"母を捨てた凍夜" 第7話
本当に、はる子は1でていったのか。
19973、本は再び吹荘を訪れた。
吉田施設は、驚いた顔で迎えた。
「刑事さん、何か展でも?」
「いえ。し気になることがありまして」
本は施設内を見回した。入所者たちはいつもと変わらない常を送っていた。堂では数の齢者がテレビを見ており、廊では職員が配膳を押していた。
はる子がいなくなったことなど、もう誰も話題にしていないようだった。
「あの夜勤だった佐藤さんに、もう度話を聞きたいんですが」
吉田の顔がわずかにこわばった。
「恵子さんは、もうここにはいません」
「辞めたんですか?」
「ええ。けに体調を崩したと言っていました」
本は帳にメモを取った。
体調を崩した。
それとも、良の呵責に耐えられなくなったのか。
本は恵子の自宅を訪ねることにした。
恵子は施設から10kmほどれた町のアパートにんでいた。2階建ての古い建物で、階段は錆びていた。
本がドアをノックすると、やつれた顔の恵子が現れた。
以よりらかに痩せていた。目のにはいくまがあり、髪も乱れていた。
「佐藤さん、しお話を」
恵子は怯えたような目で本を見た。
「もう何も話すことはありません」
「本当に?」
本は静かに尋ねた。
「あなた、何か隠していますね」
恵子の顔が青ざめた。
「隠してなんか……」
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「あの夜、何があったんですか」
本は優しい声で聞いた。
恵子の唇が震えた。
言いたい。
全てを話してしまいたい。
そのいが表に浮かんでいた。
けれど、言えば自分が罪に問われる。施設も、族も、すべて巻き込むことになる。
恵子はドアを閉めようとした。
「すみません。体調が悪いので」
本はそれ以追及しなかった。
しかし確信した。
この女性は何かをっている。
いつか真実を話すが来る。
そう信じて、本はアパートをにした。
方、はる子の族はそれぞれの活を続けていた。
武志と幸子は、相変わらず普通に暮らしていた。幸子ははる子のことをほとんどにしなかった。まるで最初からいなかったかのように。
武志も、母親の話題を避けた。
子どもたちは、祖母がどこにったのかよく分かっていなかった。
「お父さん、おばあちゃんは?」
男がそう聞いた、武志は曖昧に答えた。
「いところにったんだよ」
それ以、子どもは聞かなかった。
ただ1、由紀子だけが母親を忘れなかった。
毎、施設のくまでき、周辺を探した。警察が捜さなくなった所も、1で歩いた。
川沿い。
古い神社。
。
廃のく。
しかし、何も見つからなかった。
「お母さん、どこにいるの?」
由紀子は何度も泣いた。
夫は配そうに見ていたが、何も言えなかった。
199712。
はる子が消えてから、ちょうど1が経とうとしていた。
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吹荘では増築事が始まっていた。入所者を増やすため、建物の裏側にしい棟を建てることになったのだ。
事業者が、敷の端にある古い倉庫を取り壊す作業をしていた。
その倉庫は、ほとんど使われていない建物だった。
1220、午9。
作業員の1が、倉庫の奥で何かを見つけた。
古い布だった。
作業員はそれを持ちげようとして、を止めた。
布のに、いものがあった。
作業員は息を呑んだ。
それは骨だった。
の骨だった。
「おい、ちょっと来てくれ!」
作業員の叫び声に、の作業員たちが駆けつけた。
倉庫の奥、暗い隅に、の遺骨があった。
の切れ端。
スリッパ。
そして骨。
すぐに警察へ通報された。
本刑事が現に到着したのは午10だった。
彼は倉庫のに入り、遺骨を見た。
そして、すぐに気づいた。
これは、はる子ではないか。
スリッパは施設で使われているものと同じだった。の切れ端も、はる子が入所に着ていた古い柄の着に似ていた。
「鑑識を呼べ。それからDNA鑑定の準備を」
本は静に指示をした。
しかし、のではりが込みげていた。
倉庫は施設の敷内にあった。
ここからわずか50mの距。
1、誰も気づかなかったのか。
いや、気づかなかったのではない。
気づかないふりをしていたのではないか。
1週、DNA鑑定の結果がた。
遺骨ははる子のものだった。
因は体温症による凍。推定刻は19961215の夜から翌朝にかけて。
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