"地図にない赤札の家" 第4話
顔は青く、表はほとんどない。窓ガラス越しに、ただじっと2を見つめている。
田は瞬、体を張らせた。
がいたのだ。
驚きよりも先に、取材が成するかもしれないという職業な期待がをよぎった。
田はすぐに表をえ、窓に向かって軽くをげた。
「突然すみません。私、田と申します。テレビ番組の撮で伺った者ですが、しお話を伺うことはできませんか」
男は何の反応も示さなかった。
頷くことも、首を横に振ることもない。
ただ、こちらを凝している。
その目が何を見ているのか、何を考えているのか、田には分からなかった。
辺もカメラを構えたまま固まっていた。
しばらくすると、男は表を変えないまま、無言で部の奥へ姿を消した。
田は、こちらの声が届いたのだとった。
男が玄関からてくるのだろう。
辺も同じように考えたらしい。カメラをげ、しだけ堵した顔をした。
「良かったですね。んでる、いましたね」
「本当だね。やっと報われた気がするよ」
「苦労して来た甲斐がありましたね」
2は声でそんなことを言いいながら、玄関ので男がてくるのを待った。
1分。
2分。
3分。
5分。
しかし、男が玄関からてくる気配はなかった。
のは再び静まり返っている。音もしない。引き戸がく音もない。
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「全然てこないですね」
辺がげに言った。
「こっちには気づいていたはずなんだけどな」
田は玄関の方を見つめた。
「もしかして、トイレでもってるんじゃないか」
冗談めかして言ってみたが、辺は笑わなかった。
田は再び声を張った。
「すみません。お忙しいところ申し訳ありませんが、しだけお話を聞かせていただけませんか」
返事はない。
「ごめんください。お邪魔しますよ」
何度呼びかけても反応がないことに、田は次第にしびれを切らした。
テレビの取材としては、本来勝に入るべきではない。しかし、先ほどの男はらかにこちらを見ていた。てこないだけで、宅であることは確かだとえた。
田は玄関の引き戸にをかけた。
古いの戸は、ぎしりとい音をてながらしいた。
を覗き込んだ瞬、田は息を呑んだ。
「うわ……なんだよ、これ」
玄関の先には、広いが広がっていた。奥には居とわれる部がある。造り自体は古い農そのものだった。
しかし、異様だった。
から居にかけて、壁、廊、井に至るまで、びっしりと赤い札が貼られていた。
所狭しと、隙もないほどに。
柱にも、梁にも、戸にも、窓の周りにも、赤い札がなるように貼りつけられている。奥の居にも、同じように札が張り巡らされていた。
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文字のようなものがかれている札もあったが、暗さと汚れで読めなかった。
その景は、活の跡というより、何かを封じ込めるためのものに見えた。
辺が田の背から覗き込み、い声で言った。
「田さん、ここ、なんか変ですよ。もう帰りましょう」
カメラを回していた辺の声には、らかな恐怖が滲んでいた。
田も反論できなかった。
先ほどの男。
玄関の異様な札。
の集落のたちの反応。
すべてがのでつながっていく。
ここには来てはいけなかったのかもしれない。
田は静かに玄関を閉めた。
「……帰ろう」
そう言って振り返った、そのだった。
背から、獣のような声が響いた。
最初は、くくぐもった音だった。
それがすぐに、けたたましい鳴き声へ変わった。
ブヒ、ブヒ、というような、豚に似た声。
だが、1匹や2匹ではない。
無数の獣が斉に鳴きしたような、を刺す騒音がの静けさを破った。
「え、何ですか、急に」
辺が肩をねさせた。
「イノシシか? 何なんだよ、いきなり」
田は反射に周囲を見回した。しかし、声の主は見えない。林のにも、母の周りにも、くものはない。
鳴き声は、どうやら朽ちた畜舎の方から聞こえていた。
辺の顔から血の気が引いていく。
「田さん、きましょう。く」
「分かってる」
2は急いでへ向かってりした。
そのも、畜舎からは絶えなく獣の鳴き声が響いていた。声は建物ので反響し、何倍にも膨れがっているように聞こえる。
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