"見下した作業服の裏にある真実の誇り" 第10話
それに、自分の婚約者の親をドブネズミ呼ばわりできるを、私は信じることはできないわ。それにね、さっきお母さんがあなたに見せたスマートフォンの話、まだ分かっていないみたいね」
私は母が拓也に見せたスマートフォンの画面を指さした。
「私が働いていた会社、あそこの株主が誰かって話」
拓也が震えるでスマホを覗き込む。画面には私の勤める会社の株主名簿データが表示されていた。
「シノメキャピタル……」
「そう、私の務めていたメーカーはお母さんのグループ企業だったの。私はお母さんのコネなんかじゃなく、自分の力できていきたかったから、黙って試験を受けて入社したわ。でもお母さんはずっと見守ってくれていたの」
私は母の隣に歩み寄り、その油染みた作業の袖をしっかりと握った。
「お母さんは私に本物の仕事の誇りを教えてくれた。どんなにさく油にまみれた部品でも、それが誰かの全や幸せを支えている。その誇りを忘れないが番尊いんだって。あなたたちには理解できないでしょうけど」
母がようやく静かにをいた。
「帰りましょう、みさ。ここにはもう私たちの言葉が届くはいないわ」
「待て!かないでくれ、会!シノメ会!」
さんの絶叫を背に、私たちは料亭の個をにした。
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だが物語はこれで終わりではなかった。
料亭の玄関先で、私たちはあるな物と鉢わせることになる。その物こそが、この物語をスカッとさせるだけでなく、いもよらないの真実へと導く鍵を握っていたのだ。
「待って、待ってください、会、お母様!」
料亭のい廊をドタドタと乱暴な音が追いかけてくる。
振り返ると、そこには髪を振り乱しネクタイを歪ませたさんと、泣き腫らした顔で必についてくる拓也、そして未だ現実を受け入れられずブツブツと呟いている静さんの姿があった。
彼らの顔には先ほどまでの傲な余裕など微もない。あるのは全てを失う恐怖に支配された焦りだけだ。
「会、どうか、どうか考え直しを!先ほどの無礼は全て私の教育です。貿易を見捨てないでください。支援が止まれば何百の社員がに迷うんです」
さんは私の母のに回り込み、廊の真んで座をした。
「お願いします。私をクビにしても構わない、刑事告訴も甘んじて受ける。だから提携だけ、救済策だけはめてください」
「父さん、何言ってるんだよ!父さんが捕まったら僕のはどうなるんだよ!」
拓也がけない声をげ、父親の肩を揺さぶる。
「会、僕からもお願いします。みさとの結婚については僕が責任を持って……」
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「黙りなさい」
母のく、徹な言が廊に響いた。その瞬では凍りついたようにきを止めた。
母は彼らを見ろすことすらしない。ただの方をじっと見つめている。
「あなたたちは最まで自分たちのことしか考えていないのね」
母の隣で私はりを通り越し、虚しさだけをじていた。
「社員がに迷う、本気でそうっているなら、請け企業に当な圧力をかけたり、会社のを私物化したりなんてできないはずだわ」
「それは改善します。今すぐを入れ替えて……」
「いいえ、もう遅いわ」
母が静かに告げた。その、料亭のな玄関の扉がき、の男性が入ってきた。
鋭い。その物を見た瞬、さんの顔が今番の驚きで引きつった。
そこにっていたのは貿易のトップ、本社そのだった。話でさんに解雇を言い渡した本が、なぜこの料亭に現れたのか。
「本社、助けてください!シノメ会に誤解を解いてください!」
さんがすがりつこうとしたが、本社はそれをたく突き放した。
「誤解などあるものか。シノメ会、この件は私の管理とこころえている。が社の役員が会に対してこれほどの無礼を働いたこと、到底許せるものではない」
本社はさんたちので、母に向かってくをげた。
「本さん、わざわざ来なくてよかったのに」
母が今初めてしだけ表をらげた。
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