"排水路の腕時計" 第2話
顔を失い、声は震えていた。
「夫がトイレに入ったまま戻らないんです。どこにもいないんです」
管理と職員たちは、最初は困惑した様子だった。の男性がし姿を消しただけだとったのかもしれない。けれど、恵子の必な様子を見て、すぐに施設内を探し始めた。
トイレ、売、堂、駐、喫煙所、建物の裏。
しかし、健の姿はどこにもなかった。
午240分。
最寄りの駐所に正式な通報が入った。
平凡な族旅は、その瞬、失踪事件へと変わった。
トイレに入った男は、どうして空気のように消えたのか。
その答えをる者は、誰もいなかった。
通報からおよそ30分、警察官2名が青サービスエリアに到着した。
恵子は売のベンチに座っていた。娘はを向いたまま黙り込み、息子は母の袖を握っていた。恵子は警察官に、夫がトイレにってから戻らないことを何度も説した。
「夫は自分からいなくなるようなではありません。の鍵も私が持っています。財布も、荷物も、のに残っています」
警察官はメモを取りながら頷いた。まずは施設内の確認がわれた。男性トイレの個、清掃用具置き、売の裏、堂の厨付、駐の両の、建物の裏の茂み。
しかし、健の姿はなかった。
午4。
所轄署の域課が現に入り、層部へ報告した。
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単なる迷子やな方ではない能性があると判断された。
午530分、正式な捜索本部が設置された。
警察官15名が投入され、半径500m圏内の捜索が始された。裏、脇の茂み、排溝、駐の、サービスエリアの周。懐灯をにした警察官たちが、夕のをくまなく調べた。
が暮れると、照も投入された。いが建物の裏や雑林を照らし、警察官の音が枯れ葉を踏みしめた。
恵子は事務所ので待っていた。子どもたちは隣の子に座っていたが、息子は何度も入を見た。
「お父さん、迷ってるだけだよね」
その声に、恵子はすぐに答えられなかった。
「そうね。きっとすぐ見つかるわ」
そう言いながらも、恵子のは震えていた。
夜10まで続いた捜索の結果は、何もなかった。
靴も、も、結婚指輪も、持ち物も、血痕も、争った跡も、どれ1つ見つからなかった。
翌朝8、捜索は再された。
警察犬が投入され、健のの匂いを追った。恵子はの夜に持ってきた夫の着を警察に渡した。犬はしばらく面の匂いを嗅ぎながらんだが、男性トイレの入り付でち止まった。
訓練士が何度か促したが、犬はそれ以もうとしなかった。
「臭いがここで途切れています」
その言葉は、現にいた誰のにも気に響いた。
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トイレに入ったはずの男の匂いが、トイレので途切れている。
では、その先へはどうやってったのか。
捜索範囲は1km、2kmと広げられた。、空き、農、川、周辺の雑林。3にわたり、のべ80以の警察官が員された。
それでも、何も得られなかった。
失踪を探る調査も始まった。
借はなかった。庭も確認されなかった。職トラブルもなかった。座もカードもつかずだった。健が自ら姿を消す理由は、どこにも見つからなかった。
誘拐の線も検討された。
しかし、代求は来なかった。目撃報もなかった。族への脅迫もない。事件としても、失踪としても、あまりにがかりがなかった。
1週が経過しても、事件はまったく展しなかった。
警察は公捜査を始し、全国から報提供を呼びかけた。健の写真、、装、最に確認された所が報された。
けれど、力な反応はなかった。
健は、まるでこの世から蒸発したように消えていた。
捜査班は、施設内の記録に焦点を当てた。
当、青サービスエリアには防犯カメラが4台しかなかった。駐入、売レジ、堂入、そして建物裏。映像はVHSテープで保され、画質は荒く、顔の判別は難しかった。
駐カメラには、佐藤のグレーのクラウンが午112分に入する姿が映っていた。
4がりる様子も確認できたが、映像が粗すぎて表までは分からなかった。
売カメラには、子どもたちがみ物を買う姿がわずかに映っていた。
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