"見下した作業服の裏にある真実の誇り" 第18話
その姿にはかつての名の奥様としての気品など微もなかった。ただブランド品に執着するれな女の末だ。
その傍らでさんは力なく取り押さえられていた。
「終わった、全部終わったんだ……」
彼は虚空を見つめ、同じ言葉を繰り返している。貿易役員という積みげてきた位、隠してきた財産。その全てがたった夜にして、油まみれの作業を着たの女性の沈黙によって崩れったのだ。
「父さん、母さん、嘘だろ……」
拓也は連されていく両親を呆然と見送っていた。彼はまだ自分だけは助かるがあるのではないか、浅ましい期待を捨てきれずにいた。
「警察さん、僕は関係ありません。父さんが勝にやったことなんです。僕はただみさと結婚しようとしていただけなんです、僕は被害者なんです!」
必に警察にすがりつく拓也。しかし警察はたい目で彼を瞥しただけだった。
「君についても、会社の資横領や費用の正使用に加担していた疑いがある。でじっくり署で話を聞かせてもらうよ」
拓也はまるで自分の臓が凍りついたかのような衝撃を受けた。もなく、親もなく、何もかも失う。誰もが羨むエリートコースを歩んでいたはずの自分のが、奈落の底へ真っ逆さまに落ちていく覚。
彼は震えるでスマートフォンを取りし、最の望みをかけて私、みさに話をかけようとした。
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しかし何度呼びしても返ってくるのは無なアナウンスだけだった。
「おかけになった話番号は現着信を制限しております」
「みさ、みさ、頼む、てくれ!お願いだ、僕を捨てないでくれ!」
拓也の叫びは夜のに虚しく消えていった。私が彼を沈黙という壁で拒絶したこと、それが彼にとって最の絶望だった。
その頃私は母と佐藤さんと共に、静かにるのにいた。窓のを流れる町のかりを眺めながら、私は先ほどの佐藤さんの言葉を反芻していた。き父の遺言の話。
佐藤さんはハンドルを握ったまま、バックミラー越しに私に微笑んだ。
「ええ、お父さんは自分がいなくなっても、正子会で会社をきくし、みさお嬢さんが派に成することを確信していました。でもつだけ配していたことがあったんです」
母が私のを優しく握りしめた。
「お父さんはね、シノメという名や、私たちの財産に群がってくる悪いからあなたを守りたかったのよ」
「どういうこと?」
「お父さんの遺言にはこう記されていたんです。『みさがもし結婚を決めたなら、相の族にあえて々の原点である作業姿を見せなさい。もしその姿を見げ、みさのを軽んじるようなであれば、その者たちを徹底に排除し、みさをそのから救いしなさい』とね」
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私は息を呑んだ。あの顔わせの席、母が作業で現れたのは単なる仕事の遅れだけではなかったのだ。それはき父が残した、私を守るための究極の守り策だったのだ。
「お父さん、そこまで考えてくれていたのね……」
目がくなる。父のはくなってから以経った今でも、私を包み込んでくれていた。
「そしてね、みさお嬢さん、遺言にはまだ続きがある」
佐藤さんの声がしだけ真剣な響きを帯びた。
「お父さんは、その試しに格しなかった者がもしみさお嬢さんを傷つけ、々の誇りを侮辱したには、私が管理している基を即座に凍結し、相側の関連企業を法に徹底調査するよう指示していたんです」
「それって…… だから貿易の正がこれほどく暴かれたのは、お父さんがに仕掛けておいたいわばを、さんたちが自ら踏み抜いたからなんです。シノメグループはかけて、貿易のような腐敗した企業の証拠を集めていました。今のあの顔わせが、その実のきっかけになったというわけです」
「なんてことだろう……」
敵は私が選んだ結婚相の族だった。しかし彼らは私自をしていたのではなく、私の背にある財力と位を欲しがっていた。父はその本質を以も見越していたのだ。
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