"残高4800円の老後" 第2話
そこには、妻の字と藤原自の字が混ざった表がかれていた。線はし曲がっていたが、項目は細かかった。
活費の座。
をつけない座。
の修繕用。
医療費の予備。
そして、13万円ので毎どうやりくりするかを示した表。
藤原は指でつずつなぞりながら言った。
「退職は老の命綱だからな。活費の財布にしたら終わりだって、嫁さんが言うんだ。13万円ので、まず暮らす形を作る。りない分を毎退職からしていたら、ったよりくなくなるって」
哲夫は苦笑した。
「お、相変わらず細かいな。なんとかなるさ。2200万円もあるんだから」
藤原は顔をげ、哲夫を見た。
何か言いたそうだった。
だが、そのではそれ以言わなかった。
哲夫は員を呼び、本酒を追加した。
「ここは俺が持つよ。退職祝いだ」
「割り勘でいいって」
「いいんだよ。38緒にやってきたんだ。最くらい持たせろ」
会計は2万8600円だった。
哲夫はレシートを受け取ると、内容も見ずにポケットへくしゃっと突っ込んだ。
藤原はその作を見ていた。
けれど、何も言わなかった。
哲夫にとっては、その夜の会計も“普通”だった。
退職のに同期とむ。
しいを選ぶ。
会計を自分が持つ。
それは38働いた男として、当たりの見栄であり、当たりの付きいだった。
に帰ると、せつ子はまだ起きていた。
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「遅かったのね」
「藤原とんでた。久しぶりにうまい酒だったよ」
哲夫は嫌で着を脱ぎ、子にかけた。
せつ子は何か言いかけたが、夫の顔を見て言葉をみ込んだ。
退職初からおの話をすれば、また嫌な顔をされる。
そうったのだ。
その夜、哲夫はぐっすり眠った。
せつ子は寝の暗い灯りので、計簿ノートをいていた。退職2200万円という数字をき、そのに13万円と記した。
そして、しばらく鉛を持ったままを止めた。
数字のでは、とは言い切れなかった。
だが、夫と同じテーブルに座って話しうには、まだが必だとった。
その判断が、に何度も彼女を苦しめることになる。
退職から1が過ぎる頃、宮田の費は25万円になっていた。
は13万円。
差額の12万円ほどが、毎退職の座から補填されていた。
哲夫は、そのことを刻には受け止めていなかった。
卓に並ぶ事は、退職ときく変わらない。もそのまま。所づきあいも、会社のOB会も続いている。何か特別な浪費をしているつもりはなかった。
ある、リビングで哲夫が封筒をけた。
「検18万円だって」
せつ子は台所から振り返った。
「18万円ね……あなた、このもう12でしょう」
「まあな」
「軽自に変えたら、税も検もかなりがるのよ。
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古なら50万円くらいでも探せるし」
哲夫は眉をひそめた。
「軽は勘弁してくれよ」
せつ子はを止めた。
「どうして?」
「所の田さんにも『いいですね』って言われたばかりなんだ。急に軽なんか乗っていたら、恥ずかしいだろう」
「恥ずかしいって、誰に対して恥ずかしいの?」
哲夫は封筒を畳んだ。
「の話はまた今度な」
それ以、会話は続かなかった。
せつ子は見積を黙って蔵庫の横のクリップに挟んだ。そこには、気代、代、固定資産税、保険料の通がすでに5枚並んでいた。
クリップは、そうにを支えていた。
3ヶの曜、息子の也が孫の蓮を連れて実に来た。嫁の美咲は来ていなかった。
せつ子は玄関で2を迎えながら、胸の奥にさな予を覚えた。
息子が嫁を連れてくるは、族で遊びに来た。
息子だけで来るは、たいてい何か話がある。
昼にカレーをすと、蓮は嬉しそうにスプーンをかした。
「ばあば、カレーおいしい」
「よかったわね。おかわりする?」
「する」
せつ子が台所へ向かおうとした、哲夫が也を見た。
「也、蓮がべているに本題を言え」
也はスプーンを置き、テーブルに線を落とした。
の親指での甲を何度もこすっている。
子どもの頃から、緊張したにる癖だった。
「マンションを買いたいんだ」
哲夫はし背筋を伸ばした。
「ほう」
「蓮が来学だろ。今のアパートだと学区が微妙で、美咲とずっと話してて。
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