に、私の通帳も印鑑も渡してはいけない」と書かれていた。なぜ父は、娘の夫をそこまで警戒していたのか。由美は父が最後に残した手がかりを追い始める。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場|不倫1.5万字5 575 -
完結第6話
帰宅した夜、夫の嘘を知った
里帰り出産を終え、生後2ヶ月の息子を抱いてようやく自宅へ戻った美咲。夫・直人との3人暮らしが始まると思っていたその夜、隣人が突然玄関を叩いた。「毎晩毎晩、夜中までいい加減にしてください」。さらに「ご主人には前にも2回注意しました」と告げられ、美咲は耳を疑う。この2ヶ月、美咲は一度も家に帰っていない。では、隣人が何度も見かけた“妻らしき女性”は誰だったのか。問い詰められた直人は「会社の後輩が1度泊まっただけ」と説明するが、翌朝、隣人の証言によってその嘘も崩れ始める。出産のため家を離れていた2ヶ月間、自分の家庭で何が起きていたのか――美咲は静かに真実を確かめ始める。嫁姑|夫婦|不倫8.8千字5 1629 -
完結第12話
花嫁が追い出した親友
幼なじみであり、仕事の相棒でもある親友・陸人の結婚式。 車椅子で生活する平井圭人は、心から親友の幸せを祝うつもりで式場へ向かった。だが、そこで待っていたのは、花嫁・美智からの冷たい拒絶だった。 「あなたがいると品格が下がる」 そう言われた圭人は、静かに式を去ろうとする。しかし美智はそれだけでなく、陸人との長年の友情まで断ち切るよう迫ってきた。 親友を困らせたくない圭人は、一度は身を引こうとする。 だが、美智は知らなかった。 目の前にいる車椅子の男が、陸人の人生を大きく変えた人物であり、さらに彼女が見下していた相手こそ、陸人が働く会社の代表だったことを。 結婚式当日、花嫁の一言から、隠されていた過去と本当の人間性が明らかになっていく――。怒り|修羅場1.9万字5 884