みかん小説
本棚

"残高4800円の老後" 第4話

1ヶ、せつ子が物置を掃除していると、棚の奥からホームセンターの袋がてきた。

には、ワックスのボトルが5本。

1本もいていない。

スポンジもクロスもビニール袋に入ったまま。

底にはレシートが残っていた。

8500円。

せつ子は、しばらくけなかった。

ボトルのラベルには、哲夫が引いた赤線がそのまま残っている。

順を読んだだけで、1度も試していなかったのだ。

その夜、哲夫はリビングで話をしていた。

「ああ、OB会の幹事? いいよ、俺がやるよ。はあの個のところでいいか。え? 会費5000円? もうちょっとそうよ。7000円にして、ちゃんとした本酒をした方がばれるだろう」

せつ子は台所で皿を洗いながら聞いていた。

「来さん退職だろ。束と記品、俺が見繕っておくから。替え? いいよ、で精算すれば」

で精算すればいい。

その“で”が来ないことを、せつ子はっていた。

回のOB会の替え分、2万3000円もまだ戻っていない。

せつ子は計簿に赤字でいた。

OB会替え未回収。

哲夫はその赤字を見たことがなかった。

せつ子が蔵庫横のクリップにしい請求を挟むと、クリップはもうを支えきれないほど膨らんでいた。

ゴルフがに約2万5000円。

のコーティングや部品代がに約10万円。

OB会の幹事を引き受けるたび、2万円、3万円の替えが戻ってこない。

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元とお歳暮でに約8万円。

にすれば、70万円から80万円。

哲夫にとっては、どれも“普通の費”だった。

だがその普通が、退職さな穴をけ続けていた。

退職から3目。

物価ががり始めた。

ある、せつ子はスーパーで買い物をしていた。カゴのには、もやし1袋、豆腐1丁、鶏肉1パック。いつもの材ばかりだった。

卵売りで、彼女のが止まった。

卵1パック348円。

は198円だった。

せつ子は、198円だった頃の値札をまだ覚えていた。何曜くなるか、どのいか、に入っていた。

れた売りから、哲夫がカートを押して戻ってきた。

そのカートのには、刺の盛りわせ1280円が入っていた。

「せつ子、卵まだか?」

「あなた、卵がいくらかってる?」

「卵? 200円くらいだろう」

せつ子は348円の卵をカゴに入れた。

哲夫のカートの刺には何も言わなかった。

もう言っても仕方がないとい始めていた。

に戻ると、リビングのテーブルには封筒が6通並んでいた。せつ子が1通ずつけていく。哲夫はソファでテレビを見ていた。

「あなた」

「ん?」

「こっちを見てほしいの」

哲夫は渋々テレビの音をげた。

せつ子は請求を並べた。

「先気代、2万8000円」

いな」

は1万5000円だった。固定資産税は額で8万円がってる。代、ガス代、保険料もある」

せつ子はを指で押さえながら続けた。

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「あなたの13万円から、ここに並んでいる分を引くわよ。税、保険、気、ガス、を引いたら、残りが8000円」

哲夫は眉をひそめた。

「8000円?」

「8000円で、1ヶ費と用品をまかなえるとう?」

哲夫は答えなかった。

「まかなえないのよ。だから毎、退職から12万円、15万円、は18万円、私がATMでろしている」

せつ子は通帳をした。

「あなたのが振り込まれる座じゃない。退職座から」

哲夫は気代の請求を1枚に取った。

数字を見たあと、すぐ裏返した。

見たくないのか。

見てもが分からないのか。

せつ子には、どちらなのか分からなかった。

「あなた、通帳を見てる?」

「見てるよ」

「じゃあ、今いくらか言える?」

哲夫は黙った。

しばらくして、いつもの言葉をにした。

「なんとかなるさ」

なんとかなるさ。

これまで何度も聞いてきた言葉だった。

けれど、その夜初めて、その言葉に自信がないことを、せつ子はじた。

別の、2階の寝でせつ子は布団を敷いていた。

井の隅に、シミが広がっている。湿った跡の周りには、うっすらカビも見え始めていた。

には、そこからが落ちる。

せつ子はシミのに洗面器を置いていた。もう3ヶも、その活が続いていた。

「あなた、2階の井、見た?」

、せつ子はリビングで言った。

「ああ、漏りだろ。梅ければ……」

「業者に見てもらったの。

先週」

哲夫は顔をげた。

「勝に呼んだのか」

せつ子はしだけ声を震わせた。

にカビので寝ているのは私なのよ。

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