"残高4800円の老後" 第6話
フライパンには焦げがこびりついている。哲夫はを入れてこすってみたが、簡単には落ちなかった。
やがて諦め、カップ麺のふたをけた。
テーブルのには、湯みが1つだけ置かれている。
もう1つの湯みは、器棚の奥に戻してあった。
せつ子がていった翌、哲夫が自分でしまったのだ。
2つ並んでいるのを見るのが、つらかった。
朝7。
哲夫は自宅から3駅れた公園で、軍をはめて落ち葉を掃いていた。
清掃のアルバイト。
1050円。
所のに見られたくなくて、わざわざれた所を選んだ。
落ち葉を集めながら、哲夫は自分の姿を識していた。
かつては毎朝スーツを着て会社へっていた。
今はポロシャツのに作業用のジャンパーを着て、軍でほうきを握っている。
恥ずかしいとった。
けれど、その恥ずかしさこそが、自分をここまで追い込んだのだとも、しずつ分かり始めていた。
ある、藤原から話が来た。
「哲夫か。久しぶりだな。お、話にないから配してたんだよ。元気か?」
「藤原、久しぶり」
「どうした? 声が暗いぞ。飯でもわないか」
数、2は平の昼、ファミレスで会った。
窓際の席に先に座っていた藤原は、入ってきた哲夫を見て、瞬表を変えた。
痩せていた。
頬がこけ、ポロシャツがしきく見えた。
「悪いな、呼びして」
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哲夫が座ると、藤原はメニューをいた。
「替わり2つでいいか」
「ああ」
注文を終えると、藤原は静かに言った。
「せつ子さん、ていったんだってな。也くんから聞いた」
哲夫はうつむいた。
「ああ」
藤原はをんだ。
「俺もな、危なかったんだよ」
哲夫は顔をげた。
「え?」
「退職して1目の、嫁さんが計簿を広げて言ったんだ。このままだと10で退職がなくなるって」
藤原は指でテーブルを軽く叩きながら話した。
「全部の数字をして、ごとの収支まで表にしてあった。俺もその、おと同じことをったよ。なんとかなるさって」
哲夫は黙って聞いていた。
「でもな、ここまでちゃんと調べてくれているんだとったら、1回ちゃんと聞いてみようとった。38計を守ってきたのは嫁さんなんだから、俺より数字のことは分かっている」
藤原はし苦笑した。
「あの、俺が『うるさいな』って言って寝にっていたら、今頃うちも同じだったとう」
「何をしたんだ」
「翌朝から毎15分。お茶をみながら、計簿を2で見るようにした。それだけだよ。特別なことは何もしていない」
「それだけか」
「それだけ。でもな、2で見ていると、『ここ削れるな』『これは来にしよう』って自然にてくる。1で見ていたらてこない」
哲夫はテーブルの目を見つめた。
「俺は5、1度も見なかった。
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せつ子が見てって言うたびに、にしてくれって言った」
胸の奥から、苦いものが込みげてきた。
「なんとかなるさって言ってたのは、活を変えたくなかっただけなんだよ。ゴルフももOB会の幹事も、全部やめたくなかった。やめたら、退職した途端にしょぼくなった男に見えるだろう」
哲夫は唇を押さえた。
「所にも、柴田にも、藤原、おにも。ずっと格好つけてた」
藤原は何も言わなかった。
哲夫は続けた。
「ワックスを買ってきて赤線まで引いたのに、1度も使わなかった。ディーラーに5万5000円払った。現で。通帳に残らないように」
そこまで言って、哲夫は目を伏せた。
「分かってたんだ。まずいって。でも、格好悪い自分を認めるのが嫌だった。せつ子のでも、息子のでも、おのでも」
藤原は静かに息を吐いた。
哲夫の目は赤くなっていた。
泣いてはいない。
けれど、涙ので止まっていた。
会計の、哲夫は財布をした。
「俺が払うよ」
藤原は首を横に振った。
「いいよ。割り勘にしよう」
哲夫はし驚いた顔をしたあと、うなずいた。
「ありがとう」
ファミレスをると、哲夫は誰もいないに帰った。
そして通帳をいた。
残4800円。
これが、冒の夜だった。
8、毎朝ネクタイを締めて働いてきた男の、最もい夜だった。
藤原と会った翌週、哲夫は息子の也に話をした。
しばらくして、也のが哲夫ののに止まった。
助席に哲夫が座り、也が運転する。
2とも、しばらく黙っていた。
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